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ドメイン名関連情報

2018年 ドメイン名重要ニュース

2018年の多くのニュースの中から、ドメイン名ニュース担当者が選んだ大きな話題を五つご紹介します。

1海賊版サイト対策とDNSブロッキングをめぐる議論

2018年は、4月に政府の犯罪対策閣僚会議が三つの海賊版サイトについて、ISPにブロッキングの実施を促す緊急対策を表明したことに端を発する議論が、大きな話題となりました。

ブロッキングにはいくつかの方法があります。そのうち、DNSブロッキングは、DNSの問い合わせ内容をチェックし、特定のドメイン名に対する利用者のアクセスをブロックするというものです。DNSブロッキングは、憲法や電気通信事業法が保証する「通信の秘密」を侵害する恐れがあるとして、通信業界団体などが相次いでブロッキングに反対する旨の声明を発表し、ブロッキング推進派と法制度整備の検討を含む議論へと展開しました。

2018年6月、内閣の知的財産戦略本部の検証・評価・企画委員会の下に、インターネット関連事業者、コンテンツ産業関連事業者、有識者など幅広いステークホルダーから成る「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)」が設置され、海賊版サイト対策についての検討が始まりました。

日本のコンテンツ産業に大きな被害をもたらすとしてその必要性を主張するブロッキング推進派に対し、ブロッキング反対派は、総合的な海賊版対策に関する議論を先に行うべきであると主張する形で議論が進みました。

タスクフォースでは、仮に法制度を整備する必要性があるのであれば、どのような制度が適切と言えるのかについても話されましたが、ブロッキングに係る法制度整備の必要性については多様な意見があり、合意に至ることはありませんでした。この結果を含む「『インターネット上の海賊版対策に関する検討会議』中間まとめ(案)」が、2018年9月に知的財産戦略本部より発表されています。

社会的に大きな注目を浴びた話題であるだけに、今後もその動向に関心が集まりそうです。

2ルートゾーンKSKロールオーバーにおける新KSKでの署名開始

2018年10月11日(協定世界時)、ICANNが2017年から2019年にかけて実施中の「ルートゾーンKSKロールオーバー」の作業のうち、最も影響が懸念された「新KSKによる署名」への切り替え(ロールオーバー)が無事終了しました。

この作業は当初、2017年10月11日に実施される予定でした。しかし、必要な準備が想定より進んでいなかったことが調査により判明し、切り替えの影響が無視できない数のインターネット利用者に及ぶことが懸念されたので、延期されていました。

ICANNでは問題解決のため、必要な準備が進んでいなかった原因を調査し、DNSソフトウェアの開発者や運用者と連絡を取って、問題の解消に努めました。それらの活動や準備状況の観測結果を踏まえ、ICANNでは再延期の必要はないと判断し、当初の予定からちょうど1年後となる2018年10月11日午後4時(協定世界時)に、新KSKによる署名へ切り替えることを決定しました。

新KSKによる署名への切り替えでは大きな問題の発生は報告されず、ICANNは2018年10月15日にルートゾーンKSKロールオーバーは成功したとする旨のプレスリリースを発表しています。

以降は、2019年1月から3月にかけて旧KSKの廃棄が行われ、この作業の完了をもって今回のルートゾーンKSKロールオーバーの作業ステップはすべて完了することになります。

3JPドメイン名の累計登録数が150万件突破

2018年2月1日、JPドメイン名の登録数が150万件を突破しました。内訳は、「○○○.jp」という形式の汎用JPドメイン名が全体の67.6%と最も多く、「co.jp」「ne.jp」といった組織の種別ごとに区別されたドメイン名である属性型・地域型JPドメイン名が31.6%、「○○○.東京.jp」のように「.jp」の左側に当たるセカンドレベルドメイン部分に都道府県ラベルを含む都道府県型JPドメイン名が0.8%となっています。2018年12月1日には154万件を超え、その数は着実に増加を続けています。

JPRSは、150万件を超えるJPドメイン名を登録・利用されている皆様を始め、JPドメイン名を育ててこられた日本のインターネットコミュニティの皆様、指定事業者の皆様に改めて感謝すると共に、今後もより利用しやすく価値の高いJPドメイン名サービスの提供に努めてまいります。

4ドメイン名業界でも進むGDPRへの対応

2018年5月25日に施行されたEUの一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)は、ドメイン名に関連する登録情報をインターネット上で参照するためのサービスであるWhoisにも影響を及ぼしています。

2018年に開催されたICANN会合においても、GDPRとWhoisは大きな話題となりました。ICANNは、gTLDに関しては各レジストリ及びレジストラとの契約の中でコンタクト情報(登録者、管理者、技術担当者の情報)の収集を義務付けており、その情報はWhois上で一般に公開されてきました。しかし、欧州委員会や欧州データ保護当局は、Whoisでの登録情報の公開はGDPRに抵触すると指摘し、ICANNではGDPRの遵守とインターネットの運用に必要な情報収集とのバランスを取るために関係組織間・コミュニティにおいて調整を重ねてきました。

調整の結果、GDPRの施行と同日、GDPRを遵守したWhoisサービス提供のための暫定的なポリシーが、ICANN理事会における承認を経て執行されました。ICANNでは現在、1年後の2019年5月25日までに恒久的なポリシーを策定すべく検討が進められています。

ccTLDにおいては、EU圏内のレジストリについては今回のGDPRの施行を受け、個人情報を完全に非公開にするレジストリが多い状況となっています。一方EU圏外では、GDPRの影響は少ないとして現行のWhoisを維持しているccTLDレジストリが多いなど対応は様々ですが、EU圏内のコンタクト情報が含まれることがサービス上の常態であるレジストリは慎重な対応が求められています。

GDPRへの対応については、2019年も引き続き注目を集めそうです。

5新たなサービスが登場、パブリックDNSに注目が集まる

2018年4月1日、CloudflareとAPNICが共同運用するパブリックDNSサービス、「1.1.1.1」の提供が始まりました。パブリックDNSサービスはインターネットの利用者が無償で使えるフルリゾルバー(キャッシュDNSサーバー)のサービスです。パブリックDNSサービスといえば「8.8.8.8」で知られるGoogle Public DNSが有名ですが、2017年11月に提供を開始した「9.9.9.9」のQuad9 DNSも含め、2018年はパブリックDNSサービスに関する話題をよく目にする一年となりました。

インターネットのサービスではそれぞれの提供元により、アクセス情報の取り扱いが異なっています。Google Public DNSを提供するGoogleでは、個人を判別可能な情報やIPアドレスの情報を除いた上で、問い合わせた時間、ドメイン名/タイプ、通信プロトコル、位置情報などのアクセス情報を記録・保存しています。一方、1.1.1.1を提供するCloudflareでは、アクセス情報を1.1.1.1そのものの運用と研究目的以外に使わないことと、問い合わせ/応答の種類・総数・頻度、ユーザーの総数などの情報を取得した上で、24時間以内に消去することを表明しています。

番外編:好評発売中!JPRSの技術者が著者となった『DNSがよくわかる教科書』出版

2018年11月22日、JPRSの渡邉結衣、佐藤新太、藤原和典が著者となり、森下泰宏が監修者となった書籍『DNSがよくわかる教科書』がSBクリエイティブより出版されました。

『DNSがよくわかる教科書』は、インターネット技術に関わる初学者や、インターネット技術を基礎から学び直したい技術者を対象に、インターネットを支える重要な仕組みの一つであるDNSについて、周辺知識も含めて基礎から解説した書籍です。

JPRSは、DNSに興味を持ち、DNSの正しい知識を得ていただくことが、インターネットの安定運用につながるという考えのもと、本書の出版に協力しました。本書は、全国の書店及びオンライン書店などで購入できます。