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メールマガジン「FROM JPRS」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2016/12/08━ ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.165 ◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ___________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 第57回ICANN会合(ハイデラバード)報告 ~IANA監督権限の移管後、初のICANN会合~ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2016年11月3日から9日にかけて、第57回ICANN会合がインドのハイデラバード で開催されました。 年次総会(Annual General Meeting)を含んだ7日間の会期で実施された(*1) 今回のICANN会合は、年3回の中でも最も大規模なものとなりました。参加登録 は11月3日の時点で130の国と地域から3,000名を超え、とりわけインド国内か ら1,300名以上の参加登録がありました。 (*1)2016年以降のICANN会合はFuture Meeting Strategyにのっとり、開催規 模や内容に変化が付けられることになっています。詳細は、下記の 「ICANN会合の開催形態変更に関する検討」をご参照ください。 https://jprs.jp/related-info/event/2015/1117ICANN.html 更に、今回は10月1日に米国商務省電気通信情報局(NTIA)がIANA監督権限を グローバルなマルチステークホルダーコミュニティに移管して以来、初めての ICANN会合となりました。オープニングセレモニーでは、ICANNのPresident and CEOであるヨーラン・マービー(Goran Marby)氏が、IANA監督権限の移管 後もIANAが提供するサービス内容には一切の変更がないこと、移管完了という 歴史は参加者一人一人が作り上げたものであることを強調していました。 また、今回の会合では以下のようなプログラムが開催されました。 ・年次総会での、ICANN理事交代やコミュニティへの貢献者の表彰 ・前半と後半の2回に分けられたパブリックフォーラム ・ICANNがグローバルコミュニティに対して実施しているアウトリーチ内容 を紹介するセッション ・「High Interest Topics」のセッション(*2) (*2)ICANNの構成組織である各Supporting Organization(SO)/Advisory Committee(AC)がICANN会合の場で議論すべきテーマについて提案し、 候補となった21テーマの中から、レビューを経て選ばれた8テーマが セッションとして設けられたものです。 https://meetings.icann.org/en/hitreviews 今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。 (1)ccTLD関連の話題 - 国名・地域名とその他の地理的名称に関する議論 - ccTLDの委任、解約、委任終了に関するポリシー検討 - JPRSの堀田博文がICANN ccNSO評議委員に再選 (2)Whois/RDSに関する話題 - 次世代Registry Directory Services(RDS)に関する議論 - gTLD WhoisのThick Whoisへの移行に関する議論 (3)その他の話題 - 新gTLDの次回募集手続検討 - ルートサーバーに関する議論 - JPRSの佐藤新太がICANNのCommunity Recognition Programで表彰 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (1)ccTLD関連の話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼国名・地域名とその他の地理的名称に関する議論 国名・地域名(2文字及び3文字コード)と地理的名称のTLDやドメイン名登録 のポリシーを検討する際のフレームワークについては、前回の第56回ICANN会 合でも議論が行われました(*3)。 (*3)前回までの検討状況については、第56回ICANN会合(ヘルシンキ)報告 「国名・地域名とその他の地理的名称に関する議論」の項目をご参照く ださい。 https://jprs.jp/related-info/event/2016/0823ICANN.html 2012年の新gTLD募集(新gTLDプログラム)において、gTLDとして3文字コード の利用を希望する申請がありましたが、現在のところICANNはISO 3166(*4) の一覧に掲載されている文字列の申請を受理していません(*5)。一方で、 「.bmw」、「.nyc」、「.dnp」などといった、一覧に掲載されていない3文字 コードは申請が受理されているという現状があります。 (*4)ISO 3166-1では、2文字のラテン文字を使用した「alpha-2」、3文字の ラテン文字を使用した「alpha-3」が定められており、ISO 3166-1の alpha-2は、国や地域に割り当てられるccTLDで採用されています。 https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0144 (*5)2文字コードについては、ISO 3166の一覧での掲載有無にかかわらず、 申請を受理していません。 この現状を受け、今後どのように対応すべきか、ccNSOとGNSOを中心にSO/AC を横断する形でのワーキンググループ(WG)で方針の検討を行っており、下記 の検討状況がccNSO会合で共有されました(*6)。 ・2文字コード - ISO 3166-1 alpha-2の一覧にない2文字コードであっても、将来的に国 や地域の名称として利用される可能性があるため、現状と同様、すべて の2文字コードについてgTLDとしての利用は認めない ・3文字コード - 以下の4案が示されるも、結論には至らず + 現状維持(ISO 3166-1 alpha-3掲載の文字列は、gTLDとして申請不可) + 自由化(制約なくgTLDとして認める) + ccTLDとして扱う + 当該国/ccTLDマネージャーからの異議がない限りgTLDとして認める ・2文字/3文字コード以外の国名・地域名とその他の地理的名称 - 現時点で議論されていない (*6)検討状況の詳細は、下記をご参照ください。 https://community.icann.org/display/CWGOUCNT/Output+and+Draft+Documents また、ccNSO会合ではWGでの検討状況が紹介されると共に、WGのccNSO代表より、 今後の検討をどのPolicy Development Process(PDP)において扱うかの方向 性として以下の3案が示され、議論されました。 ・今後の検討に関する方向性案 - GNSOのPDPで扱う (理由:gTLDの新設に関することであるため) - ccNSOのPDPで扱う(理由:ccTLDの定義に関する検討であるため) - 現状通りCCWG(Cross Community Working Group)で扱う ccNSOメンバー内での議論の結果、明確な方向性の決定には至らなかったもの の、本件はccTLDの定義にかかわる問題であることから、ccNSOで取り扱うべき 領域であるという意見が多数を占めたため、「GNSOのPDPで扱う」という方向 性案に関しては反対であるという結論に至りました。今後は、ccNSOメンバー 内での意見も考慮しながら、引き続き議論が行われることとなります。 ▼ccTLDの委任、解約、委任終了に関するポリシー検討 ccTLDの委任に関するプロセスとそのレビューの実施について、第三者に対し てそのプロセスを明確に示すべく、ccNSOで検討が行われています(*7)。 (*7)前回までの検討状況については、第56回ICANN会合(ヘルシンキ)報告 「ccTLDの委任に関する課題について」の項目をご参照ください。 https://jprs.jp/related-info/event/2016/0823ICANN.html 今回のICANN会合では、PDPの進め方についてccNSO評議会事務局より提案があ り、ccNSOメンバー間でも特に反対はなかったため、提案内容で進めることが ccNSO評議委員会で決定されました。 ・各用語の定義 - 委任(delegation) :ccTLDの委任を行うこと - 解約(revocation) :ccTLDレジストリとしての権限を解約するこ と - 委任終了(retirement):ccTLDを終了すること ・ccNSO評議会事務局によるプロセス検討の提案 - 二つのWGを設置し、一つのPDPとして検討を進める o WG 1:ccTLDの委任終了に関するプロセスの検討 o WG 2:ccTLDの委任、解約、委任終了の判断に関するレビューメカニ ズムの検討 今回のICANN会合で検討の方向性が定まったため、今後はチャーター案の作成 が行われます(*8)。 (*8)スケジュールの詳細は、下記「Timeline」をご参照ください。 https://schd.ws/hosted_files/icann572016/81/4%20PDP%20presentation%20Boswinkel.pdf ▼JPRSの堀田博文がICANN ccNSO評議委員に再選 2017年3月の次回ICANN会合をもって任期満了となる、各地域を代表するccNSO 評議委員を対象とした改選選挙が実施され、JPRSの堀田博文を含む以下の5名 が再選されました(*9)。 ・アフリカ地域 :Souleymane Oumtanaga氏(コートジボ ワール:.ci) ・アジア太平洋地域 :堀田博文(日本:.jp) ・ヨーロッパ地域 :Nigel Roberts氏(ガーンジー島:.gg、 ジャージー島:.je) ・ラテンアメリカ及びカリブ地域:Alejandra Reynoso氏(グアテマラ:.gt) ・北米地域 :Stephen Deerhake氏(米領サモア:.as) (*9)JPRSの堀田博文がICANN ccNSO評議委員に再選 https://jprs.co.jp/topics/2016/161114.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (2)Whois/RDSに関する話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼次世代Registry Directory Services(RDS)に関する議論 Whoisなど、レジストリ登録情報の検索サービスをRegistration Directory Services(RDS)といいます。ICANNではWGを設置し、gTLDにおける次世代RDS の導入に向けた検討が進められています。また、次世代RDSを実現するプロト コルとしてRDAP(*10)実装のための検討が行われています。 (*10)Registration Data Access Protocolの略称。ドメイン名などの登録情 報にアクセスするためのプロトコルです。URIによりデータが渡され、 JSON(JavaScript Object Notation:JavaScriptのオブジェクト表記 方法に由来する簡便なデータ記述法)の形式で応答が返されます。 今回のICANN会合では、RDAP実装に関する状況の共有と、実装要件の議論が行 われました。以下の意見が出たものの結論には至らず、12月に実施予定のリ モートによる会合で引き続き議論される予定です(*11)。 ・レジストリの負担軽減のため、実装要件を最小限にすること ・問い合わせ者の権限に応じて開示情報を制限する差異化アクセス (Differentiated Access)の実装に法的要請を必要とすること (*11)検討状況の進捗は、下記をご参照ください。 https://community.icann.org/display/gTLDRDS/Next-Generation+gTLD+Registration+Directory+Services+to+Replace+Whois ▼gTLD WhoisのThick Whoisへの移行に関する議論 ドメイン名の登録情報をインターネット上で参照するためのWhoisには、レジ ストリのモデルの違いにより、以下の二つの形式が存在します。 ・Thin Whois :レジストリは登録者の情報を持たず、レジストラが持つ ・Thick Whois:レジストリはレジストラと同様に登録者の情報を持つ ICANN理事会は、すべてのgTLDのWhoisをThinからThickへ移行したいという GNSOの提案を認めており、今回のICANN会合では、ICANNスタッフからThick Whoisへの移行に向けたプロセスやスケジュールの共有が行われました(*12)。 ・パブリックコメントの募集期限 - すべてのgTLDのCL&D Policy(*13)への修正提案:2016年12月12日 - .com/.net/.jobsのThick Whoisへの移行ポリシー(*14) :2016年12月16日 ・Thick Whoisへの移行スケジュール - 新規登録ドメイン名の移行完了:2018年5月 - 既存のドメイン名の移行完了 :2019年2月 (*12)詳細な移行スケジュールについては、下記「Transition Implementation Path - Timeline」をご参照ください。 https://schd.ws/hosted_files/icann572016/b7/Thick%20IRT%20ICANN57%2020161108.pdf (*13)Consistent Labeling and Display Policyの略。 gTLDのWhoisに表示されるラベルとデータの一貫性を確保するためのポ リシーです。 (*14)レジストリ・レジストラモデルが作られた1999年当時は「レジストリ は小さくあるべきである」という考え方があり、.com/.net/.orgに Thin Whoisが導入されました。現在は、Verisignが運用を担っている .com/.net/.jobsのみがThin Whoisを採用しています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (3)その他の話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼新gTLDの次回募集手続検討 2012年の新gTLDプログラムの振り返り作業と共に、次回募集時の手続きを定め るPDPが、2018年第3四半期完了を目指して進行しています(*15)。 (*15)詳細な移行スケジュールについては、下記「Program Reviews & Policy Timeline (Projected)」をご参照ください。 https://schd.ws/hosted_files/icann572016/41/New%20gTLD%20Prog%20Reviews.pdf また、次回の募集形態についても協議が行われており、従来の形式であるラウ ンド制も含めた三つの方向性が検討されています。 ・一定の申請期間を設ける「ラウンド制」 - 従来と同様の形式 - 申請が集中する可能性がある ・先着順で申請を受け付ける「先願制」 - 第三者による申請を常に注視する必要があり、異議申し立てプロセスに も影響する ・「ラウンド制」と「先願制」のハイブリッドアプローチ - 複数年の申請期間を設け、第三者申請のモニタリング及び異議申し立て をしやすくする この他、申請をしやすくするための申請条件変更も検討されています。 ▼ルートサーバーに関する議論 今回のICANN会合では、ルートサーバーに関連するセッションが複数設けられ、 RSSAC(*16)内での課題として、主に以下の内容が議論されました。 ・用語定義 - ルートサーバー関連の用語については、既に定義されているものも含め、 明確な定義付けが必要である ・RSSACとルートサーバー運用者の活動の混同とその防止策 - RSSACとルートサーバー運用者が混同される傾向にあることを踏まえ、 双方の活動について、透明性の向上を要請されている - 透明性を示す対象や、何をどのように示すべきかについて、整理が必要 ・「サーバーの停止」と「サービスの停止」の混同とその防止策 - 「一部のサーバーが停止する=サービスも停止する」と誤解される傾向 にある - 停止していないサーバーが一つでもあればサービスそのものは停止しな いということについて、周知活動が必要 (*16)Root Server System Advisory Committee(ルートサーバーシステム諮 問委員会)の略称。 ICANNの諮問委員会の一つです。ルートサーバーシステムのオペレー ションについて、ICANN理事会に対して助言を行います。RSSACは、 ルートサーバー運用管理者などによって構成されています。 https://www.icann.org/groups/rssac また、「RSSAC Caucus Meeting」と題された公開セッションでは、RSSACのメ ンバー以外から「ルートゾーンやルートサーバーのオペレーションに重要な変 更が行われた場合、その概要と時間をタイムリーに伝えるチャネルが用意され ていると、問題発生時の原因究明に有用である」という意見が述べられ、賛同 を得ていました。 その他、「Root Stability Study Workshop」と題された公開セッションでは CDAR(*17)の暫定報告が行われました。暫定的な結論として、新gTLDの増加 はルートサーバーのセキュリティと安定性には影響しないことが報告されまし た。暫定報告の内容に関しては12月22日までパブリックコメントを募集してお り、その後、最終報告が2017年4月に発行される見込みです。 (*17)Continuous Data-Driven Analysis of Root Server System Stability の略。 ICANNの指示により、新gTLDプログラムの実施がルートサーバーに与え る技術的な影響を調査するために編成されたプロジェクトです。NLnet Labs、SIDN Labs、TNO(the Netherlands Organization for Applied Scientific Research)といったオランダの3組織によって構成されて います。 暫定報告の詳細は下記をご参照ください。 https://schd.ws/hosted_files/icann572016/0a/Root%20stability%20study%20workshop.pdf ▼JPRSの佐藤新太がICANNのCommunity Recognition Programで表彰 Community Recognition Programでは、グローバルなマルチステークホルダー コミュニティから選出された36名がICANNの活動への多大な貢献をたたえられ、 表彰されました。この中で、JPRSの佐藤新太もSSAC(Security and Stability Advisory Committee)のメンバーとしてのこれまでの活動が認められ、表彰を 受けました(*18)。 (*18)JPRSの佐藤新太がICANNのCommunity Recognition Programで表彰 https://jprs.co.jp/topics/2016/161115.html ■次回のICANN会合 第58回ICANN会合は、2017年3月11日から16日にかけて、デンマークのコペン ハーゲンで開催される予定です。 ◇ ◇ ◇ ◎関連URI - ICANN57 | Hyderabad | ICANN Public Meetings https://meetings.icann.org/en/hyderabad57 (第57回ICANN会合公式ページ) - Future Meeting Strategy | ICANN Public Meetings https://meetings.icann.org/en/future-meeting-strategy (ICANN会合の開催形態に関するICANNのページ) - Announcements - ICANN https://www.icann.org/news/announcements (ICANNのアナウンス一覧ページ) - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation https://ccnso.icann.org/workinggroups/ (ccNSOのWG紹介ページ) - Active Projects | Generic Names Supporting Organization https://gnso.icann.org/en/group-activities (GNSOの活動紹介ページ) - Program Status | ICANN New gTLDs https://newgtlds.icann.org/en/program-status (新gTLDプログラムの進行状況を示したICANNのページ) - Announcements | ICANN New gTLDs https://newgtlds.icann.org/en/announcements-and-media/latest (新gTLDプログラムに関するICANNのアナウンス一覧ページ) - CDAR Project Homepage http://www.cdar.nl/ (CDARの紹介ページ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━ ■会議報告:https://jprs.jp/related-info/event/ ■配信先メールアドレスなどの変更:https://jprs.jp/mail/henkou.html ■バックナンバー:https://jprs.jp/mail/backnumber/ ■ご意見・ご要望:from@jprs.jp 当メールマガジンは、Windowsをお使いの方はMSゴシック、Macをお使いの方は Osaka等幅などの「等幅フォント」で最適にご覧いただけます。 当メールマガジンの全文または一部の文章をWebサイト、メーリングリスト、 ニュースグループ、他のメディアなどへ許可なく転載することを禁止します。 また、当メールマガジンには第三者のサイトへのリンクが含まれていますが、 リンク先のサイトの内容などについては、JPRSの責任の範囲外であることに ご注意ください。 その他、ご利用に当たっての注意事項は読者登録規約にてご確認ください。 https://jprs.jp/mail/kiyaku.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS) https://jprs.jp/ Copyright (C), 2016 Japan Registry Services Co., Ltd.