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ドメイン名関連会議報告

2005年

AP* Retreat会合報告

~インターネットガバナンスと歴史編纂が主要議題に~

2005/03/01


2005年2月20日にAPRICOT 2005に合わせる形でAP*(APstar) Retreat会合が京都で開催されました。

AP* Retreatは、アジア太平洋地域のインターネット団体の代表や、各国・地域で重要な役割を担っている組織から参加者が集い、年に1~2回開催されています。活動状況の報告を通じて相互の情報を共有し、さらにインターネットに関連する現在進行形の課題に対して、アジア太平洋地域のコミュニティ全体としてどう取り組むべきかの議論が行われます。

今回の会合では、JPRSの堀田博文が議長としてコーディネーションを行い、インターネットの歴史編纂やインターネットガバナンスについての議論を行いました。それぞれのテーマについて、議論の概要をご報告します。

アジア太平洋地域のインターネット関連組織からの活動報告

午前の部前半では、アジア太平洋地域のインターネット関連各組織から、この半年の活動と今後の予定について報告が行われました。今回のAP* Retreatで活動報告を行ったのは、次の10団体です。

ABS : Asia Broadband Summit
APAN : Asia Pacific Advanced Network Consortium
APCERT : Asia Pacific Computer Emergency Response Team
APNIC : Asia Pacific Network Information Centre
APEET : Asia Pacific ENUM Engineering Team
APNG : Asia Pacific Networking Group
APIA : Asia & Pacific Internet Association
APTLD : Asia Pacific Top-Level Domain Association
intERLab@AIT : Internet Education and Research Laboratory @ Asian Institute of Technology
APRU : Association of Pacific Rim Universities

アジア太平洋地域のインターネットの歴史編纂

午前の部後半では、APNG(Asia Pacific Networking Group)の初代チェアを務めるなど、インターネット創成期からコミュニティを牽引しているKilnum Chon氏のリードでインターネットの歴史に関するセッションが開かれました。

インターネットの普及が進み始めて10年以上が経過し、インターネットをアジア太平洋地域に導入した先達の活動を記録し概観できるようにする取り組みが始まっています。今回の会合では、過去の蓄積が今後のコミュニティの活動指針となるように、一層積極的にこの取り組みを行うためにはどのような視点が 必要か、どうやって進めていくべきかについて議論が行われました。

アジア太平洋地域におけるインターネット団体の歴史編纂については、AP*事務局を中心に作業を行い、AP* Retreatで定期的に活動を報告すること、アジア太平洋地域および各国におけるインターネット発展の歴史の情報の収集については、APNGのInternet History CommitteeがAP*事務局と連携しながら取り組むことが確認されました。今後、インターネット進展の正確な歴史が整理され、皆様にもご紹介できるようになる予定です。

インターネットガバナンスの議論

午後の部では、最近話題のWSIS(The World Summit on the Information Society)やWGIG(Working Group on Internet Governance)におけるインターネットガバナンスに関するテーマについて、熱心な議論が行われました。

まず、APNICのGeoff Huston氏から、今回のインターネットガバナンスに関する議論は、ICANNによる資源管理体制の正統性や内容の適切さに関するITU-T(国際電気通信連合の電気通信に関する技術標準化担当部門)での疑問から始まったことが紹介されました。続いて、RIR(地域インターネットレジストリ)の連合体であるNRO(Number Resource Organization)は、WGIG等に対し、現在のボトムアップの体制が適切に機能しているという意見を正式に表明したとの紹介がありました。

その後、ICANN ALAC(At-Large Advisory Committee)メンバである松本敏文氏より、AtLarge(ICANNの一般会員組織)の最近の活動に関して紹介がありました。他の地域と同様に、アジア太平洋地域においても、地域としての連合組織を作ろうという動きがあるが、アジアの地理的、文化的広さ故に難航しているとのことでした。

これらの紹介の後、昨年末にICANN理事に就任した伊藤穣一氏も交え、ICANNのあり方を中心に熱心な議論が行われました。その中で、民間主導の現在のインターネット運営を維持し続けることがインターネットにとって健全であるという前提の下、次の課題に議論の焦点が当たりました。
(1)IPアドレスやドメイン名といったいわゆるインターネット資源に関する議論に力を注ぐべきなのか
(2)政府はどういう観点でインターネットガバナンスに関わるべきなのか
(3)一般のインターネットユーザは直接資源管理に関わるべきなのか

会合の時間内では明確な結論は出ませんでしたが、課題および課題解決へのアプローチに関する多くのヒントが得られた有意義な会合となりました。

今後のAP* Retreat

次回は、2006年2月にインドのバンガロールで開催されるAPRICOT会合に合わせて行われる予定です。

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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