JPドメイン名のサービス案内、ドメイン名・DNSに関連する情報提供サイト


メールマガジン「FROM JPRS」

バックナンバー:vol.130

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2013-04-26━
          ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.130 ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
___________________________________

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
             ICANN北京会合報告             
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2013年4月7日から11日にかけて、第46回ICANN Meetingが中国の北京で開催さ
れました。

本会合の参加登録者数は約2,600人と前回のICANNトロント会合の約1,500人か
ら大きく増加し、これまでにおける最大規模のICANN会合となりました。中国
国内からの登録者は約700人でしたが、これら中国国内からの参加者を中心に
会合への初参加を示す「New Comer」のバッジをつけた参加者が目立ちました。

今回の会合では、CNNICとDotAsia Organisationがメインスポンサーとなった
「Youth Forum in ICANN」及び「Children's Forum in ICANN」というフォー
ラムが開催されました。フォーラムには世界各国から10代の若者・子供が参加
し、若者や子供の視点から見たインターネットが抱える課題とその解決に向け
た活動についての議論が行われました。参加した若者・子供はICANN本会議に
おけるPublic Forumでも今回の議論結果を踏まえた発言をするなど、参加者に
強い印象を与えました。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。なお、
DNSSECワークショップなどの技術系のセッションについては、別号にて報告予
定です。

(1)IDN ccTLD導入に関する最新動向
    - IDN ccTLDの恒久的ポリシー検討
    - IDN Variant TLD Program

(2)ccNSO会合での話題から
    - ccTLDからICANNへの財政的貢献
    - インターネットガバナンスに関する議論

(3)その他の内容・議論から
    - ICANN構造改革の進捗状況
    - 新gTLDレジストリ契約(Registry Agreement:RA)について
    - 2013年版レジストラ認定契約(Registrar Accreditation Agreement
         :RAA)について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
(1)IDN ccTLD導入に関する最新動向
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼IDN ccTLDの恒久的ポリシー検討

IDN ccTLDについては、早期に必要なIDN ccTLDを限定的に迅速導入するため
の「ファストトラックプロセス」による申請受付/委任がこれまで行われてき
ました。それと並行して、IDN ccTLDの正式導入のために必要となる「ポリ
シー策定プロセス(PDP)(*1)」の検討も、WG 1とWG 2という二つのワーキ
ンググループで進められてきました。なお、JPRSはいずれのワーキンググルー
プにも参加しています。

今回の会合ではPDPの策定に関する議論が進められました。IDN ccTLDの
文字列や委任に関する検討はIDN PDP WG 1で、IDN ccTLD導入に際して必要と
なるICANN定款見直しの検討はIDN PDP WG 2で検討を実施してきましたが、前
回のトロント会合においてそれぞれのワーキンググループの議論が収束したこ
とを受け、議論結果を記した文書の最終的な確認が行われました。

(*1)ICANNの役割の一つに、インターネット資源の調整業務に関連するポリ
      シー策定があり、このポリシー策定のための一連の流れをPDP
      (Policy Development Process)と呼びます。  

検討結果の文書は、それぞれccNSO(*2)評議委員会にて採択されました。今
後ccNSOメンバーによる投票を経た後、IDN ccTLDに関する恒久的ルール及び
ccNSOに関するICANN定款の変更をICANN理事会に対し提案する予定です。

(*2)ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体として、
      ICANNの他の支持組織や委員会などと協調しながらccTLD全体にまたが
      るグローバルな課題についてポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告
      を行う役割を担います。 

また、国名として認識すべき文字列についての検討は研究グループ
「Study Group on Use of Names for Countries and Territories」で進めら
れています。この研究グループにも、JPRSがメンバーとして参加しています。
ワーキンググループでは今回UNESCOとの協働により、各国が国名をどのように
取り扱っているかについての調査を実施しました。現在、これらの議論や調査
の結果を踏まえた最終報告書の作成を進めています。

▼IDN Variant TLD Program

「IDN Variant TLD Program Project 2.1」は、DNSルートゾーン用のラベル生
成ルール「RootLGR(Root Label Generation Rules)」を作成するための活動
で、ルートゾーンで使用可能な国際化された文字を追加するための手続きの策
定を目的としたプロジェクトです。

本プロジェクトにはJPRSの米谷嘉朗がIDNの専門家の立場で参加しており、
2013年3月22日に活動結果をまとめた最終報告書を提出し、活動を完了しまし
た。その後、当該報告書は2013年4月11日のICANN理事会で承認され、RootLGR
が完成しました。RootLGRの完成に伴い、個別の言語や文字の追加や異体字
ルールの作成に関する「生成パネル(Generation Panel)」、及び生成パネル
が作成したルールを統合する「統合パネル(Integration Panel)」の活動が
開始されることになります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
(2)ccNSO会合での話題から
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼ccTLDからICANNへの財政的貢献

ICANNに対するccNSOからの財政面での貢献について、前回のトロント会合後に
行われた調整の状況が報告されました。

報告では、ccTLDからICANNに対して具体的にどの程度の貢献が必要なのかとい
う根拠を、以下の三つのカテゴリーに分類して検討しています。

1.IANA契約など、直接的なサポート関連
2.ICANN会合時の会場提供など、間接的なサポート関連
3.各ワーキンググループの活動サポート関連

その結果、三つ目の各ワーキンググループの活動サポート関連については、各
ccTLDで実施しているIGF(インターネットガバナンスフォーラム)関連活動な
どにより、知見がICANNと共有されたりICANN活動の啓発が行われたりしている
ことでICANN側の利益ともなっており、費用として計上すべきではないという
合意がなされました。

そのため、残りの二つに関する費用をccTLDからICANNに対する貢献の根拠とし
て検討することとなり、その結果370万米ドルが貢献額として妥当であるとい
う結論に至りました。ワーキンググループではこれを基に、ICANNに対して各
ccTLDが支払う金額のあり方についての検討を開始しています。

今回の会合では、各レジストリが管理するドメイン名数に対応させた費用負担
案が発表され、活発な議論が行われました。本セッションにおける議論内容を
基に、引き続き、支払額モデルの検討をワーキンググループにて進めていく予
定です。

▼インターネットガバナンスに関する議論

ccNSO会合では2012年の後半から国際連合の専門機関の一つである国際電気通
信連合(以下、ITU)の定める「国際電気通信規則(以下、ITR)」が、イン
ターネットにも適用されるのではないかという動きに関する議論が行われてき
ました。ITRの改正には、ITU内の世界国際電気通信会議(以下、WCIT)の開催
が必要とされており、2012年12月に開催されたWCITの内容に注目が集まってい
ました。

今回のccNSO会合では、今後開催される各種インターネットガバナンスに関す
る議論の動向を引き続き注視し、各国政府と連携を取り合って行動することが
必要であることが確認されました。

また、ICANNが各国政府との間で進めている調整と各ccTLDレジストリがそれぞ
れの国や地域内において実施している活動との間の連携が十分に取れていない
ため、ICANNが現在進めている戦略の内容を提示してほしいという意見が参加
者から出されました。この件についてはccNSO評議委員会とICANN理事会の間の
会合でもccNSO側から質問事項として提示しましたが、今回はICANN側からの明
確な回答は得られませんでした。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
(3)その他の内容・議論から
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼ICANN構造改革の進捗状況

4月8日に開催された「Opening Ceremony」において、ICANNのCEOである
Fadi Chehade氏が「Our Season」と題したプレゼンテーションを行いました。
これは、前回のトロント会合におけるプレゼンテーション「A New Season」の
続きにあたり、前回と同様に今後のICANNが目指す方向性に関する強いメッ
セージ性を持つ内容となっていました。同氏はプレゼンテーションの中で、
ICANNそのものがインターネットガバナンスにおける活動の中心となるのでは
なく、ICANNの役割はあくまでもインターネットの各コミュニティにおける活
動であり、活動の主役は各コミュニティの参加者自身であるべきであるという
所感を示しました。

また、同氏はICANN本部のあるロサンゼルスに加え、活動拠点をイスタンブー
ルとシンガポールに新設し、3拠点体制とすることを発表しました。その上で
24時間体制でのサービス提供を可能とし、米国法人であることに由来するさま
ざまな制約からの脱却を図っていくという決意を示しました。

さらに、今回新設する二つの活動拠点とは別に「協力センター(Engagement
Center)」を世界中に設置する予定ですが、その第一号として、北京に設置す
ることを発表しました。Chehade氏はプレゼンテーションの中で拡大し続ける
中国のインターネット市場についても言及し、今後中国がインターネットコ
ミュニティの中心となっていくであろうと述べるなど、中国を重視した発言が
目立つ内容となりました。

▼新gTLDレジストリ契約(Registry Agreement:RA)について

4月1日付でICANNが提示した新gTLDプログラムにおけるレジストリの契約書案
を基に、レジストリ側のグループである「Registries Stakeholder Group
(RySG)」と新gTLDプログラムに応募した事業者のグループ
「New TLD Applicant Group(NTAG)」の有志が、最終的な内容の合意に向け、
会期中にICANN側と積極的な折衝を重ねました。

当初の計画では最初のレジストリ契約の締結を2013年4月23日としており、
ニューヨークでの大々的なプレスイベントの実施も計画されていました。しか
し、本会合後も、契約書の内容の合意に向けた折衝が継続されることとなった
ため、計画されていたプレスイベントは中止となりました。

今後、近日中に契約の最終案が公表され、パブリックコメントを経たうえで
ICANN理事会が「基本契約書」として採択する予定となっています。採択時期
は早ければ2013年6月、遅くとも7月のダーバン会合において採択される見込み
です。

今回の採択の遅れが委任前試験の実施など、他の新gTLDプログラムのスケ
ジュールにどのような影響を与えるかについては、ICANNが精査を進めていま
す。

▼2013年版レジストラ認定契約(Registrar Accreditation Agreement:RAA)
 について

2011年から断続的に進められていたICANNとレジストラ側チームとのレジスト
ラ認定契約の改訂交渉が会期中に妥結し、最終合意に至りました。

今回合意に至った内容は2013年3月7日にICANNが発表したレジストラ認定契約
案における未合意内容を合意したもので、原案からの大きな変更はなかったと
のことです。

本会議終了後の4月22日付で契約最終案が公開されており、5月13日までパブ
リックコメントの募集が行われています。その後、早ければ6月のICANN理事会
で採択される可能性があります。

■次回のICANN会合

次回の第47回ICANN会合は、2013年7月14日から19日にかけて南アフリカ共和国
のダーバンで開催される予定です。

     ◇           ◇           ◇

◎関連URI

 - ICANN 46 | 7-11 April 2013 | China
  http://beijing46.icann.org/
  (ICANN北京会合公式ページ)

 - IDN ccTLD Fast Track Process | ICANN
  http://www.icann.org/en/resources/idn/fast-track
  (IDN ccTLDファストトラックプロセスに関するICANNのページ)

 - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation
  http://ccnso.icann.org/workinggroups/
  (ccNSOのワーキンググループ紹介ページ)

 - Applicants | ICANN New gTLDs
  http://newgtlds.icann.org/en/applicants
  (新gTLD申請者に向けたICANNのページ)

 - Program Status | ICANN New gTLDs
  http://newgtlds.icann.org/en/program-status/statistics
  (新gTLDプログラムの進行状況を示したICANNのページ)

 - Proposed Final 2013 RAA | ICANN
  http://www.icann.org/en/news/public-comment/proposed-raa-22apr13-en.htm
  (レジストリ認定契約の最終案を公開したICANNのページ)

 - Announcements for 2013 | ICANN
  http://www.icann.org/en/news/announcements
  (ICANNのアナウンス一覧ページ)

 - International Telecommunication Union(ITU)
  http://www.itu.int/en/Pages/default.aspx
  (International Telecommunication Unionのページ)

 - International Telecommunication Regulations(ITR)
  http://www.itu.int/ITU-T/itr/
  (International Telecommunication Regulationsのページ)

 - World Congress on Information Technology(WCIT)
  http://www.wcit2012.org/en/
  (World Congress on Information Technologyのページ)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━
■会議報告:http://jprs.jp/related-info/event/
■配信先メールアドレスなどの変更:http://jprs.jp/mail/henkou.html
■バックナンバー:http://jprs.jp/mail/backnumber/
■ご意見・ご要望:from@jprs.jp

当メールマガジンの全文または一部の文章をホームページ、メーリングリスト、
ニュースグループ、他のメディアなどへ許可なく転載することを禁止します。
また、当メールマガジンには第三者のサイトへのリンクが含まれていますが、
リンク先のサイトの内容などについては、JPRSの責任の範囲外であることに
ご注意ください。
その他、ご利用にあたっての注意事項は読者登録規約にてご確認ください。
http://jprs.jp/mail/kiyaku.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
http://jprs.jp/
Copyright(C), 2013 Japan Registry Services Co., Ltd.