ドメイン名関連会議報告
2025年
[第84回ICANN会合報告] ccTLD関連の話題
2025/12/12
本記事では、第84回ICANN会合(ICANN84)におけるccTLD関連の話題についてご紹介します。
インターネットガバナンスに関する議論
2005年の世界情報社会サミット(WSIS:World Summit on the Information Society)で、多様なステークホルダーが参加し、インターネットガバナンスについて議論できるインターネットガバナンスフォーラム(IGF)が創立されました。その10年後の2015年にWSISの進展に関する見直しが行われ、その結果IGFも含めて活動が10年延長されました。延長期限である10年後に当たる2025年に再度見直しが行われており、12月中に「WSIS+20(世界情報社会サミット20年レビュー)」の最終合意文書が国連によって採択される予定です。この文書は、今後のインターネットガバナンスの基本方針(政府と民間・技術コミュニティの関係性、IGFの位置付け、国際的枠組みなど)に影響力を持つため、ccTLDの立ち位置にも影響を及ぼすと考えられています。
ccNSOには、インターネットガバナンスに関する議論やプロセスにおけるccTLD管理者の参加を調整・促進・増加させることを目的として、Internet Governance Liason Committee(IGLC)が設置されています。IGLCの主な活動は、ccTLDに対してインターネットガバナンスに関する情報共有や意見交換、WSISやIGFのレビュープロセスに関する情報発信や啓発活動などです。ICANN84でも、IGLCによるセッションが設けられました。
セッションの冒頭で、WSIS+20レビューの共同調整役(Co-Facilitator)を務めるErastus Ekitela Lokaale氏(ケニアの国連常駐代表部)から、WSIS+20レビューの現状が共有されました。Lokaale氏からは、レビューが終盤に差し掛かり重要な局面を迎えていることや、レビューにおいてマルチステークホルダーモデルを堅持することの重要性、技術コミュニティの貢献を明示的に位置付ける意向などが示されました。
カナダ(.ca)のccTLDレジストリCIRAのPresident & CEOであり、ICANNの理事を務めるByron Holland氏は、コメントとして、ccTLDレジストリは技術コミュニティやインフラ提供者として、この件についてきちんと発言をすべきである、という趣旨の意見を述べました。
また、アルゼンチンを拠点としてインターネットガバナンス関連の活動に関わり、ICANNのccNSO評議委員を務めるOlga Cavalli氏は、国連や各国政府が多用する「デジタル・ガバナンス」という用語と、マルチステークホルダーで運営されるインターネット基盤のルール作りを指す「インターネット・ガバナンス」という用語は区別されるべきであること、WSISやIGFは「インターネット・ガバナンス」の場であり、デジタル政策全般の議論の場ではないことが重要である、という見解を示しました。
更に、「インターネットの父」の一人として知られ、現在はIGFのLeadership Panel[*1]の一員でもあるVint Cerf氏は、技術コミュニティがインターネットガバナンスについて継続的に発言することの重要性に言及したほか、IGFの財政面での不安定さにも触れ、ccTLDによる財政支援の重要性についても強調しました。
Welcome Ceremonyの様子
[*1] IGF Leadership Panel:IGFに対して助言をする役割。国連事務総長によって任命される。
https://www.intgovforum.org/en/content/igf-leadership-panel-members




