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JPRS トピックス&コラム No.004


インターネットにおける国際連携~JPRSの国際活動とOARC加盟~


インターネットは世界中の人々にとって必要不可欠なものになりました。インターネットの円滑な運用に欠かすことのできない国際活動について、JPRSの取り組みをご紹介します。

インターネットの広がりの中で

 インターネットは1969 年に米国で始まったARPANETを原型として誕生しました。その後インターネットは米国以外の国々へも急速に広まっていき、今日では世界中で広く利用されるようになりました。
 インターネットは接続のための環境さえ整っていれば、ユーザーはいつでも、そしてどこにいても同じように使うことができます。例えば、海外旅行先のホテルの部屋からでも家にいる時と同じように自分のブログを更新できますし、寝る前にベッドの中から携帯電話で海外にいる友人とメッセージをやりとりすることも簡単です。このようにインターネットには「時間や位置に縛られることなく、いつでもどこでも同じように使える」という、これまでの情報メディアにはなかった画期的な特徴を備えています。
 しかし、インターネットが「いつでもどこでも使える」ものであるためには、インターネットそのものが「いつでもどこでもスムーズに動いている」必要があります。そして、今や世界中に広がったインターネットの円滑な運用のためには、国や地域をまたいだ国際活動や調整がますます重要になっています。

JPRSの国際活動

 JPRSはJPドメイン名のレジストリ(登録管理組織)として、インターネットにおける国際活動に参加しています。JPRSが参加している国際組織にはさまざまなものがありますが、ここではそのうちのいくつかについてご紹介しましょう。

基本要素に関する管理と調整

 インターネットが全世界で円滑に動作するためには、ドメイン名やIPアドレス、あるいはルートサーバといったインターネットそのものを構成する基本要素(資源)が、世界的に正しく管理運用されている必要があります。
 これらの基本要素に関する国際的な調整活動はICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が行っています。ICANNは民間の非営利法人として、1998年に米国で設立されました。
 JPRSはccTLDの連合組織であるccNSO(Country Code Names Supporting Organisation)の一員として、ICANNにおける意思決定プロセスに参加しています。また、JPRSの堀田博文がccNSO Councilのメンバーとして、ccTLD全体にかかわるグローバルなポリシーの検討を主導しています。

◆諮問委員会による助言

 ICANNには理事会に対し適切な助言を行い、理事会の方針判断を助けるための組織として、いくつかの諮問委員会(Advisory Committee)が存在しています。
 2007年11月にJPRSの佐藤新太がインターネットセキュリティと安定性に関する諮問委員会であるSSAC(Security and Stability Advisory Committee)のメンバーに就任し、ccTLDレジストリの技術者・運用者として、これまでの経験を生かした活動を行っています。

アジア太平洋地域における活動

APTLD(Asia Pacific Top Level Domain Association)はアジア太平洋地域におけるccTLDの連合体として1998年に設立され、30を超えるTLDが参加しています。
 JPRSはAPTLDの正会員として活動を行っており、会員間における議論や情報交換に参加しています。また、JPRSの大橋由美が理事としてAPTLDそのものの組織運営にも参画しています。

ヨーロッパ地域における活動

CENTR(Council of European National Top Level Domain Registries)はヨーロッパ地域におけるccTLDの連合体として1998年に設立され、50を超えるTLDが参加しています。
 CENTRはヨーロッパ地域を活動の主眼としながらも、ヨーロッパ地域以外のccTLDやgTLDもその活動に参加することができます。JPRSはCENTRの準会員として、会員間における議論や情報交換にかかわってきました。また他のTLDに先駆けて実施を進めてきた経験から、特に国際化ドメイン名やIP Anycastなどの運用に関するさまざまな情報発信も行っています

OARCへの加盟

 JPRSはこれらの国際組織に加え、2007年6月からOARC(Operations, Analysis, and Research Center)に加盟しました。
 OARCはインターネットで広く利用されているDNSに関する運用、分析、調査研究に関する各種活動を通じ、DNSをより安全で高品質なものとすることを目的として2004年に設立された国際組織です。

主なOARC参加組織
主なOARC参加組織

 OARCにはルートサーバ運用者やccTLD/gTLDレジストリ、RIRやDNS実装者、研究組織などを中心に、約50の組織が参加しています。

OARCの活動内容

 OARCが行っている活動内容のうち、主なものについて簡単にご紹介します。
①DNSに関する広域的な調査・分析活動
カリフォルニア大学サンディエゴ校のサンディエゴ・スーパーコンピュータセンターに本拠を置くCAIDA(Cooperative Association for Internet Data Analysis)と協力し、DNSに関する広域的なモニタリングや分析を行っています。
②DNS運用者のための情報交換の場の提供
 世界中のDNS運用者が自由に参加可能なメーリングリスト「dns-operations」を運営しています。また年に一度の割合で開催されるOARCメンバーミーティング、及び公開形式によるDNSワークショップなど、DNSの円滑運用のための情報交換の場を提供しています。
③重要なDNSインフラを守るための活動
 ルートサーバやTLD DNSサーバなどの重要なDNSインフラへの攻撃や脅威に対応するため、OARCメンバー間におけるモニタリングデータの収集や分析結果の共有を行っています。このような活動により、DDoS攻撃などのさまざまな外的脅威から重要なDNSインフラを守るための、コーディネーションセンターの役割を担っています。
④DNS関連ツールの開発・配布動
 DNSトラフィックのモニタリングや分析を行う際に有用なツール「DNSCAP」の開発・配布を行っています。

JPドメイン名の信頼性向上に向けて

 OARCへの加盟により、DNSに関する広域運用情報の共有や、世界中のDNS専門家や重要なDNSインフラの運用者との、より円滑な情報交換が可能になりました。
 JPRS ではJP ドメイン名とJP DNSの信頼性を向上させ、インターネット全体の円滑な運用につなげることを目的に、今後もさまざまな国際活動を続けていきます。


掲載内容は2009年8月のものです。