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ドメイン名関連会議報告

2012年

ICANNトロント会合報告

~IDN ccTLD導入に関する最新動向と新gTLDプログラムの進捗状況を中心に~

2012年10月14日から18日にかけて、第45回ICANN Meetingがカナダのトロントで開催されました。
北米での開催ということもあり、本会合の参加登録者数は約1,500人と、多くの参加者が集まりました。
また、会合への初参加を示す「New Comer」のバッジをつけた参加者は、前回会合に比べると減っているように見受けられ、新gTLD導入をきっかけにドメイン名業界に参入した企業や組織からの参加者の増加は落ち着いたようです。
今回のFROM JPRSでは、IDN ccTLD導入に関する最新動向や新gTLDプログラムの進捗状況をはじめ、その他、会合で取り上げられた内容や議論についてお届けします。

  • IDN ccTLD導入に関する最新動向
  • ccNSO会合での話題から
    - ccTLDからICANNへの財政的貢献
    - 各レジストリでのDNSSECの展開動向
    - インターネットへのITR適用を巡る動向
  • その他の内容・議論から
    - 新CEOの下で進められるICANNの構造改革
    - 新gTLDプログラムの進捗状況
第45回ICANN会合(トロント会合)の様子

第45回ICANN会合(トロント会合)の様子

IDN ccTLD導入に関する最新動向

WGにおけるポリシー検討がおおむね収束、ccNSO評議委員会における検討へ

IDN ccTLDについては、早期に必要とされるIDN ccTLDを限定的に迅速導入するための「ファストトラックプロセス」による申請受け付け/委任と、IDN ccTLDの正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス(PDP)(*1)」の検討が引き続き進められています。 ポリシー検討については、JPRSも参加するccNSO(*2)の二つのワーキンググループにおいて検討を行ってきました。IDN ccTLDの文字列や委任に関する検討はIDN PDP WG 1で、IDN ccTLD導入に際して必要となるICANN定款見直しの検討はIDN PDP WG 2で進められています。

(*1)
ICANNの役割の一つに、インターネット資源の調整業務に関連するポリシー策定があり、このポリシー策定のための一連の流れをPDP(Policy Development Process)と呼びます。
(*2)
ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体として、ICANNの他の支持組織や委員会などと協調しながらccTLD全体にまたがるグローバルな課題についてポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告を行う役割を担います。

今回の会合では、各ワーキンググループで進めてきた検討事項についての議論がおおむね収束し、今後は、議論の内容をまとめた最終報告書の作成に入ります。その後、各ワーキンググループでの議論の結果は、ccNSO評議委員会にてccNSO全体の合意とすべきかどうかの検討がなされることとなります。

ccTLDからICANNへの財政的貢献

前回のICANNプラハ会合で検討されながら進展がなかった「ccTLDからICANNへの財政的貢献」について、検討状況の共有が行われました。具体的にどの程度の財政的な貢献が必要なのかを考えるにあたり、まず、ICANNの活動について以下の三つのカテゴリーに分類を行い、検討を進めていくことが決定されました。

1.
IANA契約など直接的なサポート関連
2.
ICANN会合時の会場提供など間接的サポート関連
3.
各WGの活動サポート関連

具体的な内容については、2013年4月に開催されるICANN北京会合にて、引き続き検討が進められる予定です。

各レジストリでのDNSSECの展開動向

DNSSECの普及・導入活動を進めているいくつかのレジストリから、それぞれのTLDにおけるDNSSECの展開状況が共有されました。

今回報告された特徴的な施策として、レジストラをDNSSEC対応状況によってランク付け/公開するなどのインセンティブの設定や、DNSSECに関する教育ツールの提供、ウェビナー(Webinar: インターネット上で行われるセミナー)の開催といった、レジストラに対する手厚いサポートの実施が挙げられます。

また、その他の施策として、政府が政府機関における遵守事項を定めたリストにDNSSECを必須施策として指定することが有効であるという報告がありました。実際にリストへの掲載を実施しているオランダのccTLD「.nl」のレジストリSIDNから、これらの施策を実施した結果.nlにおけるDNSSECの署名済みドメイン名数が飛躍的に増加し、施策が効果を発揮していることが紹介されました。

インターネットへのITR適用を巡る動向

前回のプラハ会合におけるccNSO会合では、国際連合の専門機関の一つである、国際電気通信連合(以下、ITU)の定める「国際電気通信規則(以下、ITR)」の動向に関する議論が行われました。

ITRは、これまで国際電話通信の分野に適用されてきましたが、今後、その適用範囲をインターネットにも拡大しようとするという動きが出てきているためです。ITRの改正には、ITU内の世界国際電気通信会議(以下、WCIT)の開催が必要とされており、2012年12月にWCITの初開催が予定されています。

今回の会合におけるWCITに関するパネルディスカッションでは、ITRが改正された場合に発生するとみられる具体的な影響について言及はありませんでした。しかし、ccTLDコミュニティとして、継続して議論の動向を注視し、各国政府と連携を取り合うなどの行動が必要であるとのコメントが多く聞かれました。WCITの開催が12月に迫る中、今後の動向に注目が集まっています。

新CEOの下で進められるICANNの構造改革

2012年10月15日に開催された「Opening Ceremony」において、同年9月14日にICANN CEOに就任したFadi Chehade氏が、「A New Season」と題したプレゼンテーションを行いました。

同氏はプレゼンテーションの中で、ICANNは「Multi Stake Holder"Equal"Model」であるとし、それぞれのステークホルダーを平等に扱うことの重要性を示しました。

そして、ICANNの幹部スタッフを改めて紹介するとともに、ICANNにおける理事とスタッフの壁や部門間の壁を取り除き、ICANNメンバーが一丸となって、多様なステークホルダーとの協調に基づく組織運営を目指すことを表明しました。

さらに、ICANNと各国、各地域のインターネットコミュニティとの連携が重要であるという点にも言及しました。会場では、このプレゼンテーションで示されたICANNの方向性に好感を持ったという声が多く聞かれました。

新たなコミュニケーションツール「myICANN」

Chehade氏は同プレゼンテーションの終了後、ICANNの新たなコミュニケーションツールとなる「myICANN(https://myicann.org/)」を紹介しました。現在のものは、ICANNからの情報を受け取る機能しかないものの、今後、ボトムアップ型の意見形成のツールとして、また、各種トレーニングのプラットフォームとしての役割を果たしていけるよう機能を拡充していくことを発表しています。

今回のプレゼンテーションや新しいコミュニケーションツールの発表などからは、新CEOの下、さまざまなステークホルダーと積極的なコミュニケーションの確立を目指すICANNの姿勢が垣間見えます。今後、新CEOとなったChehade氏が中心となって進められていくであろう、ICANNの構造改革の内容に要注目です。

新gTLDプログラムの進捗状況

ICANNによる新gTLDの審査結果発表と委任手続の順番決定方法

現在進行中の新gTLDプログラムでは、申請された文字列の審査の順番を決めるための「Digital Archery」が中止されるなど、スケジュールの遅れが懸念されていました。

これを受け、ICANNは2012年10月10日、新gTLDの審査の結果発表と委任手続きの順番を決める方法として、「Prioritization Drawing(以下、抽選)」を用いる提案を発表しました。この提案に対して、これまでに否定的な意見は出ておらず、「新gTLDプログラムの今後の見通しがICANNによって明確に示されたことを歓迎する」といった声が多数聞かれました。

今回、ICANNが提案した「抽選」の概要は以下となります。

  • ICANNの主催により、2012年12月に米国(ロサンゼルス)にて抽選会を開催する
  • 抽選参加希望者は、事前に100米ドルの参加チケットを抽選を希望するgTLD申請ごとに購入する必要がある(「非営利法人が基金創設抽選会を実施する」旨のカリフォルニア州法の規定の適用を受けるための法的要請によるもの)
  • 抽選会の参加者は、当該新gTLD申請組織の代表者もしくはその代理人とする
  • ICANNは抽選の代理人の斡旋を実施する
  • 抽選会に参加しなかったgTLDの申請者の委任手続きの順番は、抽選に参加した申請者の後になる
  • IDN(ASCII以外の文字を用いたドメイン名)の申請に優先権を与える

今後も新gTLDプログラムでは、さまざまな動きがあると見られます。引き続き、新gTLDプログラムの動向に注目が集まりそうです。

Trademark Clearinghouse

「Trademark Clearinghouse」は、新gTLDプログラムにおいて、商標権の侵害を意図する第三者によるドメイン名登録からの防衛を目的として設けられるデータベースです。

2012年6月1日にICANNがTrademark Clearinghouseの実施事業者の選定結果を発表したものの、その後の実現に向けた見通しが示されていない状況でした。その後、2012年10月14日に行われた「GNSO Working Session」において、新CEOのChehade氏は、「現行のICANN案はコミュニティからの支持を十分に得ていない」との判断を下し、仕様案の見直しを決定しました。

Chehade氏は、Trademark Clearinghouseの検討における混乱状況の解決を当面の最重要課題として取り組むという方針を明らかにし、ICANN理事会もこの方針を支持しました。近日中に、更新された仕様案がICANNから提示されるとみられており、新提案に対するパブリックコメント募集が行われることが期待されています。

Uniform Rapid Suspension導入の状況について

Uniform Rapid Suspension(以下、URS)は、商標権を侵害したドメイン名が発見された場合に、その商標の権利者が当該ドメイン名の利用を早期に凍結することができるシステムとして、ICANNが導入を計画しているものです。

しかし、当初、ICANNが計画していたコストではURSの実装が不可能であることが明確となり、URSの構想そのものが危うい状態になっていました。

会期中に開催されたワーキングセッションにおいて、3組織が規定のコスト(500米ドル)に収まる提案を行いました。既に提案を行っている1組織と合わせて、計4組織がプロバイダーの募集に応募する可能性があります。今後、2013年2月までに、ICANNが応募組織の中からURSを実装するプロバイダの選定を行う可能性が高いとみられています。

次回のICANN会合

次回の第46回ICANN会合は、2013年4月7日から11日にかけて中国の北京で開催される予定です。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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