JPドメイン名のサービス案内、ドメイン名・DNSに関連する情報提供サイト
メールマガジン「FROM JPRS」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2015/11/17━ ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.157 ◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ___________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ICANNダブリン会合報告 ~インターネットガバナンスとccTLDレジストリ関連の話題を中心に~ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2015年10月18日から22日にかけて、第54回ICANN Meetingがアイルランドのダ ブリンで開催されました。 本会合の参加登録者数は2,222人で、開催地がアイルランドであったためか、 ヨーロッパ地域からの参加者が多く見られました。会合全体としては、今回も IANA監督権限の移管やICANNのアカウンタビリティ(説明責任)など、イン ターネットガバナンスに関する話題が中心となりました。 オープニングセレモニーでは、ICANN CEOのファディ・シェハデ (Fadi Chehade)氏が「ICANNはインターネットリソースの技術/運用の調整 (テクニカルコーディネーション)機関であり、インターネットの利用方法や コンテンツが適切かどうかを判断したり、取り締まるような役割は担わない」 と述べるなど、インターネットガバナンスに関する議論を背景に、今回も ICANNの役割を強調する場面が見られました。 また、2016年3月でICANNのCEOを退任することを表明しているシェハデ氏に代 わる次期CEOの選出に関しても、年明けに発表する予定で進捗していることを 明らかにしました。 今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。 (1)インターネットガバナンスに関する話題 - IANA監督権限の移管について - ICANNのアカウンタビリティについて (2)ccNSO会合での話題 - ICANNのアカウンタビリティに関する議論 - ICANN会合の開催形態変更に関する検討 (3)Whois/RDSに関する話題 - .com/.net/.jobsのThick Whoisへの移行 - WhoisからRDAPへの移行 (4)その他の内容・議論から - 新gTLDに関する動向 - IDN TLDに関する話題 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (1)インターネットガバナンスに関する話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼IANA監督権限の移管について IANA(*1)監督権限の移管(IANA Stewardship Transition)、つまり、 ・IANAの機能遂行状況の監督、TLDの委任(delegation)最終判断など、 IANAのオペレーションに関して米国商務省電気通信情報局(NTIA)が果た している役割の移管 ・現在、NTIAが契約主体となっているIANA機能やルートゾーン管理に関する 契約の移管 については、グローバルなマルチステークホルダーのコミュニティに権限を移 管できるようにするため、計画の策定と移管後の受け入れ体制の検討が行われ ています。 (*1)Internet Assigned Numbers Authorityの略称。ドメイン名、IPアドレ ス、プロトコルパラメーターなどのインターネット資源を管理する ICANNの一機能です。 2015年6月に開催された前回の会合では、ドメイン名、IPアドレス、プロトコ ルの各分野の提案が出揃い、その後ICANN理事会及びNTIAに提出するための一 つの提案にまとめるべく、ICG(*2)での統合作業が行われてきました。本会 合では、その進捗についてICGより報告が行われ、意見募集の結果、おおむね コミュニティの支持を得られたとして、一緒に提出することが求められている ICANNアカウンタビリティに関する提案の完成を待つ状態となりました。 (*2)IANA Stewardship Transition Coordination Groupの略称。IANA監督権 限の移管に関するステークホルダーの代表者からなる調整機関です。 ▼ICANNのアカウンタビリティについて NTIAは、IANA監督権限移管の条件として、移管後のIANA機能の安定運用を保証 できるような提案をICANNに要請しており、それに対し、ICANNに十分なアカウ ンタビリティを持たせるための方法に関する議論がなされています。 今回の会合では、CCWG-Accountability(*3)とICANNの各種コミュニティとで 議論を行うセッションが設けられ、ワーキンググループのコミュニティに対す る情報共有と意見聴取のための時間が多く取られました。その中で、 CCWG-Accountabilityが作成した、ICANNのアカウンタビリティ強化に関する提 案の第二版に対する意見募集の結果も紹介されました。各セッションを通じて 聴取した意見を踏まえ、今後もワーキンググループでの議論が行われる予定で す。 (*3)Cross Community Working Group on Enhancing ICANN Accountability の略称。ICANNのアカウンタビリティ検討に関する、コミュニティ横断 型ワーキンググループ。 また、IANA監督権限の移管期日を1年間延長(2016年9月)したものの、今後も 必要な議論を行いながら検討を進めていくことが重要であるとの全体認識が共 有されました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (2)ccNSO会合での話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ICANNのアカウンタビリティに関する議論 IANA監督権限の移管とICANNのアカウンタビリティについては、ccNSO会合でも 話題の中心となり、CCWG-Accountabilityの提案第二版に対する意見募集の結 果を分析し、ccNSOメンバーに対して内容のレクチャーと進捗の共有が行われ ました。 当初、会合の終わりにccNSOメンバー全体で提案に対する支持を表明すること が目標とされていましたが、ccNSOメンバー内での合意が得られず、 CCWG-Accountabilityとしても進め方が固まっていなかったことから、ccNSO会 合参加メンバーのコメントや、会合の様子も参考に、引き続き CCWG-Accountabilityでの検討を行うこととなりました。 なお、2016年9月の提出期限までにNTIAに提案を行うためには、本会合中に提 案を完成させることが必要でしたが、期限に間に合わせることで十分な検討が 行われないということはあってはならないとして、今後の集中的な検討や意見 募集期間の短縮などにより、期限に間に合うように最大限努力すべきであるな どの意見が出ました。 ▼ICANN会合の開催形態変更に関する検討 ICANN会合の規模拡大に伴い、開催地の用意やローカルホストの負担の増加が 問題となってきています。この状況を踏まえ、年に3回開催されるICANN会合は、 2016年以降、以下の通り開催規模に変化が付けられる予定となっています。 ・1回目:現状と同規模 ・2回目:Supporting Organization(SO)/Advisory Committee(AC)の活 動中心 ・3回目:現状と同規模、ICANNの活動紹介、年次総会 2回目の会合は各SO/ACのみの集まりとなり、現在よりも規模が縮小されるこ とから、開催ホストへの要件が現在よりも緩和される見込みとなっています。 今回のccNSO会合では、この2回目の会合におけるccNSO会合の開催要否と内容 について議論が行われました。 結論として、ccNSOのみの集まりとするのではなく、理事会やGAC、GNSOなどの コミュニティと共通テーマについて議論を行う枠を確保してはどうかといった 提案が出されました。また、2016年はこれまでと同様の内容でccNSO会合を試 験的に開催することとし、参加者の数や会合開催後のフィードバック次第で、 2017年以降についての開催要否検討を行うこととなりました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (3)Whois/RDSに関する話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Whoisなど、レジストリ登録情報の検索サービスをRegistration Directory Services(RDS)と言います。ICANNでは、次世代RDSを実現するプロトコルと してRDAP(*4)の検討が進められています。 (*4)Registration Data Access Protocolの略称。ドメイン名などの登録情 報にアクセスするためのプロトコルです。URIによりデータが渡され、 JSON(JavaScript Object Notation:JavaScriptのオブジェクト表記方 法に由来する簡便なデータ記述法)の形式で応答が返されます。 ▼WhoisからRDAPへの移行 現在のWhoisには、「出力書式が規格化されていない」「国際化対応されてい ない」「認証機構がない」といったプロトコル上の問題点が存在しています。 そのため、Whoisプロトコルの置き換えを目的としたRDAPの標準化作業がIETF で進められ、2015年3月にRFC 7480~7484として標準化されました。本会合で はWhoisのRDAPへの移行についても議論が行われました。 ICANNは2016年~2017年にかけてRDAPを実装し、Whoisとの並行期間を設けて移 行を進めたい考えですが、引き続き検討が行われる予定となっています。 ▼.com/.net/.jobsのThick Whoisへの移行 ドメイン名の登録情報をインターネット上で参照するためのWhoisには、レジ ストリのモデルの違いにより、以下の二つの形式が存在します。 ・Thin Whois :レジストリは登録者の情報を持たず、レジストラが持つ ・Thick Whois:レジストリが登録者の情報を持つ 本会合では、.com/.net/.jobsのWhoisをThinからThickに移行すること(*5) について、レジストリであるVerisignとICANNの担当者から説明が行われまし た。移行については、2015年6月まで法的見地からのレビューが行われ、その 後、ICANNのImplementation Review Teamと関係組織の専門家により実装の詳 細が議論されてきました。今後も引き続き実装の計画について調整が行われる 予定となっています。 (*5)レジストリ・レジストラモデルが作られた1999年当時は「レジストリは 小さくあるべきである」という考え方があり、.com/.net/.orgにThin Whoisが導入されました。現在は、Verisignが運用を担っている.com/ .net/.jobsのみがThin Whoisを採用しています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (4)その他の内容・議論から ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼新gTLDに関する動向 現在、2012年に行われた新gTLD募集(新gTLDプログラム)に対する各種レ ビューが行われている状況にありますが、本会合ではその進捗状況や報告書の 内容説明が行われました。現時点でレビューは予定通りに進行中で、2017年6 月に完了する見込みとなっています。 また、次回募集時期が2018年~2019年頃になるのではないかという見込みに変 化を与えるような具体的な動きは本会合では見られませんでしたが、GNSOのレ ジストリ部会(Registries Stakeholder Group:RySG)及びレジストラ部会 (Registrar Stakeholder Group:RrSG)の合同会合で、ICANNの幹部から「必 ずしもレビューの完了が次回募集の前提ではない。レジストリ・レジストラが 次回募集に向けての動きを加速させたいのであれば、理事会にその旨インプッ トしてほしい」という旨の発言がありました。 ▼IDN TLDに関する話題 新gTLD導入プログラムでは、国際化ドメイン名(IDN)によるTLDも申請可能と なっており、既に運用を開始しているIDN TLDもあります。さまざまな言語の 文字が使えるIDNにおいては、 ・字形は似ているが、異なる言語の文字であり、一目では区別がつかないもの ・字形は異なるが、意味・読み・発音は同じもの(異体字) などといった、利用者に混乱を招く可能性のある文字が存在します。また、異 体字に対してはそれぞれを等価とみなしたいという要求も存在しています。そ のため、現在の新gTLD導入プログラムは人手での審査を行ってきました。しか し、このような方法での申請文字列のレビューには限界があるため、要求を考 慮した共通ルールの早急な策定が求められています。 IDN Program Update及びIDN Root Zone LGR Workshopでは、共通ルール策定の ために活動している各言語生成パネル(Generation Panel:GP)から状況報告 が行われ、アラビア語やアルメニア語ではルール作りがほぼ完了し、キリル文 字やラテン文字などでも活動が始まったことなどが共有されました。 日本語生成パネル(Japanese Generation Panel:JGP)の状況及び、漢字を含 むTLDラベルのルールを検討している中国語生成パネル(CGP)、JGP、韓国語 生成パネル(KGP)間の調整活動状況については、JGPチェアであるJPRSの堀田 博文が報告を行いました。 ■次回のICANN会合 次回の第55回ICANN会合は、2016年3月5日から10日にかけてモロッコのマラケ シュで開催される予定です。 ◇ ◇ ◇ ◎関連URI - ICANN54 | ICANN Public Meetings https://meetings.icann.org/en/dublin54 (ICANNダブリン会合公式ページ) - Announcements - ICANN https://www.icann.org/news/announcements (ICANNのアナウンス一覧ページ) - NTIA IANA Functions' Stewardship Transition https://www.icann.org/en/stewardship/ (IANA監督権限の移管に関するICANNのページ) - CCWG on Enhancing ICANN Accountability https://community.icann.org/display/acctcrosscomm/CCWG+on+Enhancing+ICANN+Accountability (ICANNのアカウンタビリティに関するICANNのページ) - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation https://ccnso.icann.org/workinggroups/ (ccNSOのWG紹介ページ) - Program Status | ICANN New gTLDs https://newgtlds.icann.org/en/program-status (新gTLDプログラムの進行状況を示したICANNのページ) - Announcements | ICANN New gTLDs https://newgtlds.icann.org/en/announcements-and-media/latest (新gTLDプログラムに関するICANNのアナウンス一覧ページ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━ ■会議報告:http://from.jprs.jp/c?c=335&m=142&v=d5903985 ■配信先メールアドレスなどの変更:http://jprs.jp/mail/henkou.html ■バックナンバー:http://jprs.jp/mail/backnumber/ ■ご意見・ご要望:from@jprs.jp 当メールマガジンは、Windowsをお使いの方はMSゴシック、Macをお使いの方は Osaka等幅などの「等幅フォント」で最適にご覧いただけます。 当メールマガジンの全文または一部の文章をWebサイト、メーリングリスト、 ニュースグループ、他のメディアなどへ許可なく転載することを禁止します。 また、当メールマガジンには第三者のサイトへのリンクが含まれていますが、 リンク先のサイトの内容などについては、JPRSの責任の範囲外であることに ご注意ください。 その他、ご利用に当たっての注意事項は読者登録規約にてご確認ください。 http://jprs.jp/mail/kiyaku.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS) http://jprs.jp/ Copyright (C), 2015 Japan Registry Services Co., Ltd.