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ドメイン名関連会議報告

2007年

AP地域の次世代リーダー育成が課題に

~AP* Retreat会合報告~

2007/08/30

第21回となるAP*(APstar)Retreat会合が2007年8月26日に、中国の西安で開催されました。

AP* Retreat会合は、アジア太平洋地域のインターネット団体の代表や、各国・地域で重要な役割を担っている組織から参加者が集い、年に1、2回開催されています。会合では、各組織の活動状況の報告や問題意識の共有に加え、インターネットに関連する現在進行形の課題に対して、アジア太平洋地域のコミュニティ全体としてどう取り組むべきかの議論が行われています。

今回の会合は APAN Meetingの前日に開催されましたが、開催時期の重なる国際会合もあったせいか、従来に比べて参加者数は多くありませんでした。しかし、報告議題が少なかった分、各地域同士での情報共有・議論のあり方や、APNGの将来像について、またインターネットの歴史情報を今後いかに残していくかなどの課題が積極的に取り上げられ、これらを中心とした密度の高い議論が行われました。

AP*(APstar)Retreat会合
AP*(APstar)Retreat会合の様子

アジア太平洋地域のインターネット関連組織からの活動報告

午前の部では、アジア太平洋地域のインターネット関連各組織から、この半年の活動と今後の予定について報告が行われました。

活動報告を行ったのは、次の8団体です
  • ABS
    Asia Broadband Summit
  • APAN
    Asia Pacific Advanced Network Consortium
  • APCERT
    Asia Pacific Computer Emergency Response Team
  • APNG
    Asia Pacific Networking Group
  • APRALO
    Asia Pacific Regional AtLarge Organization
  • APTLD
    Asia Pacific Top-Level Domain Association
  • DotAsia Organisation
  • intERLab@AIT
    Internet Education and Research Laboratory @ Asian Institute of Technology

数年前までは、リーダー的人物が複数のAP組織を兼任しているケースがよく見られました。しかし現在では、それぞれの組織が独立して活動するようになり、人材が豊富になってきたことがうかがえます。

また、こうした状況の変化を受けて、APTLDやintERLab(*2)では、発展途上 地域における人材の技術力向上を支援するプロジェクトが進められており、活動の分野的・地域的広がりに加え、最近では、高度技術の共有・開発など、発展段階に応じてプロジェクト内容にも広がりを見せています。

(*2)
Internet Education and Research Laboratory
インターネットにおける人材育成を目的としたタイの研究組織。

Live E!プロジェクト

APNG Executive Committee代表の松本敏文氏より、Live E!プロジェクトの紹介がありました。これは、温度・湿度・気圧などの気象情報を測定できるセンサー「デジタル百葉箱」を各地点に設置し、それらをインターネットでつなぐことにより様々な活動に役立てようというプロジェクトです。センサーの設置、集められたデータの利用はオープンになっており誰でも参加することができます。そのため、気温の細かな動きを省エネに活かしたり、台風などの異常気象の正確な情報をいち早く知り、災害対策に役立てるなど、さまざまな目的で創造的に活用されています。参加者からは常に高い関心が寄せられ、今後の活動のさらなる発展が期待されます。

APNGの将来像

APNGは1994年に組織化され、その活動の中から多くのAP関連団体・組織が生まれ、それらの母体と位置付けられてきました。しかし最近では、APNG自身が新たな活動を生み出さなくても、自発的に新たな活動、新たな組織が生まれるようになりました。こうした変化から、APNGは次世代のリーダーを育成することを目的とした「APNG Camp」の活動を中心とした組織に生まれ変わりつつあります。

会場では、新たな組織を若手が担っていくにはどうすればいいのか、組織の資金集めを安定的に行う仕組みをシニアと若手がどう協力して作っていくべきかなどが話し合われました。今後も引き続き、良い方法を模索していくことになります。

インターネット・ミュージアム

最近、インターネットの歴史を記録しておくことの重要性が世界中で叫ばれています。歴史は、未来を形成するためにたいへん重要な情報ですが、記録しておかないと消えてしまいます。

記録方法としてはまず、情報をどんどん蓄積しデータベース化し必要な情報を検索するという方法がありますが、情報量が膨大で、玉石混交の歴史となる危険性があります。もう1つ、情報を選定し見せる代表的方法として、歴史本を制作したり、博物館のように関係資料などを展示することがあげられます。前者は情報網羅性などのため非常に困難な作業を伴いますが、後者は前者よりも比較的実現しやすいため、この「展示」することで歴史を残すという「インターネット・ミュージアム」を目指す活動がいくつか起きてきているようです。

会場では、ソウル大学校(韓国)のMyongkoo Kang教授が、韓国でのインターネット・ミュージアムに関する活動を紹介しました。歴史の記録に関する関心は、韓国のみでなく世界各国に広まっているようです。日本においても今後、関連団体などが中心となり歴史を記録していくことが期待されています。

今後のAP* Retreat

今回のAP* Retreat会合では、AP地域の次世代リーダーをどう育てるか、AP*Retreat会合自体を今後どう活性化していくか、という議論が中心となりました。時代の変化に伴い、いくつもの組織がAPNGから巣立っていったことは良いことですが、次世代リーダーの育成が不足していることも事実です。そのためにAPNG Campがその役割を担っていくという方針も合意されました。

次回のAP* Retreat会合は、2008年2月、台北でのAPRICOT会合に併設して開催 される予定です。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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