2011年の多くのニュースの中から、ドメイン名ニュース担当者が選んだ、大きな話題を五つご紹介します。
1JPドメイン名サービスにDNSSECが導入
JPRSでは、2011年1月16日にJPドメイン名サービスにDNSSECを導入しました。
DNSSECは、DNSの応答に公開鍵暗号方式による署名を付加することで、DNSの信頼性を向上させるための仕組みです。DNSSECの導入によりDNS応答の偽造による「キャッシュポイズニング攻撃」を検知でき、それによるセキュリティ上の脅威を回避できます。
JPRSはDNS応答の偽造によるセキュリティ上の脅威に対し、DNSSECの導入が有効な解決策であると考え、日本国内はもとより、世界各国のDNS運用関係者とも協力しながら、DNSSECの仕様検討や実証実験を進めてきました。また、サービス導入に当たり、JPドメイン名におけるDNSSECサービスの安全性や運用の考え方、方式、手順などを網羅的に記述した運用ステートメントであるJP DPSを作成、公開しています。
また、JPRSではDNSSECの信頼性を支える鍵ペアの生成が手順通り確実に行われていることを外部から確認できるように、.jpゾーンのDNSSEC署名に用いるための鍵ペア生成の手続きである「.jp DNSSECキーセレモニー」を第三者の立ち会いの下で定期的に実施しています。2011年10月4日には第2回目となるキーセレモニーが実施されました。
JPドメイン名へのDNSSECのサービス導入から1年が経過し、業務手順、運用方法が確立されていくことにより、今後さらなる利用拡大が見込まれます。
2新gTLD導入に向けた動きが活発化
ICANNは、2011年6月の理事会で、2012年1月より新gTLD申請の受付を開始することを決定しました。
gTLDの導入は過去2回ありましたが、いずれも導入するgTLDの数や種類に制限が設けられていました。3回目に当たる今回はこれらの制限がなく、幅広い対象に対して導入する機会が設けられており、企業の社名やブランド名などもgTLDとして申請できるようになります。ただし、誰でも簡単に新gTLDを申請できるというわけでなく、申請費や年間の運用費の支払い、TLD運営のために必要となる技術的要件を満たす必要があります。
今回の新gTLD導入の機会を受けて、国内においても大手企業数社が申請の意向を相次ぎ発表し、話題となりました。ICANNからは申請受付タイミングは今回に限らないので十分な時間をかけて必要性を検討して欲しい旨の呼びかけが行われています。しかし、全米広告主協会など米国を中心とするいくつかの団体は、商標権者の立場から、新gTLD申請の受付開始自体に異議を表明しています。
新gTLD申請受付期間は2012年1月12日から4月12日までとなっており、ICANNは新gTLDに関するサイトで、申請手順や審査要件などを説明した申請者向けガイドブックやFAQを公開しています。
3IPv4アドレスの在庫枯渇問題と「World IPv6 Day」
かねてより懸念されていたIPv4の在庫枯渇が現実となり、2011年2月、インターネット上のアドレス資源をグローバルに管理するIANAにおいて新規に割り振りできるIPv4アドレスの在庫がなくなりました。
さらに、2011年4月には、アジア太平洋地域の管理を行うAPNICにおいても、通常の申請により割り振り可能であるIPv4アドレスの在庫がなくなり、それに伴い、JPNICでも通常の割り振り業務を終了しています。
そんな中、Webサービスの提供者が一斉に24時間だけ自社サービスをIPv6対応にして、影響を探ってみようという試み「World IPv6 Day」が2011年6月8日(日本時間では2011年6月8日から9日にかけて)実施されました。この試みには、JPRSを含む、世界中から400以上の著名なWebサービス事業者・組織が参加し、大きな混乱もなく幕を閉じました。今回の試みを契機にIPv6の導入に向けた動きがさらに進んでいます。
インターネット全体がIPv6に対応するためには、名前とIPアドレスを対応づける役割を担っている、DNSにおける対応が必要不可欠です。そのため、JPRSではこれまでも積極的にIPv6への対応を進めてきました。2004年にはJP DNSサーバーやJPドメイン名の登録システムがTLDとして世界で始めてIPv6に完全対応し、2005年にはJPRSのWebサイトもIPv6に対応しています。
4JPドメイン名の登録数が125万件を達成
2000年のJPRS設立から10年を迎え、2011年12月1日、JPドメイン名の登録数が125万件を達成しました。 汎用JPドメイン名は2001年の導入から約80万件にまで成長し、属性型JPドメイン名は40万件を越えています。
インターネットを利用した企業による情報発信に加え、近年では、ブログやSNSの発展による個人レベルでの情報発信など、社会におけるインターネットの利用がますます進んでいます。そして、それに伴いドメイン名の活用場面も多様に拡がってきています。
JPRSでは、こうしたドメイン名へのニーズの多様化に対応する一環として、2011年9月、地域に根ざした新たなドメイン名空間として「都道府県型JPドメイン名」の新設を発表しました。
JPRSは、125万のJPドメイン名を登録・利用されている皆様に感謝するとともに、今後も、より利用しやすく価値の高いJPドメイン名サービスの提供を通じて社会に貢献できるよう努めていきます。
5ICANNがgTLD「.xxx」を正式承認
2011年3月18日、ICANN理事会が、アダルトコンテンツ用のgTLD「.xxx」を正式承認しました。
gTLDの新設は過去に2度行われており、「.xxx」はそのいずれにおいてもICM Registry社から申請がなされていました。しかし、アダルトコンテンツを明示するgTLDであるということで物議が醸し、ICANNの諮問機関の一つであるGACをはじめ、さまざまなコミュニティから反対や反発があり、2度とも申請が却下されていました。
しかし、これを受けた同社が、ICANNの定めた紛争解決プロセスである独立審査パネルに異議申し立てを行った結果、裁定で同社の主張が認められ、2011年3月の正式承認に至りました。
2011年9月には「.xxx」のサンライズ期間が設けられ、同社ではドメイン名の登録・利用を目的とした通常の「サンライズA」に加え、アダルト業界以外の権利者が自分の名前を「.xxx」で利用されないようにすることを目的とした「サンライズB」の2種類を実施しました。
今回実施されたサンライズBについては、もしサンライズAとサンライズBが衝突した場合、登録するためのサンライズAが優先されること、サンライズBの申請料がサンライズAの約3倍であり、かつブロックされなかった場合やブロック を解除した場合にも返金されないこと、そもそも他者に利用されないようにするためのサンライズ期間の設定そのものが適切であったかどうかなど、その実施を批判する声も上がっています。
番外編:DNS解説書籍『実践DNS』の出版
2011年5月、JPRS監修によるDNSの解説書籍『実践DNS----DNSSEC時代のDNSの設定と運用』が出版されました。
本書は、JPRSが「.jp」のドメイン名を管理する大規模なDNSの運用や技術 研究を通じて得たさまざまな知見を基に、現在あるべきDNSの設定・運用方法 を豊富な図版と設定例を交えて詳細に記載することにより、読者が必要な対 応を継続して行える本質的な理解に資することを目的としています。