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ドメイン名関連情報

2019年 ドメイン名重要ニュース

2019年の多くのニュースの中から、ドメイン名ニュース担当者が選んだ大きな話題を五つご紹介します。

1国内開催は19年ぶり2度目!ICANN会合が神戸で開催

2019年3月9日から14日にかけて、第64回ICANN会合(ICANN 64)が兵庫県神戸市で開催されました。

ICANNは、ドメイン名、IPアドレスといったインターネットの基盤となる資源に関するグローバルな調整を行うために、1998年に米国で設立された民間の非営利法人です。年に3回、世界各国から関係者が集まり、インターネット全体の資源管理の枠組みやポリシーの策定を進めるための会合が開催されています。

ICANN会合の日本国内での開催は2000年の神奈川県横浜市での開催以来、19年ぶり2度目となります。今回の会合には世界各国・地域から2000名を超える参加があり、日本国内からの参加者も300名近くに上ったと報告されています。

JPRSは創立当初から、ICANNの各種活動への参画や意見交換、議論の取りまとめなどを通じてICANNの活動を継続的に支え、インターネット全体の発展に貢献してきました。加えて、今回のICANN 64は日本国内からの議論への参加を促す好機であると考え、JPRSは「ICANN64ローカルホスト委員会」の一員としてもその開催運営に深く関わりました。

ICANN会合では、その運営自体はICANN自身が行うものの、開催地運営組織として「ローカルホスト」と呼ばれる組織が、会場や宿泊施設、各種サービスの手配支援、関連各所との調整や参加者の支援などを行っています。ローカルホストは通例単独の組織が担いますが、今回は日本での開催に当たり、国内のドメイン名関連事業者や関係団体が一丸となり、ローカルホスト委員会として活動を行いました。

2ドメイン名の適切な管理・運用の重要性に注目が集まる

2019年は、ドメイン名の適切な管理・運用の重要性に特に注目が集まった一年でした。

JPドメイン名においては、登録者の意図しないドメイン名移転で成立したドメイン名の乗っ取りによりWebサイトが改ざんされた事例や、有名企業が過去に公式Webサイトとして使用し、その後、意図的に廃止したドメイン名がオークションにかけられて、第三者に高額で落札された事例などが大きな話題となりました。

2019年4月には、登録要件を満たさない者によるJPドメイン名の不正な登録が行われていた件について、総務省からJPRSに対し、信頼性確保のための取り組みの要請が出されました。JPRSではこれを受け、ドメイン名の適切な管理・運用のための情報提供や注意喚起といった取り組みを継続しつつ、JPドメイン名のレジストリとして、業務手順の改善・ドメイン名の不正登録に関する情報受付窓口の設置などを行っています。

一方、ドメイン名の登録者においては、登録中のドメイン名についてサービスを提供する事業者からドメイン名の移転や更新/廃止、レジストラ(JPドメイン名においては指定事業者)の変更など、登録者の意向確認のための連絡が来ることがあります。登録者はそうした連絡を正しく受け取り、また適切な対応ができるように準備しておく必要があります。

また、登録者がドメイン名を手離す(廃止)に当たっては、それが意図的な廃止であっても、そのドメイン名が一定期間後に第三者に再登録・利用される可能性があることを認識しておく必要があります。

ドメイン名を始めとするインターネットの基盤が、適切に管理・運用されることの重要性は今後も変わることはありません。JPRSは、引き続きJPドメイン名の信頼性確保のための活動に取り組みながら、ドメイン名の登録に関わる方々への働きかけについても継続してまいります。

3DNSの通信においても進むプライバシー保護の動き

インターネット利用者のプライバシー保護に対する意識の高まりもあり、DNSにおいても通信の暗号化や通信プロトコルの改良によって機密性を確保するための動きが進んでいます。

「DNS over HTTPS(DoH)」は、DNSの通信路にWebの通信で使われるHTTPSを使う技術で、利用者とフルリゾルバーの間の通信を暗号化・保護するための仕組みです。

DoHはGoogle Public DNSを始めとする主要なパブリックDNSサービスが既に対応しており、主要なWebブラウザーやOSにおける対応・標準サポートに向けた動きなど、DNSの実装・サービスにおける普及が急速に進んでいます。

しかしながら、DoHの急速な実装やサービス展開に対しては、一部の識者から懸念を示す声も上がっています。組織内ネットワークや家庭内ネットワークにおいて、ポリシー上の理由から特定のサイトやサービスへのアクセスをDNSブロッキングによって制限する場合がありますが、DoHはその制限をすり抜ける手段となりえる他、DNSの通信を利用したマルウェアがDoHに対応することで、その検出やブロックといった対策が難しくなってしまう恐れがあります。また、大手パブリックDNSサービス事業者に利用者の情報が集中することには、DNSの技術的な面やメタデータの取り扱いの観点から危ぶむ声も聞かれます。

こうした懸念の背景として、DoHはIETFにおけるプロトコルの標準化と実装/サービスにおけるサポートが先行し、各組織における取り扱いや運用の仕組み作り、事業者が提供するサービスの仕様や取得する情報の透明化など、課題の解決が後手に回っているという実情があります。これらの課題については2020年以降、解決に向けた動きが活発化してしていくものと見られます。

4ルートゾーンKSKロールオーバーの完了

2017年より進められてきた「ルートゾーンKSKロールオーバー」について、2019年1月11日から3月22日にかけて、使われなくなった旧KSKを失効させる作業が実施されました。これにより、今回初となったルートゾーンKSKロールオーバーに関して、ルートサーバーの設定に影響する作業ステップがすべて完了しました。

今回のルートゾーンKSKロールオーバーに起因する大きな問題の発生は報告されず、2019年3月4日(米国太平洋時間)にICANNが公開した今回のルートゾーンKSKロールオーバーの全体状況をまとめた文書でも「圧倒的な成功(an overwhelming success)」であったと報告されています。

現在は、今回の作業状況の振り返りと今後の鍵更新に向けた手順の整備が進められており、次回以降の計画がまとめられる予定です。

また、2019年11月には、JPRSの堀五月がルートゾーンのDNSSEC運用の一部を担う技術コミュニティの代表メンバーである「Backup TCR」に選出されました。Backup TCRは、21名のActive TCRに欠員が生じた際の補充要員として、Active TCRになるための要件をすべて満たしている者から10名程度が選ばれます。

堀は、2012年からccTLDレジストリの技術者として、JP DNSやMルートサーバーのサーバー・ネットワークの設計・構築・運用に携わってきました。今後、その経験を生かし、グローバルなインターネットコミュニティに貢献していくことになります。

5ISOCが「.org」のレジストリであるPIRの売却を発表

2019年11月13日、ISOC(Internet Society)が「.org」のレジストリであるPIR(Public Interest Registry)を、投資会社のEthos Capitalに売却すると発表しました。

PIRは2002年にISOCの子会社として設立され、2003年1月に当時の米VeriSignから「.org」のレジストリ事業を継承しました。また、「.org」は2019年7月時点で1050万件を超える登録があり、多くの非営利組織が登録していることでも知られています。

PIRの売却に関しては、2019年7月に更新されたICANNとPIRとの契約で、年に10%までとされていた「.org」の登録料金の値上げ上限が撤廃されたこともあり、「登録料金が跳ね上がるのではないか」、「Ethos CapitalはISOCほど公益性を重視しない可能性があるのではないか」などといった懸念から様々な団体が売却反対を表明しています。

Ethos Capitalは、ISOCと共同で立ち上げたWebサイトの中で、「.org」の登録料金の値上げについては年に最大10%とする計画であることや、Ethos Capitalがコミュニティからの懸念を理解しており、今後もコミュニティのニーズに応えていくことなどを表明しています。

売却の手続きは2020年第1四半期に完了する予定となっていますが、2019年12月にはICANNが今回の取引の透明性を求めて、売却取引の承認を30日間保留することを発表するなど、その動向は今後も注目を集めることになりそうです。

番外編:JPRSがccTLDを楽しく学べるポスターを全国の教育機関へ無償配布

JPRSは、インターネットに関する教育支援活動の一環として制作したccTLDを一覧にしたポスター「ドメイン名は世界のインターネット住所!!」を、2019年11月25日より全国の中学校・高等学校・高等専門学校など教育機関を対象に無償で配布しています。

この取り組みは、生徒たちが日常的に利用していながら、普段あまり意識することのないccTLDについて、ポスターというツールを用いて理解を深めてもらうことを目的に実施しているものです。

今回配布するポスターは、例えば「.jp」であれば日本に割り当てられたccTLDであり、「平成から令和に元号が変わった国」と紹介しているように、ccTLDが割り当てられた251の国や地域の名前とエピソードをccTLDと共に掲載することで、楽しみながら学べるものとなっています。

ポスターのお申し込みは2019年12月25日まで。PDFで内容をご覧になりたい方、配布をご希望の教育機関の方はぜひ関連リンクをご確認ください!

※更新履歴
2019/12/20 タイトルの一部を修正