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ドメイン名関連会議報告

2011年

ICANNサンフランシスコ会合報告

~新TLDの導入に関する最新動向を中心に~

2011年3月13日から18日にかけて、第40回ICANN Meetingが米国のサンフランシスコで開催されました。
3月18日のICANN理事会において、アダルトコンテンツ用のgTLD「.xxx」が承認されたことを複数のメディアが報じていたため、今回の会合開催をご存知だった方も多いのではないでしょうか。今回のFROM JPRSでは、この「.xxx」も含め、新たなTLDの導入に関する最新動向を中心に、会合の模様を読者の皆さまにお届けします。

ICANNサンフランシスコ会合の様子

ICANNサンフランシスコ会合の様子

新gTLDの「申請者用ガイドブック」は今回も理事会承認に至らず

大手企業の申請計画などで、日本国内においても注目を集めている新gTLD導入プロセス。2010年12月開催の前回会合から持ち越しとなった「新gTLD申請者用ガイドブック」の理事会承認は、今回も実現しませんでした。
現時点では、次回会合の会期中に当たる2011年6月20日に、臨時の理事会を開催して承認するとの計画が示されている状況です。また、既にガイドブックの「最終案」と銘打たれたバージョンへのパブリックコメント募集が2011年1月15日に終了していましたが、臨時の理事会に向けて再度パブリックコメント募集がなされることになりました。計画によれば、4月15日にガイドブック案を公開した後、5月15日までパブリックコメントを受け付け、5月30日にガイドブック最終案を改めて公開する流れになるとのことです。

前回会合に先立って発表されていたスケジュールでは、5月30日には新gTLDの申請受付開始が予定されていました。同スケジュールでは、ガイドブックの承認から申請受付開始までの広報期間などに数カ月を見込んでいたことから、申請受付開始は大きくずれ込むことが予想されます。

GACとの調整が大きな課題に

前回会合でも「2011年2月にGACとICANN理事会で会議を行い、残存課題を解決する」との決議がなされていたように、残る大きな課題として挙げられるのがGACとの調整です。GACはICANNの諮問委員会の一つで、各国政府などからの代表メンバーによって構成されており、政府の立場からICANN理事会に対して助言を行っています。
先に触れた2011年2月の会議と今回の会合期間中に行われた会議を合わせると、公式の会議だけで丸5日間にも及ぶ集中討議が行われました。しかし、異議申し立てプロセスなどについて、なおも残存課題が存在している状況です。
ICANN理事会は、GACとの協議を今後も継続し、パブリックコメントの募集対象となるガイドブック案の公開予定日である4月15日までに結論を出すことにしています。

アダルトコンテンツ用のgTLD「.xxx」の承認

冒頭でも触れたとおり、アダルトコンテンツ用のgTLD「.xxx」を申請していたICM Registry社とのレジストリ契約締結が、3月18日のICANN理事会において承認されました。前項の新gTLD導入プロセスと併せて語られることも多い「.xxx」ですが、これらは異なる枠組みで議論されているものです。よって、運用開始に向けて今後たどるスケジュールも別個になります。

gTLDの新設は、2000年と2003年の過去2度のタイミングで行われています。つまり、現在議論が進められている新gTLD導入プロセスは、タイミングとしては3度目ということになります。
「.xxx」は、過去2度の新設タイミングのいずれにおいてもICM Registry社から申請がなされたものの、却下されています。これを受けた同社が、ICANNの定めた紛争解決プロセスである独立審査パネルに異議申し立てを行った結果、裁定で同社の主張が認められる形となり、ついに今回の承認に至りました。

しかし、「.xxx」には反対意見も根強いのが実情です。「『.xxx』によってポルノを公に容認すべきではない」との意見の他、ポルノ業界からも「我々の表現の自由を侵害するものである」との懸念が示されています。
また、「『.xxx』のブロッキングを行う国が想定され、DNSの普遍的な名前解決や安定性に対する潜在的なリスクになる」などとして、GACも反対姿勢を示していた中での承認ということもあり、ICANN理事会は後日、今回の承認の根拠を文書で説明することを予定しています。

引き続き恒久的なポリシー検討が進むIDN ccTLD

IDN ccTLDについては、正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス(ccPDP)」の検討と並行して、早期に必要とされるIDN ccTLDを限定的に迅速導入するための「ファストトラックプロセス」による申請受け付けが開始されています。
ファストトラックプロセスにおいては、2011年3月10日までに26の国/地域の申請が文字列審査を通過し、17の国/地域のIDN ccTLDがルートゾーンに登録されている状況です。

恒久的なポリシー検討については、JPRSも参加するccNSO(*1)の二つのワーキンググループにおいて進められています。以下、各ワーキンググループにおける現在の検討状況をご紹介します。

(*1)
ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体としてICANNの他の支持組織や委員会などと協調しながら、ccTLD全体にまたがるグローバルな課題についてccTLDコミュニティにおける合意を形成し、ICANN理事会に対してポリシーの勧告を行う役割を担います。

 

文字列や委任に関する検討が最終段階に(IDN PDP WG 1)

ファストトラックプロセスにおいて、簡体字と繁体字という複数の字体体系を持つ中国に割り当てられた「.中国/.中國」のような、同一と見なすべき複数の文字を含むTLDをどのように扱うかが主たる残存課題となっています。なお、これはccTLDに限った課題ではないことから、ICANN全体として検討を開始しています。具体的には、「同一と見なすべき複数の文字を含むTLDは一つのTLDの複数表現か、等価な複数のTLDか」などの概念的な検討の他、「ルートゾーン上で同一と見なすべき複数の文字を含むTLDが等価であることをどう表現できるか」などの技術的な検討が進められることになります。

IDN ccTLDレジストリのccNSO参加の位置付け検討が続く(IDN PDP WG 2)

IDN ccTLDレジストリのccNSO参加は、「IDN ccTLDも含め、全ccTLDの管理者はccNSOのメンバーになれる」「IDN ccTLDの数にかかわらず、投票権はこれまで通りISO-3166上の国/地域単位で1票と見なす」との方向で検討が進められてきました。後者の投票権について、「言語やスクリプトという概念を入れて、ASCII文字のccTLDとIDN ccTLDがTLDとして同等の地位を得た以上、それらをすべて同等と見なすべきでは」との疑問が再度投げかけられたことから、議論が行われている状況です。

次回のICANN Meeting

次回の第41回ICANN Meetingは、2011年6月19日から24日にかけてシンガポールで開催される予定です。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。「FROM JPRS」にご登録いただいた皆さまには、いち早く情報をお届けしております。ぜひご登録ください。