ドメイン名関連会議報告
2024年
[第79回ICANN会合報告] ccTLD関連の話題
2024/04/17
本記事では、第79回ICANN会合(ICANN79)におけるccTLD関連の話題についてご紹介します。
ccTLD管理のあり方に関する議論
TLDを委任された組織(TLD運用者)の行動原則、遵守すべき事項は、1994年に発行されたRFC 1591[*1]に記載されています。現在、gTLDについてはこれに加え、それぞれのgTLD運用者とICANNがレジストリ契約を締結する形となっており、TLD運用者とICANN/IANAが果たすべき義務事項が、条文の形で明確になっています。
[*1]RFC 1591: Domain Name System Structure and Delegation
https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc1591
一方、ccTLDでは、委任の実務についてはRFC 1591の更新版としてIANAが制定したICP-1[*2]に基づく形で遂行される形となっており、TLD運用者とICANN/IANAが取り交わす関係として、ccTLDスポンサー契約[*3]、簡易的な契約である「Accountability Framework」、双方の当事者が書簡を交換する「Exchange of Letters」の3種類が運用されています。しかし、ICANN/IANAと明確な関係を構築しているのは一部のccTLDのみであり、そうした関係を構築しておらず、それぞれの義務事項が明確にされていないccTLDも存在しています。
[*2]ICP-1: Internet Domain Name System Structure and Delegation (ccTLD Administration and Delegation)
https://www.iana.org/go/icp-1
[*3]2024年4月現在、正式な契約を締結しているccTLDは、.jp、.auなど9に留まっています。
ccTLD Agreements - ICANN
https://www.icann.org/resources/pages/cctlds/cctlds-en
このような中で、2022年に.lb(レバノン)において、ccTLD運用者がIANAに登録されている責任者の死亡により一時不在となり、「Caretaker Operation(世話人による運用)[*4]」の状態になった事例が発生したことを踏まえ、ccNSOが評議委員会内にチームを設置し、以下を前提としてccTLD管理のあり方に関する検討を進めています。
- 既存のポリシーと現実との間にギャップがあること
- ccNSOは、IANAがルートゾーンの管理においてccTLDとどう関わるかを規定するグローバルなポリシーの策定主体であること
[*4]Caretaker Operations for a Top-Level Domain
https://www.iana.org/help/caretaker-operations
ICANN79のccNSO Members Meetingでは、「Policy Gap Discussion」と題した意見交換セッションが実施され、架空のccTLDと状況を設定し、「ccTLD運用者の移管や変更に対してIANAはどうすべきか・何ができるのか」や「TLD運用者に関する情報は公開される必要があるのか、正確である必要があるのか」など、ccTLDコミュニティにおけるccTLD管理のあり方に関する課題意識の醸成を図りながら意見交換が行われました。
ccNSO評議員会内のチームでは、今回の意見交換で得られた気付きを踏まえて検討が継続され、次回会合で検討状況がアップデートされる予定となっています。
WSIS+20に向けたccNSOの動向
2005年の世界情報社会サミット(WSIS:World Summit on the Information Society)チュニス会合において、インターネットガバナンスに関連した議論をあらゆるステークホルダーが参加する形で行うことができるインターネットガバナンスフォーラム(IGF:Internet Governance Forum)が創立されました。IGFの継続については10年おきに見直しが行われることになっており、WSISチュニス会合から20年目に当たる2025年に国連総会で行われるレビューのことを「WSIS+20[*5]」と呼んでいます。
[*5]「[第76回ICANN会合報告] ICANN設立25周年とccNSO設立20周年」参照
https://jprs.jp/related-info/event/2023/ICANN76-01.html
WSIS+20を前に、ccNSOではメンバーに対して統一的な対応を求めるような動きはないものの、本会合ではInternet Governance Liaison Committeeを中心に、メンバーに対する啓発活動や取り組みを行うccTLDやRegional Organizationの知見を共有するセッションが設けられ、ccTLDマネージャーとしてアクションを起こす必要性が喚起されました。
- 喚起された主なポイント
- マルチステークホルダーにおいて、技術コミュニティの存在感をアピールすることの重要性
- 各ccTLDから自国の政府担当者に対して、インターネットに関する各種課題に関し、政府主導ではなく、さまざまなステークホルダーを巻き込みながら議論を行うことの重要性
IDN ccTLDのポリシーに関連する動き
IDN ccTLDについては現在、2009年に開始された、早期に必要とされるIDN ccTLDを限定的に迅速導入するための「ファストトラックプロセス」による申請の受け付けが行われてきていますが、並行して、正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス(ccPDP)」の検討が行われてきています。
本検討は、ファストトラックプロセスを今までの経験を踏まえて見直す形で行われており、ICANN79では、ccNSO会員投票に先立ち、その最終案のポイントが紹介されました。これまでのプロセスからの大幅な変更はなく、例えばIDN ccTLDとして申請できる文字列の決め方であれば以下のように、これまでも基本的な考え方として重視されていたことが改めて確認されました。
- 申請できるIDN ccTLDは、ISO 3166-1の一覧にASCIIが掲載されているccTLDのみ
- 国・地域においてIDN ccTLDとして申請できる文字列は、各国・地域を適切に表している必要があるが、適切に表しているか否かの判断にIANAは関与しない
本内容は、ICANN79最終日に開催されたccNSO評議委員会で確認、承認され、ccNSOの会員投票が行われた後、ICANN理事会に諮られることになります。