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ドメイン名関連会議報告

2010年

新TLDの導入に関する最新動向

~APTLD会合、ICANN会合における話題を中心に~

2010/04/02

2010年3月、APTLD Members' Meetingがマレーシアのクアラルンプールで、第37回ICANN Meetingがケニアのナイロビで開催されました。いずれの会合も、新TLDの導入に関する議論が中心となりました。

日本国内でも、IDN ccTLD「.日本」の管理運営事業者選定基準に対する意見募集や、個別企業によるブランド名での新gTLD申請決定の発表など、導入に関するトピックスが注目を集めている新TLD。今回のFROM JPRSでは、APTLDクアラルンプール会合とICANNナイロビ会合における話題を中心に、新TLDの導入に関する最新動向をお伝えします。

APTLDクアラルンプール会合の様子
APTLDクアラルンプール会合の様子

IDN ccTLDの動向

2009年11月16日にファストトラックプロセス(*1)によるIDN ccTLDの申請受け付けが開始されて以降、19の文字列が申請されていることがICANNによって発表されています。

(*1)
IDN ccTLDの正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス(以下、ccPDP)」の作成と並行して、既存のccTLDに対応した形でIDN ccTLDを限定的に早期導入し、技術、運用、ポリシーなどの問題が発生しないことを確認するための活動です。

ファストトラックプロセスでは、国/地域における申請準備の完了後、ICANNによる文字列評価審査とIANAによるレジストリの委任評価審査を経て、IDN ccTLDがルートゾーンに登録されることになります。2010年1月21日に既に文字列評価審査の通過が発表されていたアラブ首長国連邦、エジプト、サウジアラビア、ロシアに加え、3月22日・23日付でカタール、スリランカ、タイ、台湾、中国、チュニジア、パレスチナ、香港が文字列評価審査を通過したことが新たに発表されており、累計で12の文字列が評価審査を通過したことになります。

続く委任評価審査は、通常3カ月程度を要するとされています。委任評価審査に進む12の文字列のうち、繁体字と簡体字という複数の字体体系を持つ台湾と中国はいずれも2つのTLDを要望しています。このため、台湾と中国は委任評価審査の前に「Synchronized IDN ccTLD Evaluation Process」という、複数のTLDを希望するIDN ccTLD用に考案された新たなプロセスを経る必要があります。なお、同プロセスは現状では未確定のものであり、2010年4月22日にICANN理事会で確定予定となっています。

IDN ccTLDに関するccPDP

上述の通り、ICANNでは世界の全てのIDN ccTLDに恒久的に適用されるポリシーの検討も並行して行っています。現時点までに課題リストが確定し、中身の検討が始まりました。

  • どのような国/地域単位に与えるか
  • 各国の各言語の各スクリプトに対し、いくつのIDN ccTLDを与えるか
  • 一つの文字列に複数の申請があった時、申請への反対意見があった時、紛争があった時の解決ポリシーやプロセスはどうあるべきか

といった内容が、ccNSO(*2)で今後2年程度かけて検討される予定です。

(*2)
ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccNSOはccTLDの連合体としてccTLDに関するグローバルなポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告を行う役割を担います。

各国におけるIDN ccTLDの検討状況

APTLDクアラルンプール会合では、マレーシアと香港におけるIDN ccTLDの検討状況が報告されています。

マレーシアは、ASCII文字からなる既存のccTLD(以下、ASCII ccTLD)のレジストリであるMYNICが導入プロジェクトを進めており、同国で使用されているジャウィ文字によってIDN ccTLD文字列を表現し、第2レベルに登録可能な文字列もジャウィ文字に限る計画であることを発表しました。

香港は、ASCII ccTLDのレジストリであるHKDNRが導入プロジェクトを進めており、「.香港」をIDN ccTLD文字列として、第2レベルには中国語文字(簡体字または繁体字)を1文字以上含む文字列を登録可能とする計画であることを発表しました。ASCII ccTLDの「.hk」ドメイン名の登録に対して、「.香港」ドメイン名を無料で登録可能とし、ドメイン名の更新と移転は双方のドメイン名で一緒になされ、登録有効期限と連絡窓口情報も同一のものが設定される予定とのことです。優先登録の実施も予定しており、同一文字列での登録申請が複数あった場合の処理や異議申し立ての仕組みを準備していることも発表されています。


新gTLDの動向

当初計画よりスケジュールに遅延が生じている新gTLDについて、ICANNナイロビ会合でICANNは提案募集開始時期の具体的な言及を避けました。現時点では、新gTLD応募者用ガイドブック案の第4版が2010年6月下旬に公開されることのみ明らかにされており、同ガイドブックの最終版公開、実際の提案募集開始の時期は未定となっています。

ICANNナイロビ会合の様子
ICANNナイロビ会合の様子
Copyright © ICANN


なお、ICANNナイロビ会合では、商標権を始めとする権利を保護する方策など、継続検討が必要とされていたいくつかの論点について議論の進展がありました。新gTLD関連決議は以下の通りです。

EOI(Expression of Interest)実施提案の却下

ICANNでは、新gTLD提案応募の前段階として申請文字列や申請者に関する情報の提出を求める「EOI」という事前申請プロセスの実施を検討していましたが、理事会はこれを却下しました。

収集した情報がポリシー確定やリソース計画立案に活用できるといったメリットよりも、この新たなプロセスによって全体のプロセスが遅れるなどのデメリットの方が大きいとの判断によるものです。

「全ての新gTLDは3文字以上の文字列であること」という制限の見直し

本制限は、中国語圏などからIDN gTLDにおいて不合理との意見が出ており、理事会では個別審査の上で一定条件を満たせば2文字でもIDN gTLDとして創設可能とする方向の決議がなされました。1文字のIDN gTLDは、現状案でも創設不可能となっています。

なお、本件は2010年4月1日までICANNによる意見募集がなされており、現状では未確定のものです。

商標権保護の仕組みの導入

商標権保護を目的として、「Trademark Clearinghouse」、「Uniform Rapid Suspension(以下、URS)」という二つの仕組みが導入される方向となりました。これらの仕組みも2010年4月1日までICANNによる意見募集がなされています。

Trademark Clearinghouseは、あらかじめ権利者から申請された商標をデータベース化し、サンライズ登録期間中の申請チェックなどに用いる仕組みです。また、URSは明らかに商標権を侵害しているドメイン名について、その名前解決を登録有効期限まで停止する仕組みです。URSは、gTLDに関する統一紛争解決ポリシーである「Uniform Dispute Resolution Policy(UDRP)」とは別に設けられるものとなっています。

新gTLD提案者への金銭的支援の検討

現計画では、新gTLDの提案応募・運用に際して、「18万5千米ドルの申請手数料」や「年間2万5千米ドルの維持費」などをICANNに支払う必要があります。これに対してかねてより、途上国及び非営利の新gTLDはICANNへの支払い金額を少なくすべきという意見が関係者から出されていました。

これに対し理事会は、途上国からの新gTLD提案応募とその運用についてICANNが何らかの金銭的支援をする方向で方針検討することを決議しました。


次回のAPTLD Members' Meeting及びICANN Meeting

次回のAPTLD Members' Meetingはスリランカのコロンボで、第38回ICANN Meetingはベルギーのブリュッセルで、いずれも2010年6月に開催される予定です。



本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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