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増刊号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2004-08-19━
◆ FROM JPRS 増刊号 vol.24 ◆
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第60回IETF Meeting報告
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第60回IETF Meetingが2004年8月1日から6日にかけて、米国サンディエゴで開
催されました。多くのテーマが議論されるIETFの中から、ここではDNSやENUM
に関する話題を中心にお届けします。
◇ ◇ ◇
■IEPG(Internet Engineering and Planning Group) Meeting
IEPGは、インターネットサービスオペレータで構成される、インターネット全
体に関する運用環境や運用技術に関する技術的調整を円滑に進めるためのグルー
プです。主に地域インターネットレジストリ(RIR)オペレータやTLDオペレー
タ等が報告・議論を行っています。
今回のRIRからの報告で特筆すべきことは、ヨーロッパ地域におけるIPv6の割
り振りが、この1、2年で大きく増加していることです。IPv6への取り組みは日
本が先行する形で進めてきましたが、このヨーロッパにおける動きや、米国の
国策としての取り組みなど、全世界的な動きになってきたと言えます。
JPRSからは、今年の2月から実施している日本語JPナビに関して、導入前の技
術的な検証内容と、導入後の日本語JPドメイン名の活用状況について報告を行
いました。事前検証などを十分に行ったJPRSの姿勢に対する反応は大変好意的
で、IEPG世話人からはこのようなプロセスと成功事例に関する報告を行ったこ
とに対して感謝の意が述べられました。
発表資料:「Experience with 8 bit label in JP Zone」(PDF)
http://jprs.jp/tech/material/IEPG20040801-yoneya.pdf
■DNSEXT(DNS Extensions) WG
DNSEXT WGは、DNSの各機能の拡張に関する議論を行うためのWGです。ここ1年、
DNSSECのプロトコル仕様の改定を最優先の課題として、集中的に活動を進めて
います。
改定されたDNSSECは「DNSSECbis」と呼ばれ、鍵交換にかかる運用コストが大
きいという元の仕様の問題点を解決するものです。現在はRFC化に向けて最終
的なレビューが行われています。
今回の会議では、DNSSECで用いる公開鍵暗号の鍵管理やセキュリティ的な課題
など、普及のための障壁について議論され、現在出されている提案についての
検討を継続していくこととなりました。
■DNSSEC Deployment Working Group
DNSSEC Deployment Working Groupは、IETFにおけるDNSSECの標準化作業の進
展を受け、DNSSECの普及を目指して有志によって組織されました。2004年5月
にオランダと米国でDNSSEC普及のためのロードマップ作成を目的としたワーク
ショップ(*1)を開催し、その後、電話会議やメーリングリストにより議論を
行っています。
(*1)ワークショップの詳細についてはバックナンバー「DNSSEC普及のための
ワークショップ開催~Building a Road Map for DNSSEC Deployment報
告?(http://jpinfo.jp/event/2004/0615dnssec.html)」をご覧くだ
さい。
このワーキンググループは、米国国土安全保障省(DHS)、米国商務省標準技
術局(NIST)およびICANNの支援を受けています。
今回は、DNSSECの普及のために必要な作業項目が議論され、それぞれを推進し
ていく担当者が決まりました。JPRSもccTLDレジストリとENUMの分野の検討推
進役を担うことになりました。
今後、それぞれの担当者を中心に精力的な活動が進められていく予定ですが、
活動の内容については、ワーキンググループのWebに随時掲載されていくこと
になっています。
■MARID(MTA Authorization Records in DNS) WG
spamメールの問題はインターネット全体で大きな問題となっており、その解決
に向けた動きはIETFにおいても急ピッチで進められています。
MARID WGでは、既存のインターネットの仕組みの中で速やかに導入することが
でき、spam対策に効果をあげることができる方法について議論されています。
spamメールは多くの場合、差出人のアドレスを偽装して送られてくるため、メー
ルを送信するサーバの情報をDNSに登録して、受信側が正しいサーバから送ら
れたメールであるかどうかを確認する、という方法を基本にいくつかの提案が
出されています。
今回の会議では、これらの提案を一本化する議論が行われました。この中で、
提案者の一つである米Microsoft社から、議論されている技術の一部について
知的所有権(IPR)が主張されました。WGとしてはIPRに対する方針の提示を求め
ることとし、標準化への障壁とならないことが確認できればプロセスを進めて
いくことになりました。
今回の会議では、これらの提案を一本化する議論が行われました。特に問題点
が見つからなければ、8月中には仕様案が固まる予定になっています。
■DNSOP(Domain Name System Operations) WG
DNSOP WGは、DNSを運用するにあたっての問題点や運用に関する手法を議論し、
DNS運用に関する標準的手法を確立するためのWGです。
JPRSからはWIDEプロジェクトの研究者とともに、DNSサーバにおけるIPv6 AAAA
の取り扱いの誤りが、既存のIPv4ネットワークの利用におよぼす不具合の詳細
について調査した結果をまとめたインターネットドラフトを提出しています。
このドラフトは現在IESGによる査読中であり、査読完了後にRFCとなる予定で
す。
また、DNSのプロトコルでは指定可能なDNSサーバの数に制限がありますが、一
つのDNSサーバホスト名に複数のIPアドレスを付与することにより、DNS サー
バ指定の効率を上げる手法についての発表を行いました。この提案については
発表の際に参加者からいただいたコメントも参考にしながら、今後さらに考察
を深めていく予定です。
発表資料:「An Approach for Increasing Root And TLD DNS Servers」(PDF)
http://jprs.jp/tech/material/IETF60-dnsop-morishita.pdf
■ENUM(Telephone Number Mapping) WG
ENUM WGは、ENUM技術の標準を決め、運用のための技術資料を作成し、ENUM運
用に関する情報交換を行うためのWGです。
現在は、ENUMの普及に向けて実装上の問題点の解決を進めており、JPRSもETJP
での経験をもとに、大きな役割を果たしています。
また、今回の会議では、ENUMが使われる領域に関する議論がBoFとして行われ
ました。ENUMの利用の形としてイメージされるのは、ユーザの電話番号にサー
ビスを関連付けるもので、「ユーザENUM」と呼ばれます。しかし、ENUMに関す
る議論の中で、ENUMにはユーザENUMとは異なる応用の形があることが認識され
つつあります。「キャリアENUM」や「企業ENUM」などと呼ばれていますが、IP
電話を実現するためのインフラとしてENUMを用いるものです。
今回のBoFは、このキャリアENUMに関する認識を広げ、今後の議論の共通の土
台を作るという意味で非常に有意義なものとなりました。
発表資料:「draft-ietf-enum-experiences-00.txt」(PDF)
http://jprs.jp/tech/material/IETF60-enum-fujiwara.pdf
■Plenary(全体会議)
Plenaryではまず、今回の参加人数がIETF チェアから報告されました。それに
よると今回のIETF Meetingには40ヶ国から1,511人が参加しており、ここ数年
にわたって続いていた、米国開催における参加者減少傾向に歯止めがかかった
形となりました。
続いてRFC Editor、IANA、IESGの各担当者からの状況報告が行われ、ここ数年
にわたり問題点として指摘されてきた、RFCの発行や共通資源の割り当て等に
要する期間の長期化について、各方面における活動・努力によりかなりの改善
がみられた旨の報告がありました。
これらのことから、IETFがインターネットの技術的な標準を検討する場として
機能し続けるために、どちらもよい方向に向かっていると言えます。
◇ ◇ ◇
◎関連URI
- IETFホームページ
http://www.ietf.org/
- IETF Meeting情報
http://www.ietf.org/meetings/meetings.html
- IEPGホームページ
http://www.iepg.org/
- DNSSEC Deployment WGホームページ
http://dnssec-deployment.org/
- 第59回IETF Meeting報告(2004年3月16日公開)
http://jpinfo.jp/event/2004/0316ietf.html
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