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ドメイン名関連会議報告

2010年

ICANNブリュッセル会合報告

~新TLDの導入に関する最新動向を中心に~

2010/07/07

2010年6月20日から25日にかけて、ベルギーの首都ブリュッセルで第38回ICANN Meetingが開催されました。ここ数年の会合に同じく、ブリュッセル会合においても新gTLD及びIDN ccTLDの導入が話題の中心となりました。
今回のFROM JPRSでは、同会合の模様を読者の皆さまにお届けします。

ICANNブリュッセル会合の様子
ICANNブリュッセル会合の様子

新gTLDの動向

ICANNは、今回も新gTLD提案募集開始時期について具体的に言及しませんでした。今後のスケジュールとしては、2010年9月24日から25日にかけてICANN理事会メンバーによりすべての懸案事項の集中討議が行われる予定です。

ICANNはブリュッセル会合に先立って、新gTLD応募者用ガイドブック案の第4版(以下、DAG4)を公開しており、そこで示された方針が議論の中心となりました。以下、一つ前の版であるDAG3からの主な変更点をご紹介します。

「すべてのgTLDは3文字以上の文字列であること」という制限の緩和

新gTLDは、ASCII文字のみから成るものだけでなく、日本語を含むさまざまな言語の文字によって表現可能なIDN gTLDの導入も含めて検討が進められています。これまでgTLDには「3文字以上の文字列であること」という制限が定められていますが、中国語圏などから「IDN gTLDにおいてはこの定めが不合理である」との指摘がなされていました。
DAG4からは、IDNの場合に限り2文字のgTLDも申請できるようになり、会合ではこの制限緩和を歓迎する声が聞かれました。

「国名または領土名のgTLDは承認されない」旨の明示

国名・領土名については、IDN ccTLDの恒久的なポリシーが未策定ということもあり、ccNSO(*1)及びGAC(*2)が「国名・領土名をgTLDで扱うことは避けるべき」との問題提起をしてきました。
これを受け、DAG4では「国名または領土名のgTLDは承認されない」旨が明示されています。

(*1)
ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccNSOはccTLDの連合体としてccTLDに関するグローバルなポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告を行う役割を担います。
JPRSも、「.jp」のレジストリとしてccNSOに参加しています。
(*2)
ICANNの諮問機関の一つで、各国政府などからの代表メンバーによって構成されます。GACは政府の立場からICANN理事会に対して助言を行っています。

商標保護の仕組みの整備

前回のナイロビ会合において、商標保護の仕組みの一つとして「Trademark Clearinghouse」を導入する方向となりましたが、この利用がレジストリに義務付けられることとなりました。
Trademark Clearinghouseは、あらかじめ権利者から申請された商標をデータベース化したもので、レジストリは「サンライズ登録期間」もしくは「商標権者からの特定ドメイン名に対する異議申し立て対応」のいずれかに際して参照する必要があります。

DAG4は2010年7月21日までパブリックコメント募集中

これらの他に参加者の関心を集めたものとして、レジストラがレジストリを運営すること(あるいはその逆)を認めるかどうかという、いわゆるレジストリ・レジストラ分離要件が挙げられます。ただ、DAG4が2010年7月21日までパブリックコメント募集中の状態にあることから、ブリュッセル会合の場で何らかの決議が採択されることはありませんでした。


IDN ccTLDの動向

IDN ccTLDについては、2009年11月16日からファストトラックプロセス(*3)による申請受け付けが開始されています。なお、日本においては総務省の情報通信審議会が文字列は「.日本」とすることが適当である旨を答申内で示しています。また、2010年6月4日には「.日本」レジストリの選定を行う日本インターネットドメイン名協議会から選定基準及び公募要領が公表されている状況です。

(*3)
IDN ccTLDの正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス(ccPDP)」の作成と並行して、既存のccTLDに対応した形でIDN ccTLDを限定的に早期導入するためのプロセスです。

以下、ブリュッセル会合における主な動きをご紹介します。

ICANNが中国、香港、台湾に対し、漢字のIDN ccTLDの委任を承認

2010年6月25日のICANN理事会において、中国、香港、台湾に相当する漢字のIDN ccTLDをそれぞれ「.cn」、「.hk」、「.tw」を登録管理しているレジストリに委任することを承認しました。
IDN ccTLDファストトラックプロセスでは、国や地域において原則として一つの言語に一つのIDN ccTLDを認めることとしています。しかし、簡体字と繁体字という複数の字体体系を持つ中国と台湾には、それぞれ「.中国/.中國」、「.台灣/.台湾」という二つのIDN ccTLDを同時に委任するという決定がなされました。
これは、「Synchronized IDN ccTLDs」という概念に基づき、「簡体字と繁体字は等価な文字であり、同時に承認されない場合には混乱が生じる」という状況を認定したものです。なお、字体体系違いの二つのIDN ccTLDは、全く同一のドメイン名空間として扱うことを条件付けられています。

恒久的なポリシーを検討する新たなワーキンググループの立ち上げ

上述の通り、ICANNでは世界のすべてのIDN ccTLDに恒久的に適用されるポリシーの検討も並行して行っています。既に、確定した課題リストに対する検討がccNSOのワーキンググループ(IDN PDP WG1)において進められていますが、今回新たにIDN ccTLD導入に際して必要となるICANN定款見直しを検討するワーキンググループ(IDN PDP WG2)が立ち上げられました。
JPRSからは、ccNSOの評議委員も務める堀田博文がWG1にオブザーバーとして参加していることに加え、WG2にもメンバーとして参加します。WG2においては、今後IDN ccTLDレジストリのccNSO参加をどう位置付けるかを論点に検討を進めていくことになります。


DNS-CERTの組織化に関する議論の進展

前回のナイロビ会合において、DNSに関する専門性を持ち24時間365日稼動するグローバルなCERT(以下、DNS-CERT)を組織化することがICANNから提案されました。日本にはJPCERT/CCが存在していますが、途上国などではそもそもこのようなCERTが存在しないこともあり、こうした枠組みによってグローバルなセキュリティの向上につなげる必要性は認識されていました。
しかし、現状の分析が不十分であること、現状で機能しているCERTなどとの融合・連動が十分に検討されていなかったこと、運用コストとして400万ドルもの金額が提示されていたことなどから、提案の見直しを求める意見が寄せられていました。これらを踏まえ、ブリュッセル会合では計画に以下のような見直しを行った上で、必要性の判断も含めて検討の具体化を進めることとなりました。

  1. 既存組織と協力して、現時点での課題を更に分析する
  2. 来年度予算はゼロとする
  3. ICANNは、DNS-CERTの体制の調整の役割は担うが、運用は担わない


次回のICANN Meeting

次回の第39回ICANN Meetingはコロンビアのカルタヘナで、2010年12月5日から10日にかけて開催される予定です。



本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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