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メールマガジン「FROM JPRS」

バックナンバー:vol.184

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2019/07/19━
                    ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.184 ◆
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                  第65回ICANN会合(マラケシュ)報告
        ~ccTLD関連、gTLDの次回募集手続き関連の話題を中心に~
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2019年6月24日から27日にかけて、第65回ICANN会合がモロッコのマラケシュで
開催されました。

マラケシュでのICANN会合の開催は2016年3月以来で、通算で3度目となりまし
た。ICANNの発表によると、現地参加者は1,165名で、そのうち302名がアフリ
カ諸国や中東地域からの参加であったとのことです。

年3回開催されるICANN会合のうち2回目に当たる本会合は、「ポリシーフォー
ラム」という形式で開催されました[*1]。この形式では、オープニングセレモ
ニーやパブリックフォーラムは開催されず、ICANNの構成組織である各
Supporting Organization(SO)/Advisory Committee(AC)でのポリシー検
討が中心となります。

[*1] ICANN会合は、規模や内容の異なる三つの形式(MEETING A~C)をロー
     テーションして開催されます。本会合「ポリシーフォーラム」は、
     MEETING Bに該当する4日間の形式です。
     https://meetings.icann.org/en/future-meeting-strategy

本会合では、各SO/ACの垣根を越えて共有、議論すべきHigh Interest Topics
として、以下四つの話題が取り上げられました。

  ・DoH(DNS over HTTPS)とDoT(DNS over TLS)におけるポリシー面の課題
  ・ICANNのマルチステークホルダーモデルの発展
  ・ユニバーサルアクセプタンス[*2]に関するポリシー検討
  ・簡易ポリシー策定プロセス(Expedited Policy Development Process:
    EPDP)のPhase 1における勧告が他ICANNポリシーやプロセスに与える影響

また、GACやALACなど、ICANNの諮問委員会における会議体で「DNS Abuse」に
関する意見交換が活発に行われました。DNS Abuseは、その定義についてコ
ミュニティの統一的な見解は得られていませんが、次回のICANN会合でHigh 
Interest Topicsの一つとして取り上げられる可能性があります。

[*2] ユニバーサルアクセプタンス(Universal Acceptance: UA)
     すべての有効なドメイン名が、インターネットにつながるアプリケー
     ション、デバイス、システムによって矛盾なく受け入れられ、検証、保
     存、処理、表示されるべきであるという考え方のことです。
     ユニバーサルアクセプタンスの実現により、世界中の利用者が例外なく、
     それぞれの言語でインターネットを問題なく使えるようになることが期
     待されます。(JPRS用語辞典より)
     https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0182

今回のFROM JPRSでは、他に話題となった以下の項目に沿って会合の模様を報
告します。

(1)ccTLD関連の話題
      - ccTLDの委任終了(Retirement)に関するプロセス検討
      - TLD-OPSの活動状況

(2)gTLD関連の話題
      - gTLD追加に関する今後の手続きの検討
      - 国名・地域名とその他の地理的名称のTLDに関する議論

(3)その他の話題
      - ルートDNSサーバーの運用に関する話題
      - 遠隔参加ツールの変更について

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(1)ccTLD関連の話題
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▼ccTLDの委任終了(Retirement)に関するプロセス検討

国や地域の名称変更、解体、独立、分割などが生じた場合に、それらに割り当
てられたccTLDの委任を終了する際のプロセスとそのレビューの実施について、
ccNSO内でポリシーの検討が進められています。

過去のICANN会合における決定事項として、委任終了プロセスの起点を「ISO 
3166 alpha-2における掲載内容の削除(Removal)」とし、終点を「DNSルート
ゾーンファイルからの削除」とすることや、起点から終点までの期間を原則5
年間(ccTLDレジストリの責任組織とPTI[*3]との協議で最大10年間まで延長可
能)とすることなどが定義されています。
https://jprs.jp/related-info/event/2019/0408ICANN.html

本会合では、「例外的に予約されている国コード[*4]」について、予約されて
いる国コードは本プロセスの基準で委任終了するのは適切でないとして、本プ
ロセスの対象外とすることが決まりました。

今後は、委任終了プロセス中に監督すべきポイントや、委任終了プロセスの進
行中に当該ccTLDレジストリの責任組織の交代が発生した場合の対応、その他
極端なケースも扱えるポリシーとなっているかなどの点について、引き続き検
討が行われます。
https://static.ptbl.co/static/attachments/214660/1561466189.pdf

なお、国際化ドメイン名(IDN)[*5]のccTLDについて、現在はccNSOメンバー
の要件を満たしていませんが、ICANNの定款の改訂[*6]と並行して委任終了プ
ロセスの検討が進められています。
https://static.ptbl.co/static/attachments/214662/1561466284.pdf

[*3] ICANNの関連組織で、Public Technical Identifiersの略称です。ドメイ
     ン名、IPアドレス、プロトコルパラメーターなどのインターネット資源
     を管理するIANA(Internet Assigned Numbers Authority)の役割を担っ
     ています。
     https://pti.icann.org/

[*4] 国際機関などにより保護されている2文字コードで、AC、CP、DG、EA、EU、
     EZ、FZ、IC、SU、TA、UK、UNの12件が該当します。

[*5] 英数字(ASCII)以外の文字を含むドメイン名、また、そのための技術規
     格です。日本語JPドメイン名は、国際化ドメイン名の一つです。(JPRS
     用語辞典より)
     https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0029

[*6] 現在のICANNの定款(ICANN Bylaws)では、IDNのccTLDはccNSOメンバー
     の資格を満たしていません(第10条 4項)。
     https://www.icann.org/resources/pages/governance/bylaws-en/#article10

▼TLD-OPSの活動状況

ccNSO会合の中で、TLD-OPS[*7]の活動状況に関してTLD-OPS Standing 
Committee[*8]より報告がありました。

TLD-OPSメンバー間の主要な連絡手段であるメーリングリストは、202のccTLD
レジストリから380名以上が加入しています。

TLD-OPSでは、緊急時の対応に関する知見の共有や、その内容を体系化したマ
ニュアル(playbook)の策定に取り組んでおり、過去にはDDoS攻撃発生時の影
響を緩和するための対応フローをまとめた「DDoS mitigation playbook」を作
成しています。現在は、レジストリとしてのDR(Disaster Recovery)/BCP
(Business Continuity Plan)対応シナリオをまとめたplaybookの作成に注力
しています。

次回のICANN会合では、TLD-OPSメンバー間でDR/BCP playbookのシナリオを演
習するワークショップが予定されています。「責任者の不在時」や「テロ発生
時」「電力網が寸断された時」など、計五つのシナリオをロールプレイし、
ワークショップから得られる知見をもとにplaybookの改善と更新が行われます。

本会合における議論の詳細は、以下の資料をご参照ください。
https://static.ptbl.co/static/attachments/214643/1561451353.pdf

[*7] Top Level Domain operatorsの略称。ccTLDレジストリ間で技術インシデ
     ント情報の共有や事前の検知、影響の軽減を目指して協働するコミュニ
     ティで、主な情報共有ツールとしてメーリングリストを活用しています。
     ccNSOの会員に限らず、IDNを含むすべてのccTLDレジストリから参加でき
     ます。
     https://ccnso.icann.org/resources/tld-ops-secure-communication.htm

[*8] ccTLDからの参加者とSSAC、IANA、ICANN securityチームからのリエゾン
     で構成されます。TLD-OPSメーリングリストの円滑な運営と、TLD-OPSコ
     ミュニティの継続的な改善と発展を促すための必要かつ適切な施策の実
     施を担っています。
     https://ccnso.icann.org/workinggroups/tld-ops-standing.htm

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(2)gTLD関連の話題
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▼gTLD追加に関する今後の手続きの検討

GNSOに設置された、gTLD追加に関する今後の手続きを検討するワーキンググ
ループ(New gTLD Subsequent Procedure Policy Development Process 
Working Group:SubPro WG)は、2019年中にGNSO評議委員会に最終報告書を提
出するというタイムラインを示し、活動を進めています。

このタイムラインを受け、ICANNのGlobal Domain Division(GDD)では、次回
のgTLD募集を進める上での前提条件(案)を記した文書を公開しました。

「Assumption for use in Preliminary Planning Work」と題した文書で、
「次回募集へのタイムライン」「予想される申請件数とその処理に要する時間
の見積もり」「ポリシーの実装」「必要となる人材やその採用」などといった
項目に関して、ICANNとして以下のような意向を示しています。
https://community.icann.org/download/attachments/109482992/Assumptions%20for%20use%20in%20Preliminary%20Planning%20Work.pdf

  ・ポリシーの実装は、申請受け付け開始前にすべて完了されている必要があ
    り、明確で詳細かつ包括的に文書化されていなければならない
  ・次回募集は1~3カ月の受付期間で実施し、その後も毎年1~3カ月の期間を
    設ける形で継続的に申請を受け付ける
  ・継続的な募集のために人、プロセス、システムなどのインフラを整備する
  ・申請内容の審査や異議申し立てへの対応などは、外部の専門的な知見を持
    つ機関に委託する
  ・申請者が納める申請料で、募集に関わるすべてのコストを賄うモデルを継
    続する

本会合では、SubPro WGとGDDが直接議論する機会が設けられました。そこで得
られたフィードバックも加味し、前提条件(案)の修正が行われる予定です。

▼国名・地域名とその他の地理的名称のTLDに関する議論

国名・地域名(2文字及び3文字コード)及び地理的名称をTLDとして利用する
ことに関するフレームワークについては、SubPro WG内にワークトラック
(Work Track 5:WT5)が設置され、これまでも議論が行われてきました。
https://jprs.jp/related-info/event/2018/0718ICANN.html

本会合では、地理的名称に関するルールについて、2012年に行われた前回募集
の際に準拠した申請者ガイドブック(Applicant Guide Book:AGB)の内容を
踏襲することが合意に至りました。これにより、2文字コードや国名・地域名
の3文字コードについては、申請を受け付けないという方向で、報告書の取り
まとめが進められていく予定です。
https://static.ptbl.co/static/attachments/214661/1561466223.pdf

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(3)その他の話題
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▼ルートDNSサーバーの運用に関する話題

RSSAC[*9]では、2016年10月にIANAの監督権限がグローバルなマルチステーク
ホルダーコミュニティへと移管されて以降[*10]、ルートDNSサーバーシステム
のガバナンスモデルに関して、新たな枠組みを検討してきました。

ICANNスタッフ及び理事会は、RSSACが2018年6月に公開した提案書である
「RSSAC037 A Proposed Governance Model for the DNS Root Server System」
を基に、ルートDNSサーバーの新たなガバナンスモデルをコミュニティで検討
するための方針案として「A New Cooperation and Governance Model for the 
Root Server System」を公開しました。
https://www.icann.org/en/system/files/files/rss-governance-model-concept-paper-23apr19-en.pdf

この方針案を含む四つの文書を対象に、2019年5月23日から同年8月9日までパ
ブリックコメントを募集しています。パブリックコメントの終了後は、8月30
日までに報告書がまとめられる予定です。
https://www.icann.org/public-comments/rss-governance-2019-05-23-en

RSSACでは、コミュニティでの議論に先立ち、重要事項の検討を進めていく予
定です。その一環として、ルートDNSサーバー運用組織が相互に独立している
ことの重要性について、2019年5月13日に文書を公開しています。
https://www.icann.org/en/system/files/files/rssac-042-17may19-en.pdf

また、RSSAC037を実装する上で必要となる、ルートDNSサーバー運用者の技術
的な要件定義及びその測定方法に関する検討が進められています。

[*9] Root Server System Advisory Committee(ルートサーバーシステム諮問
     委員会)の略称。ICANNの諮問委員会の一つで、各ルートDNSサーバー
     (ルートサーバー)の運用管理者及びその運用に関わる組織によって構
     成されています。ICANN理事会に対して、ルートDNSサーバーシステムの
     オペレーションに関する助言を行う役割を担います。

[*10] インターネット資源の管理機能(IANA)の監督権限は、2016年10月1日
      に米国商務省電気通信情報局(NTIA)からグローバルなマルチステーク
      ホルダーコミュニティへと移管されました。経緯などの詳細は、以下
      「2016年 ドメイン名重要ニュース」をご参照ください。
      https://jprs.jp/related-info/important/2016/161220.html

▼遠隔参加ツールの変更について

ICANNでは、以前から遠隔参加用のツールとして「Adobe Connect」を提供して
いましたが、本会合より新たな遠隔参加用ツールである「Zoom」の本運用を開
始しました。

従来は人手により行われていた会議中の音声の文字起こしが、Zoomの提供する
文字起こし機能によって自動化され、会議録のスピーディーな公開が可能とな
りました。
https://www.icann.org/news/blog/automated-transcripts-from-zoom-at-icann65

■次回のICANN会合

第66回ICANN会合は、2019年11月2日から7日にかけてカナダのモントリオール
で開催される予定です。

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◎関連URI

  - ICANN65 | Marrakech | ICANN Public Meetings
    https://meetings.icann.org/en/marrakech65
    (第65回ICANN会合公式ページ)

  - Announcements - ICANN
    https://www.icann.org/news/announcements
    (ICANNのアナウンス一覧ページ)

  - Data Protection/Privacy Issues - ICANN
    https://www.icann.org/dataprotectionprivacy
    (ICANNのGDPRに関するページ)

  - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation
    https://ccnso.icann.org/workinggroups/
    (ccNSOのWG紹介ページ)

  - TLD-OPS: ccTLD Security and Stability Together | Country Code
    Names Supporting Organisation
    https://ccnso.icann.org/resources/tld-ops-secure-communication.htm
    (ccTLDレジストリ間での技術インシデント情報の共有を目的としたコ
      ミュニティであるTLD-OPSのページ)

  - Active Projects | Generic Names Supporting Organization
    https://gnso.icann.org/en/group-activities
    (GNSOの活動紹介ページ)

  - New gTLD Subsequent Procedures PDP Home - New gTLD Subsequent
    Procedures PDP - Confluence
    https://community.icann.org/display/NGSPP
    (gTLD追加に関する今後の手続きについて検討するWGのページ)

  - Program Status | ICANN New gTLDs
    https://newgtlds.icann.org/en/program-status
    (gTLD募集の進行状況を示したICANNのページ)

  - Announcements | ICANN New gTLDs
    https://newgtlds.icann.org/en/announcements-and-media/latest
    (gTLD募集に関するICANNのアナウンス一覧ページ)

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