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ドメイン名関連会議報告

2008年

ヨーロッパ地域のccTLDコミュニティにおける最新動向

~CENTR Administrative Workshop & General Assembly報告~

2008/10/20

2008年10月1日から3日にかけて、イタリアのピサの郊外ビアレッジョにて CENTRの第14回Administrative Workshop、および第37回General Assembly (GA: 総会)が開催されました。

CENTRはヨーロッパ地域におけるccTLDレジストリの連合体で、2008年10月現在、 50を越えるレジストリが参加しています。CENTRはヨーロッパ地域を活動の主 眼としながらも、ヨーロッパ地域以外のccTLDやgTLDレジストリも活動に参加 することができ、JPRSもCENTRの会員として、議論や情報交換に参加しています。

今号では、今回開催された2つの会合における主な話題を中心に、ヨーロッパ 地域のccTLDコミュニティにおける最新動向についてお伝えします。

CENTR Administrative Workshop & General Assemblyの様子
CENTR Administrative Workshop & General Assemblyの様子

第14回CENTR Administrative Workshop

CENTRでは「Administrative Workshop」「Legal & Regulatory Workshop」 「Technical Workshop」の3つのワークショップを年に数回、定期的に開催し ています。そのうち今回開催されたAdministrative Workshopは、各TLDレジス トリがそれぞれのドメイン名の登録管理をどのように運営しているのか、また 今後どのように運営していくのがよいのかについての情報交換や議論を、主な 目的としています。

今回の会議では、ドメイン名に関するマーケティング、ブランディングに関す る各レジストリの活動が主なテーマとなりました。

日本におけるJPRSの活動紹介

今回、JPRSは「Recognition of .jp in the Japanese Market」と題し、JPド メイン名に関してJPRSがこれまでに実施した調査や活動内容について紹介しま した。

具体的には、ドメイン名登録者を対象とした「JPドメイン名に関する意識調査」 の結果、JPドメイン名に対し「日本」・「安心感」・「信頼感」などのイメー ジを持っている人が多いとわかったこと、またJPドメイン名とJPRS自身の周知 啓発活動の一環として、2008年3月にJPドメイン名の登録数が100万件を達成し た際に行なった様々な宣伝活動や、JPRSのレジストリとしての役割を意識した 広報活動などを報告しました。

さらに、最近の日本の広告でキーワード検索を用いたものをよく見かけること を説明した上で、キーワード検索とドメイン名に関するそれぞれのメリットと デメリット、また両者を効果的に併用することによって得られる相乗効果につ いても触れました。具体的な例としては、検索で用いられるキーワードと実際 のドメイン名を一致させることにより、URLの直接入力および検索のどちらか らアクセスされる場合においても、高いブランディング効果が期待できること などを説明しました。

欧米地域では、日本などのアジア地域と比べると、キーワード検索を用いた広 告はそれほど多くないようです。ラテン文字を実生活で使っている欧米地域で は、日常の文字(言葉)そのものがドメイン名であるため、「キーワード検索」 の必要性は日本ほどは高くないと推察できます。 このような背景から、今回JPRSが紹介した「キーワードとドメイン名を一致さ せ、ブランディング戦略上の相乗効果を図る手法」は会場でも関心を引き、翌 日開催されたCENTR General Assemblyにおいてもその概要が報告され、話題と なりました。

ccTLDが多く使われるヨーロッパ

ヨーロッパ地域ではその国民性やインターネットの成り立ちなどから、自国の ccTLDが.comや.netといったgTLDよりも多く使われる傾向にあるようです。

今回、.euのレジストリであるEURid から、2008年第 二四半期におけるヨーロッパ地域のドメイン名全体のマーケットシェアは、 .euを除く各ccTLDのシェアが57.8%を占めており、.comのシェアは25.0%にとど まっているという調査結果が発表されました。

第37回CENTR General Assembly(GA)

CENTRのGeneral Assemblyは「GA」と略され、総会に相当します(今号でも以 下GAと略します)。CENTR GAは年に数回のペースで開催されており、2008年で は2回目の開催となりました。

今回は2日間にわたって開催され、インターネットにおける最近のトピックス・ 課題に関する情報交換やパネルディスカッション、さらにはレジストリとして 注目すべき課題に関する議論や、新入会員の承認、予算計画などが取り上げら れました。

「カミンスキー・アタック」に対するICANN/IANAの対応

ICANN/IANAから、今年の夏に話題になった「カミンスキー・アタック(*1)」 の概要と対応策、およびICANN/IANAが実施した対応の紹介がありました。

(*1)
カミンスキー・アタック:
従来よりも効率的にDNSキャッシュポイズニングを行うための新しい攻撃方法。攻撃方法の技術的な詳細についてはJPRS発行の「JPRS トピックス&コラム」No.009 「新たなるDNS キャッシュポイズニングの脅威~カミンスキー・アタックの出現~」をご参照ください。

ICANN/IANAではこの脆弱性が話題になった際、TLDの権威DNSサーバの設定状況 を調査し、脆弱性が発見された72のTLDオペレーターに対し連絡を行い、対策 を促したことが発表されました。また、ドメイン名を入力することにより権威 DNSサーバの脆弱性をチェックできるツール(*2)を作成し、公開しています。

(*2)
IANA - Cross-Pollination Check
https://recursive.iana.org/

DNSSECに関する検討状況

今回の会議は、カミンスキー・アタックへの準備対応がDNSオペレーターによっ てなされた直後に開催され、また、ICANNがルートゾーンに署名する方法の提 案を行なう数日前であったこともあり、DNSSECについても、各種検討状況に関 する情報交換が行われました。

ICANNでは現在、複数のレジストリからの要請を受け、DNSSECの導入を推進し ています。まず、ルートゾーン署名までの暫定手段として各TLDの公開鍵を登 録するためのTAR(Trust Anchor Repository)の運用を行うことを発表してい ます。さらにICANNではルートゾーンの署名方法を検討し、本会議の直後に、 ルートゾーンに署名する方法の提案を米国商務省に提案しました。この提案書 はICANNのWebサイトで公開されています(*3)。

(*3)
ICANN | Proposal To Sign the Root Zone Made Public
http://www.icann.org/en/announcements/announcement-2-09oct08-en.htm
DNSSECはレジストリや技術コミュニティにおいても導入のための検討が進んで おり、DNSSEC 関連のツールや教材、経験の開発、共有の仕組みを作っていこ う、という提案がされました。

しかし、DNSSECはレジストリ単独での導入は事実上不可能であり、レジストラ やISP、ドメイン名登録者においても対応を行う必要があります。そのため、 導入コストが大きくなることから、関係者においてコストをどのような形で負 担していくかの設計が重要であり、またそのアイディアの共有も必要であると いう認識が共有されました。

新入会員

今回、CENTRの会員として.rs(セルビア)、.cn(中国)、.mobi(dotMobi) の加入が承認されました。中国は日本に続き、アジア地域で二番目のCENTR会 員となりました。

まとめ

今回のAdministrative Workshopには、各レジストリ、APTLDなどのオブザーバー を合わせ、30組織・約50名の参加がありました。GAには各レジストリに加え、 ICANN/IANAなどの国際組織、欧州委員会などの政府組織も参加し、46組織・80 名以上の会合となりました。

CENTRは、2009年に正式な法人化後10周年の節目を迎えます。CENTRはこれまで、 ヨーロッパ地域のccTLDを中心とするレジストリの連合体として活発な活動を 継続的に行ってきました。今後もccTLDのレジストリ間の情報共有・コーディ ネーションの場として、大きな役割を果たしていくことでしょう。


本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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