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増刊号

vol.86

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2008-04-11━
                    ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.86 ◆
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          電子メールアドレスの国際化とDNSに関する最新技術動向
                ~第71回IETF Meetingでの話題を中心に~
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今回のFROM JPRSでは、2008年3月に米国のフィラデルフィアで開催されたIETF
71 Meeting(以下、IETF71)で議論された話題の中から、電子メールアドレス
の国際化とDNSプロトコルに関する技術動向を中心にお伝えします。

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■EAI(Email Address Internationalization) WG

電子メールアドレスの国際化の作業はEAI WGで進められています。

EAI WGにおける電子メールアドレスの国際化はドメイン名の国際化とは異なる
手法が使われています。すなわち、電子メールアドレス全体をASCIIと上位互
換性があるUTF-8で取り扱うこととし、UTF-8を正しく取り扱えるように関連プ
ロトコルの仕様を拡張することによって国際化を実現しようというものです。

この手法が採用された経緯については、2007年8月13日付FROM JPRS増刊号「電
子メールアドレスの国際化の概要と現状~第69回IETF Meetingでの話題から~」
をご参照ください。

これまでのEAI WGで議論されてきた、電子メールアドレスの国際化の柱となる
4本のコアドキュメントのうち、UTF8HDR(*1)、SMTPEXT(*2)、DSN(*3)の
3本についてはWGにおける合意が形成され、IESGに提出されました。残る1本で
あるDowngrade(*4)については今回、WGでの合意形成のためのWG Last Call
を実施することが合意されました。合意形成後にIESGに提出される予定です。

コアドキュメントの進捗を受け、EAI WGでは現在、POPやIMAPといった電子メー
ルを扱うプロトコルや、HTMLドキュメント内のmailto: URI等、電子メールア
ドレスが使用されるさまざまなプロトコルをEAI対応とするための作業が進め
られています。

(*1)インターネットメッセージフォーマット(RFC 2822で定義)を拡張し、
      国際化された電子メールアドレスをヘッダに記述できるようにする

(*2)SMTP(RFC 2821で定義)を拡張し、国際化された電子メールアドレスに
      メールを配送できるようにする

(*3)国際化された電子メールアドレスを取り扱えるように、電子メールの配
      送状況通知(DSN)(RFC 3464で定義)と開封確認通知(MDN)(RFC
      3798で定義)を拡張する

(*4)国際化された電子メールアドレスを取り扱えない場合の、下位互換性維
      持のために行う変換について定義する

◆試験実装の評価と標準(Standards Track)への移行

EAI WGではまず実験(Experimental)目的のRFCを作成し、そして、実験を通
じた経験の収集と評価を行い、標準(Standards Track)となるRFCの作成につ
なげていくという戦略をとっています。

この戦略に従い、現在の仕様に基づいた試験実装を持ち寄り、実装の評価及び
相互接続性の検証を行うための作業が進められています。その一環として、
CNNIC、TWNIC、およびJPRSが開発したEAIのプロトタイプ実装が、JPRSの米谷
嘉朗からWGに紹介されました。また、.info等を管理するAfilias社のプロトタ
イプ実装も紹介されています。

WGでは今後、これらをはじめとする試験実装をターゲットに評価・検証を進め、
次回のIETF72で相互接続のデモンストレーションを行う予定です。その後は、
標準(Standards Track)仕様の作成を目指したWGの再編成を予定しています。

■DNSEXT(DNS Extensions) WG

DNSEXT WGはDNSの機能拡張に関する議論を行うためのWGです。DNSSECbisプロ
トコルの完成に伴いIETFにおける会議開催を休止していましたが、今回、IETF68
以来1年ぶりに会議が開催されました。

今回のWGではこの1年の間に標準化が完了した内容、またメーリングリスト上
で議論された議題のアップデートに関する話題が中心となりました。

DNSEXT WGではこの1年の間に6本のRFCが発行されました。中でもRFC 5155とし
て2008年3月に標準化されたNSEC3は、DNSSECプロトコルにおいてこれまで実装
上の障害となっていたzone walking(*5)を技術的に解決するもので、今後の
DNSSECの普及を図る上で、大きな前進となるものです。

(*5)DNSSECの仕組みを利用し、あるドメイン名の中に存在する名前だけをア
      ルファベット順にたどることで、実在する全ての名前情報を外部から入
      手する行為。

◆「DNS実装者向けガイド」作成の試み

今回のDNSEXT WGではAPNICのジョージ・マイケルソン氏から、DNSの実装者向
けガイド「The Modern DNS Implementation Guide」の作成が提案され、議論
されました。

現在のDNSプロトコルは、基本となるRFC 1034およびRFC 1035が発行されてか
ら既に20年以上が経過しており、その間にさまざまな機能拡張や修正、さらに
プロトコル仕様の明確化(clarification)等のための数多くのRFCが発行され
ています。DNSの実装者は関連するRFCをすべて参照し、内容を理解した上で実
装を行う必要があるため、参照すべきRFCに漏れが発生するおそれがあります。
これを防ぐため、DNSのそれぞれの機能ごとに既存のRFCを参照する形でまとめ
た実装ガイドを作成し、実装者のための便宜を図ることが、今回の提案の目的
です。

会場では、このようなドキュメントの必要性を認めつつも、RFC 1034および
RFC 1035を置き換えるドキュメントをスクラッチから書く形のほうがよいので
はないか、という意見も寄せられました。この話題については、今後もWGの場
で議論されることになります。

◎関連URI

    Email Address Internationalization (eai) Charter
    (IETF EAIワーキンググループ)
    http://www.ietf.org/html.charters/eai-charter.html

    [EAI] EAI implementations and interoperability testing
    (JPRSの米谷嘉朗からのCNNIC、TWNIC、JPRSのEAIプロトタイプ実装の紹介)
    http://www.ietf.org/mail-archive/web/ima/current/msg02469.html

    Re: [EAI] EAI implementations and interoperability testing
    (Afiliasのジョセフ・イー氏からのEAIプロトタイプ実装の紹介)
    http://www.ietf.org/mail-archive/web/ima/current/msg02484.html

    DNS Extensions (dnsext) Charter
    (IETF DNS Extensionsワーキンググループ)
    http://www.ietf.org/html.charters/dnsext-charter.html

    RFC 5155: DNS Security (DNSSEC) Hashed Authenticated Denial of Existence
    (NSEC3の技術仕様)
    http://www.ietf.org/rfc/rfc5155.txt

    The Modern DNS Implementation Guide
    (DNS実装者向けガイドの提案)
    http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-ietf-dnsext-dns-protocol-profile-01.txt

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