JPドメイン名のサービス案内、ドメイン名・DNSに関連する情報提供サイト


ドメイン名関連会議報告

2005年

CENTR Administrative Workshop & General Assembly 報告

~ヨーロッパのレジストリに関する最新動向 他~

2005/12/02


2005年11月21日から23日にかけて、オランダの首都アムステルダムにてCENTR(Council of European National Top-Level Domain Registries)の第7回Administrative Workshopおよび第28回General Assembly(以下、GA)が開催されました。

Administrative Workshopでは、それぞれのレジストリのドメイン名登録管理業務の関係者が集まり、自国の最新の取り組みや、他のレジストリに役立つ経験を発表し、情報を共有します。今回は、22のレジストリから40名が参加し、ドメイン名の登録要件緩和に関する報告等を含むレジストリのサービス動向や、レジストリによるマーケティング活動についての発表があり、意見の交換が行われました。

GAでは、CENTRの組織運営について話し合うと共に、ドメイン名に関連する幅広いテーマの発表が行われます。今回のGAでは、CENTRの2006年度予算が話し合われました。また、ドメイン名関連の発表として、スペイン(.es)とオランダ(.nl)のレジストリの最新動向および、「Law enforcement and cyber crime」というテーマで発表と議論が行われました。

以下、各レジストリからの発表を中心に、今回の会議内容について報告します。

Administrative Workshop 会議風景
Administrative Workshop 会議風景

Administrative Workshop


▼オランダ(.nl)

まずはじめに、今回の会議のホストであるオランダのccTLDレジストリSIDN(Stichting Internet Domeinregistratie Nederland)から、.nlの最新動向と登録手続の特徴について発表が行われました。

2005年11月現在の.nlの登録数は約170万件で、国民一人当たりの登録数としては世界一であるとのことです(オランダの人口は約1500万人)。その理由としては、登録にあたりローカルプレゼンス(国内住所)が不要であること、登録手続が簡単であること、柔軟な料金体系が用意されていることを挙げていました。

また、今後の課題として、ドメイン名とレジストラのトランスファー(.jpドメイン名でいうドメイン名の移転または指定事業者変更)の際の書類手続の簡素化を検討しているとのことでした。

▼ スロベニア(.si)

スロベニアのccTLDレジストリであるARNES(Academic and Research Network of Slovenia)からは、2005年4月4日に実施された.siドメイン名の登録の自由化に関する発表が行われました。

自由化前の登録要件は、スロベニア国内で設立された法人のみが登録可能で、1つの組織が登録可能な文字列は登記された名称の1件のみという厳しいものでした。今回の自由化により、EU内で設立された法人による登録も可能になり、また1つの組織で20ドメイン名まで登録が可能という条件に緩和されました。

しかし、個人による登録は、国の個人情報保護に関する法律とWhoisの登録者情報公開の方針の調整が終わらず、保留されているとのことです。個人による登録については、2006年の春頃の実現を目指しているとのことでした。その際、1組織20ドメイン名という制限も解除される予定だそうです。

▼ スウェーデン(.se)

スウェーデンのccTLDレジストリであるNIC-SE(Network Information Centre Sweden)からは、数字ドメイン名の登録制限の解除計画について発表が行われました。

以前は数字ドメイン名の登録は制限されていましたが、一部のアプリケーションの問題を除き技術的に問題もなく、最近ではENUMにも利用されており、また他TLDでも登録実績があり問題が発生していないことなどから、この制限を解除することになりました。その際、警察への緊急電話番号や、赤十字募金、その他の著名な寄付用電話番号は予約ドメイン名となり、登録できないドメイン名になるとのことです。

また、「生年月日 + 4桁」の国民番号と同一形式の数字ドメイン名は、本人からの申し込みであるかどうかを確認してからの登録となるそうです。司会者から、他国の状況についての質問が行われ、今回のAdministrative Workshop参加国(21レジストリ)の中では、スウェーデン以外にもドイツ(.de)、クロアチア(.hr)、オランダ(.nl)、ノルウェー(.no)、スロベニア(.si)の5つのTLDが数字ドメイン名の登録を受け付けていませんでした。

▼ .biz

.bizのレジストリであるNeuLevelからは、.biz登録者へのサンプル調査の結果が発表されました。

それによると.bizの登録は、このTLDの目的通りビジネス用途の登録が95%を占め、50%以上がアメリカ以外の登録者であり、実際に運用されているドメイン名の割合は69%、売出し中のドメイン名は1%であるとの結果が出ました。また、運用されているドメイン名のうち、64%は売上が25万ドル以下の組織であること、75%は従業員数10名以下の小規模ビジネスでの利用であることがわかりました。(調査時の登録数は約135万件)

▼ イギリス(.uk)

イギリスのccTLDレジストリであるNominetからは、登録者およびレジストラのサポート体制について発表が行われました。

Nominetは、組織的には、登録者サポートとレジストラサポートの2つの部門に分かれています。調査会社に委託した調査結果によると、電話による問い合わせへの対応率97%(IT業界平均は92%)であるなど、Nominetの登録者向けサポートは満足度80%と評価が高く、業界2位とのことでした。レジストラサポート部門の担当者からは、3700組織のアクティブなレジストラに対して、1ヶ月(土日祝日休み)1800件の電話、600件のメール、2500件の支払い処理をしているとのことでした。

▼ ノルウェー(.no)

ノルウェーのccTLDレジストリであるNoridからは、レジストラのドメイン名登録管理業務の品質チェックの結果が発表されました。

それによると、全430社あるレジストラのうち、394社に対して申請手続のサンプリングテストを行った結果、116社の申請に重大なミスがあり、57社の申請に誤りがあったとのことでした。また、10社がチェックに応じず、契約解除になったそうです。Norid からの発表の後、Administrative Workshop参加した全レジストリから、レジストラになるための契約要件、業務管理体制、適切な業務を行わなかった場合のペナルティ等についての発表が行われました。

▼ 日本(.jp)

日本のccTLDレジストリであるJPRSからは、DNSサーバの不適切な管理によって引き起こされる問題点の指摘と、その解消のための取り組みについて発表を行いました。ネームサーバの設定が適切に更新されていなかったり、設定している情報に間違いがある場合、その設定の不備をついて、悪意ある第三者にDNSの応答を「乗っ取られる」ことがあるという問題点の指摘です。

この問題解消のための取り組みとして、JPRSからドメイン名の管理指定事業者に対し、不適切な設定がされているネームサーバの情報を通知し、改善されない場合は、JPRSから登録者に通知するといった取り組みの紹介を行いました。
そして、そのような取り組みが朝日新聞やInternational Herald Tribuneに記事として掲載されるなど、DNSの乗っ取りに対する社会の関心が高まったことを紹介しました。

発表後、参加レジストリへインタビューしたところ、同様の対応を行っているレジストリはありませんでしたが、申請の段階で設定内容を確認し不適切な場合は設定申請を却下しているレジストリが複数あり、JPドメイン名での今後のサービスの方向性とも一致していることが分かりました。

また、DNSの乗っ取りのような問題が起こっているか質問したところ、オランダの技術者からそのような問題が起こる可能性は意識しているけれど、具体的な対策は特に取っていないとのコメントがありました。

▼ マーケティング活動

最後に、Administrative Workshop初の試みとして、レジストリによる、マーケティング(登録促進)活動に関する発表がありました。

メキシコ(.mx)のレジストリであるNIX.MXからは、メキシコでは、まだドメイン名に対する意識が低く、インターネットにおけるドメイン名の意味を中心に宣伝しているとの発表がありました。

また、カナダ(.ca)からは、PR活動を中心とした活動について発表がありました。英語圏では「カナダらしさ」、フランス語圏では「個性と独自性」を訴求することが登録促進には効果的とのことでした。

マーケティング活動については、両国とも具体的成果が出ており、引き続き施策を準備中とのことです。

General Assembly(GA)

22日と23日に開催されたGAでは、26のレジストリと9つの組織から53名が参加し、多岐に渡る議題について話し合われました。CENTRの組織運営に関するテーマとしては、2006年度予算、今後の戦略プラン、WSISに対するCENTRのスタンス、ICANN/IANAの最新動向が取り上げられました。

ドメイン名関連では、スペイン(.es)の登録自由化、オランダ(.nl)のマーケティングリサーチの結果の他に、「Law enforcement and cyber crime」というテーマで、レジストリだけでなく、レジストラ、インターネット犯罪ホットライン等の非営利団体、FBIといった色々な組織からの発表が行われました。

JPRSからは、日本における代表的なサイバー犯罪とそれに関係する法律の概要を紹介し、これに関連して、JPドメイン名の特徴、Whoisでの情報公開や開示請求の手続について紹介しました。

まとめ

各レジストリからの発表を通じ、ドメイン名の登録要件やサービス内容の特色を知ることができました。ドメイン名の登録要件に関しては、緩和の方向にある印象を受けました。発表内容には、.JPドメイン名の将来像を設計する上で参考になるものが多くありました。

CENTRの組織運営に関しては、議題毎にメンバーの意見が分かれ、40近くのメンバーの意見をまとめることの難しさが印象に残りました。

次回のGAは2006年3月2および3日にロンドンで開催されます。Administraive Workshopの開催時期は現時点では未定ですが、2006年も年に数回開催される予定です。

今回の発表資料は、関連URIに掲載されています。

関連URI



本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
「FROM JPRS」にご登録いただいた皆さまには、いち早く情報をお届けしております。ぜひご登録ください。