JPドメイン名のサービス案内、ドメイン名・DNSに関連する情報提供サイト


メールマガジン「FROM JPRS」

バックナンバー:vol.172

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2017/11/29━
                    ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.172 ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
___________________________________

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
                    第60回ICANN会合(アブダビ)報告
                ~ccTLDとgTLD、Whois関連の話題を中心に~
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2017年10月28日から11月3日にかけて、第60回ICANN会合がアラブ首長国連邦の
アブダビで開催されました。

年3回開催されるICANN会合のうち3回目となる本会合は、ICANNの年次総会
(Annual General Meeting)の形態で実施され、参加登録者数は2,165名とな
りました。AP(Asia Pacific)地域での開催であったことに加え、APRALO
(Asia Pacific Regional At-Large Organization)の発足10周年に合わせた
活動紹介の場である「A Decade of Diversity」や、ALS(At-Large Structure)
の年次総会開催など、At-Large(*1)関連のセッションが充実していたことも
あり、中国、韓国、台湾など、AP地域からの参加者が多く見られました。

また、本会合をもってICANN理事長を退任するSteve Crocker氏の送別セッショ
ンとして「Steve Crocker Tribute & Toast #」が設けられ、氏と共にイン
ターネットの黎明期を支えたVint Cerf氏や前ICANN President and CEOである
Fadi Chehade氏、ITU(*2)General SecretaryであるHoulin Zhao氏など、各
方面の関係者が送別のコメントを寄せました。なお、セッションの動画は
ICANNのYouTube公式アカウントでも公開されています。
https://www.youtube.com/user/ICANNnews/

(*1)個人インターネットユーザーで構成されたICANNのコミュニティです。
      https://atlarge.icann.org/about/index#about at-large

(*2)International Telecommunication Union(国際電気通信連合)の略称。
      世界の電気通信に関する国際標準の策定を目的として設立された各国政
      府間の国際組織。国際連合の専門機関です。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。

(1)ccTLD関連の話題
      - 国名・地域名とその他の地理的名称のTLDに関する議論
      - ccTLDの委任、解約、委任終了に関するポリシー検討
      - TLD-OPSの活動状況

(2)gTLD関連の話題
      - gTLD追加に関する今後の手続きの検討
      - .amazonに関する公開セッションとICANN理事会決議

(3)その他の話題
      - Whoisによる情報公開に関する議論

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
(1)ccTLD関連の話題
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼国名・地域名とその他の地理的名称のTLDに関する議論

国名・地域名(2文字及び3文字コード)と地理的名称をTLDとして利用するこ
とに関するフレームワークについては、ccNSOとGNSOを中心としたSupporting
Organization(SO)/Advisory Committee(AC)横断型のワーキンググループ
(WG)で検討が行われてきたものの結論には至らず、活動を終了しています。

前回のICANN会合での提案を踏まえ、GNSOの新gTLD追加に関する今後の手続き
について検討するWG(New gTLD Subsequent Procedure Policy Development
Process Working Group:SubPro WG)内に本件に関するワークトラック(*3)
が設置され、ccNSOも参加する形で議論を継続してきました。前回の第59回
ICANN会合(ヨハネスブルク)までの検討状況については、以下をご参照くだ
さい。
https://jprs.jp/related-info/event/2017/0726ICANN.html

今回のccNSO会合においては、地理的名称のTLDのうち、3文字コードと国名に
関する考え方が議論されました。議論の中で、APTLD、CENTR、LACTLDといった
各地域のccTLDレジストリの連合組織における見解が共有され、ccNSO内では以
下の共通認識が得られました。

  ・2文字コードはISO 3166 alpha-2への掲載有無にかかわらず、すべて保護
  ・3文字コードはISO 3166 alpha-3に掲載されている文字列のみ保護対象
  ・3文字コードと国名に関しては明確な合意がなされない限り、2012年に公
    開されたApplicant Guide Book(AGB)で定められた内容を維持すべき
  ・現状で致命的な問題が発生していないのならば、変える必要はない(If
    it's not broken don't try to fix it!)

詳細は、以下の資料をご参照ください。
https://schd.ws/hosted_files/icann60abudhabi2017/2b/7%20closure%20CWG-UCTN%20-%20Lange%20Wenban-Smith.pdf

(*3)「Work Track 5(WT5)」として新設され、本会合で初めて対面での
      セッションが開催されました。共同議長はGNSO、GAC、ALAC、ccNSOより
      それぞれ選出されています。
      https://schd.ws/hosted_files/icann60abudhabi2017/2f/SubProWT5_1Nov2017.pdf

▼ccTLDの委任、解約、委任終了に関するポリシー検討

ccTLDの委任に関するプロセスとそのレビューの実施について、第三者に対し
明確に示すべく、ccNSOでPolicy Development Process(PDP)が進行していま
す。前回の第59回ICANN会合(ヨハネスブルク)までの検討状況については、
以下をご参照ください。
https://jprs.jp/related-info/event/2017/0726ICANN.html

本会合では、ISOの「Online Browsing Platform(*4)」における2文字コード
の変更が、当該文字コードの委任終了(retirement)プロセスの起点となるこ
とが合意に至りました。なお、本件はccTLDの委任に際して重要視される関係
者であるGAC(*5)に対しても参加を呼び掛けています。

また、ccNSOメンバーに対してISOの組織概要やISO 3166(*6)の種類や更新の
手続きなどに関する詳細な情報が共有されました。
https://schd.ws/hosted_files/icann60abudhabi2017/83/6%20ISO%203166%20-%20Akkerhuis.pdf

(*4)https://www.iso.org/obp/ui/#searchにおいて、
      「Country codes」→「More options [+]」→「Alpha 2」とチェックを
      入れて検索することで、その時点のISO 3166 alpha-2の掲載一覧が確認
      できます。

(*5)Governmental Advisory Committeeの略称。ICANNの諮問機関の一つで、
      各国政府などからの代表メンバーによって構成されます。GACは政府の
      立場からICANN理事会に対して助言を行っています。

(*6)国や地域に割り当てられるccTLDでは、ISO 3166-1のalpha-2を採用して
      います。なお、ISO 3166-1では、2文字のラテン文字を使用した
      「alpha-2」、3文字のラテン文字を使用した「alpha-3」が定められて
      います。
      https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0144

▼TLD-OPSの活動状況

TLD-OPS(*7)の活動状況や次回のICANN会合に向けての目標などについて、
TLD-OPS Standing Committee(*8)より報告があり、TLD-OPSメンバー間の連
絡手段であるメーリングリスト(TLD-OPS mailing list)について、以下の内
容などが共有されました。

  ・192のccTLDレジストリから345名以上が加入しており、前回のICANN会合以
    降に.na(ナミビア)、.ls(レソト)、.gl(グリーンランド)の三つの
    TLDが加わった
  ・ヨーロッパ及び北米のccTLDは加入率100%に達した
  ・アフリカとラテンアメリカ地域からの加入率向上(現状50%未満)が課題
  ・前回のICANN会合以降に投稿された注意喚起(Security Alerts)は0件
  ・2週間に1度、TLD-OPSメンバー宛にメンバーの連絡先一覧を更新して共有
  ・連絡先情報に予備の連絡先とメールアドレス(自TLD以外)の情報を追加
    https://ccnso.icann.org/en/resources/tld-ops-secure-communication.htm#subscription-template

また、「DDoS攻撃の影響を緩和するフレームワーク構築のためにTLD-OPSメン
バー間でどのように連携するか」をテーマにクローズドなワークショップが開
催されました。
https://schedule.icann.org/event/CbJl/ccnso-tld-ops-workshop-c

次回のICANN会合への目標として、本会合で実施したワークショップの結果の
まとめ、ICANN会合及び地域別でのワークショップ開催計画の文書化、加入
ccTLD数の増加が挙げられました。本会合での共有事項に関する詳細は、以下
をご参照ください。
https://schd.ws/hosted_files/icann60abudhabi2017/6a/2017.10.24%20TLD-OPS%20ICANN60%20SC%20Mtg%202017.10.29.pdf

(*7)Top Level Domain operatorsの略称。ccTLDレジストリ間での技術イン
      シデント情報の共有を目的としたコミュニティで、ccNSOの会員に限ら
      ず、すべてのccTLDレジストリからの参加が可能です。
      https://ccnso.icann.org/resources/tld-ops-secure-communication.htm

(*8)各地域のccTLDからの参加者とSSAC、IANA、ICANN securityチームから
      のリエゾンで構成されています。TLD-OPSメーリングリストの円滑な運
      営と、TLD-OPSコミュニティの継続的な改善と発展を促すための必要か
      つ適切な施策の実施を担っています。
      https://ccnso.icann.org/workinggroups/tld-ops-standing.htm

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
(2)gTLD関連の話題
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼gTLD追加に関する今後の手続きの検討

SubPro WGでは2012年の新gTLD募集(新gTLDプログラム)の振り返りと共に、
2018年第3四半期までの次回募集に関するポリシー勧告の実施を目指して活動
を継続しています。詳細なタイムラインは以下をご参照ください。
https://newgtlds.icann.org/en/reviews#timeline

SubPro WG全体では、2018年第1四半期にコメントの募集開始を予定しているポ
リシー勧告案の取りまとめに向けた各種検討が直近の目標となっており、本会
合におけるWGのセッションにおいては、前述のWT5(*3)が新たに設けられた
こと以外に、特筆すべき新たな論点や課題は挙がりませんでした。

▼.amazonに関する公開セッションとICANN理事会決議

2012年の新gTLDプログラムの際にAmazon.comが申請した.amazonについて、GAC
は「amazon」は南米の地理的名称であるという勧告をICANN理事会にしており、
委任に向けたプロセスが停止しています。

プロセス再開を求めるAmazon.comは、ICANN理事会の決定や行為に対する異議
申し立てプロセスであるIRP(Independent Review Panel)に本件を付託した
結果、主張が認められ、「委任に向けたプロセスを再開すべし」との判断を得
ています。

このような中、本会合においてAmazon.comの法務担当者とGACとの公開対話
セッションが設けられました。

セッションにおいて、GACメンバーの一部から「amazon」という言葉は
Amazon.comの所有物ではないと断言する声が上がった一方で、Amazon.comは
「amazon」という社名の正当性にかかわる重要事項として本件の対応を進めて
いく強い意向を示していました(*9)。

本会合で行われたICANN理事会において、以下の内容が決議されました。

  ・ICANN理事会は、Amazon.comの申請を進めるべきではない理由の詳細情報
    の有無をGACに確認する
  ・詳細情報がある場合、第61回ICANN会合(2018年3月開催予定)の終了まで
    に、GACからICANN理事会に当該情報を提供する

(*9)Amazon.comは本件に関する専用のWebサイトを公開しています。
      https://amazontld.moi/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
(3)その他の話題
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼Whoisによる情報公開に関する議論

オランダの地理的名称gTLDである.amsterdamと.frlは、オランダの個人情報保
護法下では違法となる可能性があるという理由で、ICANNとの間のレジストリ
契約に違反することを認識した上で、Whoisレコードの公開をしない措置を始
めています。

本会合では、このような状況を背景に、2018年5月から適用開始となるGDPR
(General Data ProtectionRegulation:EU一般データ保護規則)がWhoisに
よって公開される情報やドメイン名登録情報に与える影響について議論されま
した。

議論の結果を踏まえ、ICANNは2017年11月2日、レジストリ及びレジストラは、
Whoisにおける情報公開義務について、一定の条件を満たせば当面の期間は契
約不履行の処罰を免除される旨の声明を発表しています。
https://www.icann.org/news/announcement-3-2017-11-02-en

また、本会合でのICANN理事会では、GDPRへの対応も念頭においたVerisignか
らの要請を受け、Thin Whoisを採用している.com、.net、.jobsについて(*10)、
レジストリであるVerisignの申請を受け入れる形でThick Whoisへの移行期限
を半年間(180日間)延長しました。

(*10)ICANN理事会は、すべてのgTLDのWhoisをThinからThickへ移行するとい
       うGNSOの提案を認めており、Thin Whoisを採用してきた.com、.net、
       .jobsについても、Thick Whoisへの移行が進められてきていました。
       ThickレジストリモデルとThinレジストリモデルの詳細と違いについて
       は、以下の項目をご参照ください。
       Thickレジストリモデル
       https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0216
       Thinレジストリモデル
       https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0217

■次回のICANN会合

第61回ICANN会合は、2018年3月10日から15日にかけて、アメリカ合衆国プエル
トリコ自治連邦区のサンフアンで開催される予定です。

          ◇                     ◇                     ◇

◎関連URI

  - ICANN60 | Abu Dhabi | ICANN Public Meetings
    https://meetings.icann.org/en/abudhabi60
    (第60回ICANN会合公式ページ)

  - Future Meeting Strategy | ICANN Public Meetings
    https://meetings.icann.org/en/future-meeting-strategy
    (ICANN会合の開催形態に関するICANNのページ)

  - ICANN 60 - Abu Dhabi Meeting - October 2017 - ALAC - Confluence
    https://community.icann.org/display/atlarge/ICANN+60+-+Abu+Dhabi+Meeting+-+October+2017
    (第60回ICANN会合におけるAt-Large関連セッション)

  - Announcements - ICANN
    https://www.icann.org/news/announcements
    (ICANNのアナウンス一覧ページ)

  - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation
    https://ccnso.icann.org/workinggroups/
    (ccNSOのWG紹介ページ)

  - Cross-Community Working Group on Use of Country/Territory Names as
    TLDs | Country Code Names Supporting Organisation
    https://ccnso.icann.org/workinggroups/ccwg-unct.htm
    (国名・地域名とその他の地理的名称に関する議論を行うWGのページ)

  - Policy Development Process (PDP) Retirement Working Group |
    Country Code Names Supporting Organisation
    https://ccnso.icann.org/en/workinggroups/pdp-retirement.htm
    (ccTLDの委任、解約、委任終了に関するポリシー検討を行うWGのページ)

  - TLD-OPS: ccTLD Security and Stability Together | Country Code
    Names Supporting Organisation
    https://ccnso.icann.org/resources/tld-ops-secure-communication.htm
    (ccTLDレジストリ間での技術インシデント情報の共有を目的としたコ
      ミュニティであるTLD-OPSのページ)

  - Active Projects | Generic Names Supporting Organization
    https://gnso.icann.org/en/group-activities
    (GNSOの活動紹介ページ)

  - New gTLD Subsequent Procedures PDP Home - New gTLD Subsequent
    Procedures PDP - Confluence
    https://community.icann.org/display/NGSPP
    (新gTLD追加に関する今後の手続きについて検討するWGのページ)

  - Program Status | ICANN New gTLDs
    https://newgtlds.icann.org/en/program-status
    (新gTLDプログラムの進行状況を示したICANNのページ)

  - Announcements | ICANN New gTLDs
    https://newgtlds.icann.org/en/announcements-and-media/latest
    (新gTLDプログラムに関するICANNのアナウンス一覧ページ)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━
■会議報告:https://jprs.jp/related-info/event/
■配信先メールアドレスなどの変更:https://jprs.jp/mail/henkou.html
■バックナンバー:https://jprs.jp/mail/backnumber/
■ご意見・ご要望:from@jprs.jp

当メールマガジンは、Windowsをお使いの方はMSゴシック、macOSをお使いの方
はOsaka等幅などの「等幅フォント」で最適にご覧いただけます。

当メールマガジンの全文または一部の文章をWebサイト、メーリングリスト、
ニュースグループ、他のメディアなどへ許可なく転載することを禁止します。
また、当メールマガジンには第三者のサイトへのリンクが含まれていますが、
リンク先のサイトの内容などについては、JPRSの責任の範囲外であることに
ご注意ください。
その他、ご利用に当たっての注意事項は読者登録規約にてご確認ください。
https://jprs.jp/mail/kiyaku.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS)
https://jprs.jp/
Copyright (C), 2017 Japan Registry Services Co., Ltd.