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ドメイン名関連会議報告

2004年

第60回IETF Meeting報告

2004/08/23
第60回IETF Meetingが2004年8月1日から6日にかけて、米国サンディエゴで開催されました。多くのテーマが議論されるIETFの中から、ここではDNSやENUMに関する話題を中心にお届けします。

IEPG(Internet Engineering and Planning Group) Meetingで発表を行うJPRS 米谷嘉朗
IEPG(Internet Engineering and Planning Group) Meetingで発表を行うJPRS 米谷嘉朗

IEPG(Internet Engineering and Planning Group) Meeting

IEPGは、インターネットサービスオペレータで構成される、インターネット全体に関する運用環境や運用技術に関する技術的調整を円滑に進めるためのグループです。主に地域インターネットレジストリRIR)オペレータやTLDオペレータ等が報告・議論を行っています。

今回のRIRからの報告で特筆すべきことは、ヨーロッパ地域におけるIPv6の割り振りが、この1、2年で大きく増加していることです。IPv6への取り組みは日本が先行する形で進めてきましたが、このヨーロッパにおける動きや、米国の国策としての取り組みなど、全世界的な動きになってきたと言えます。

JPRSからは、今年の2月から実施している日本語JPナビに関して、導入前の技術的な検証内容と、導入後の日本語JPドメイン名の活用状況について報告を行いました。事前検証などを十分に行ったJPRSの姿勢に対する反応は大変好意的で、IEPG世話人からはこのようなプロセスと成功事例に関する報告を行ったことに対して感謝の意が述べられました。

{link|発表資料:「Experience with 8 bit label in JP Zone」(PDF)|}

DNSEXT(DNS Extensions) WG

DNSEXT WGは、DNSの各機能の拡張に関する議論を行うためのWGです。ここ1年、DNSSECのプロトコル仕様の改定を最優先の課題として、集中的に活動を進めています。

改定されたDNSSECは「DNSSECbis」と呼ばれ、鍵交換にかかる運用コストが大きいという元の仕様の問題点を解決するものです。現在はRFC化に向けて最終的なレビューが行われています。

今回の会議では、DNSSECで用いる公開鍵暗号の鍵管理やセキュリティ的な課題など、普及のための障壁について議論され、現在出されている提案についての検討を継続していくこととなりました。

DNSSEC Deployment Working Group

DNSSEC Deployment Working Groupは、IETFにおけるDNSSECの標準化作業の進展を受け、DNSSECの普及を目指して有志によって組織されました。2004年5月にオランダと米国でDNSSEC普及のためのロードマップ作成を目的としたワークショップ(*1)を開催し、その後、電話会議やメーリングリストにより議論を行っています。


このワーキンググループは、米国国土安全保障省(DHS)、米国商務省標準技術局(NIST)およびICANNの支援を受けています。

今回は、DNSSECの普及のために必要な作業項目が議論され、それぞれを推進していく担当者が決まりました。JPRSもccTLDレジストリとENUMの分野の検討推進役を担うことになりました。

今後、それぞれの担当者を中心に精力的な活動が進められていく予定ですが、活動の内容については、ワーキンググループのWebに随時掲載されていくことになっています。

MARID(MTA Authorization Records in DNS) WG

spamメールの問題はインターネット全体で大きな問題となっており、その解決に向けた動きはIETFにおいても急ピッチで進められています。

MARID WGでは、既存のインターネットの仕組みの中で速やかに導入することができ、spam対策に効果をあげることができる方法について議論されています。

spamメールは多くの場合、差出人のアドレスを偽装して送られてくるため、メールを送信するサーバの情報をDNSに登録して、受信側が正しいサーバから送られたメールであるかどうかを確認する、という方法を基本にいくつかの提案が出されています。

今回の会議では、これらの提案を一本化する議論が行われました。この中で、提案者の一つである米Microsoft社から、議論されている技術の一部について知的所有権(IPR)が主張されました。WGとしてはIPRに対する方針の提示を求めることとし、標準化への障壁とならないことが確認できればプロセスを進めていくことになりました。

今回の会議では、これらの提案を一本化する議論が行われました。特に問題点が見つからなければ、8月中には仕様案が固まる予定になっています。

DNSOP(Domain Name System Operations) WG

DNSOP WGは、DNSを運用するにあたっての問題点や運用に関する手法を議論し、DNS運用に関する標準的手法を確立するためのWGです。

JPRSからはWIDEプロジェクトの研究者とともに、DNSサーバにおけるIPv6 AAAAの取り扱いの誤りが、既存のIPv4ネットワークの利用におよぼす不具合の詳細について調査した結果をまとめたインターネットドラフトを提出しています。このドラフトは現在IESGによる査読中であり、査読完了後にRFCとなる予定です。

また、DNSのプロトコルでは指定可能なDNSサーバの数に制限がありますが、一つのDNSサーバホスト名に複数のIPアドレスを付与することにより、DNS サーバ指定の効率を上げる手法についての発表を行いました。この提案については発表の際に参加者からいただいたコメントも参考にしながら、今後さらに考察を深めていく予定です。

ENUM(Telephone Number Mapping) WG

ENUM WGは、ENUM技術の標準を決め、運用のための技術資料を作成し、ENUM運用に関する情報交換を行うためのWGです。

現在は、ENUMの普及に向けて実装上の問題点の解決を進めており、JPRSもETJPでの経験をもとに、大きな役割を果たしています。

また、今回の会議では、ENUMが使われる領域に関する議論がBoFとして行われました。ENUMの利用の形としてイメージされるのは、ユーザの電話番号にサービスを関連付けるもので、「ユーザENUM」と呼ばれます。しかし、ENUMに関する議論の中で、ENUMにはユーザENUMとは異なる応用の形があることが認識されつつあります。「キャリアENUM」や「企業ENUM」などと呼ばれていますが、IP電話を実現するためのインフラとしてENUMを用いるものです。

今回のBoFは、このキャリアENUMに関する認識を広げ、今後の議論の共通の土台を作るという意味で非常に有意義なものとなりました。

Plenary(全体会議)

Plenaryではまず、今回の参加人数がIETF チェアから報告されました。それによると今回のIETF Meetingには40ヶ国から1,511人が参加しており、ここ数年にわたって続いていた、米国開催における参加者減少傾向に歯止めがかかった形となりました。

続いてRFC Editor、IANA、IESGの各担当者からの状況報告が行われ、ここ数年にわたり問題点として指摘されてきた、RFCの発行や共通資源の割り当て等に要する期間の長期化について、各方面における活動・努力によりかなりの改善がみられた旨の報告がありました。

これらのことから、IETFがインターネットの技術的な標準を検討する場として機能し続けるために、どちらもよい方向に向かっていると言えます。

関連URI



本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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