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ドメイン名関連情報

2021年 ドメイン名重要ニュース

2021年の多くのニュースの中から、ドメイン名ニュース担当者が選んだ大きな話題を五つご紹介します。

1大手SNSなど複数のサービス DNSの運用ミスによる大規模障害が発生

2021年9月から10月にかけ、大手SNSなど複数のサービスにおいて、DNSの運用ミスに起因する大規模障害が相次いで発生しました。

2021年9月30日(日本時間10月1日深夜)、ビジネスコラボレーションツールを提供するSlackにおいて、世界的な接続障害が発生しました。本障害はドメイン名「slack.com」のDNSSECが有効にされた後、無効に戻された際の手順に不備があり、DNSSEC検証エラーが発生したことによるものです。

また、2021年10月4日(日本時間10月5日深夜)、世界最大のSNSサービスFacebookと、Facebook(現Meta)が運営するInstagram、WhatsAppにおいても、世界的な接続障害が発生しました。本障害は同社における通常メンテナンス時の操作ミスにより各地のデータセンターが孤立し、その影響により同社のDNSインフラネットワークの経路広告が停止されたことで、外部から接続できない状態に陥ったことによるものです。

いずれの障害も、世界的な接続障害が長時間に及んだため、大きな話題になりました。Facebookの障害では、障害発生時にスマートフォン版のFacebookアプリから大量のDNSトラフィックが発生したことで複数のフルリゾルバー(キャッシュDNSサーバー)が過負荷に陥り、他のドメイン名の名前解決の一部にも影響を及ぼした旨が報告されています。

運用ミスや災害・サイバー攻撃などによりそのドメイン名のすべての権威DNSサーバーにアクセスできなくなった場合、影響はそのドメイン名を使うすべてのサービスに及びます。今年発生した大規模障害は、DNSの信頼性を向上させ安定した名前解決サービスを提供し続けることの重要性を、改めて認識させられる出来事となりました。

2新型コロナウイルスの影響によるドメイン名業界関連会合・イベントのオンライン開催が継続 ハイブリッド開催に向けた動きも

2020年以降に新型コロナウイルス感染症拡大の影響で広がった、国内外におけるドメイン名業界の関連会合やイベントのオンライン開催・実施は、現在も続いています。

しかし、会場における担当者間の調整や参加者同士の交流、展示ブースでの製品やサービスの紹介といった場の重要性が改めて認識され、対策を実施の上、現地会場での開催を模索する動きも出てきています。

国内においては、「Interop Tokyo 2021」(4月)や「JANOG48 Meeting」(7月)など、インターネット関連の展示会やイベントが、オンライン会場と現地会場での開催を合わせた、ハイブリッド形式で開催されました。

国外においても、インターネット資源管理のポリシー及びそのルールについて検討する「ICANN会合」において、オンライン開催が続くことで面識のない参加者が交流しづらくなっているという懸念の声が上がっています。2022年3月に開催予定のICANN73会合ではハイブリッド開催に向けて検討が進められていたものの見送られ、オンライン開催のみとなりますが、2022年6月に実施予定のICANN74会合では、オンライン会場とオランダ・ハーグの現地会場のハイブリッド形式で開催に向けた検討が進められています。

新型コロナウイルスの影響については予断を許さない状況が続いており、関連会合・イベントも当面、オンラインでの開催が主流となりそうです。しかし、そうした状況においても関係者の間では、コミュニティ活動を活性化するための模索が2022年も引き続き行われていくと見られます。

3「.com」の値上げの動き

「.com」のレジストリであるVerisignは、2021年9月1日より、「.com」のレジストラ向け料金を7.85米ドルから8.39米ドルに値上げしました。

これまで、「.com」のレジストラ向け料金は、VerisignとICANNのレジストリ契約(.com Registry Agreement)によって年間の値上げ上限が設定されており、その金額は2012年1月以降、7.85米ドルに固定されていました。この制約が2020年3月の契約の修正で廃止され、毎年1回、前年比7%を上限とした料金の改定が可能になりました。

2012年以降に導入された1,200以上のgTLD(新gTLD)は、ICANNがレジストリコミュニティとの調整を経て定めたBase Registry Agreementに依拠したレジストリ契約を締結しています。Base Registry Agreementには、レジストラ向け料金に関する制約事項は含まれておらず、各レジストリは自身の裁量で料金を設定できます。

「.com」に代表される、2012年以前からあるgTLD(レガシーgTLD)は、gTLDごとに内容の異なるレジストリ契約をICANNとの間で締結しており、レジストラ向け料金の変更を制約する規定が含まれているgTLDもありました。2012年以降、レジストリ契約の期間満了を迎えたレガシーgTLDは契約更新の際に、Base Registry Agreementに依拠した内容のレジストリ契約に移行し、結果として、料金に関する制約が撤廃されたgTLD(.org、.biz、.infoなど)も出てきています。

今後も、ICANNは、レガシーgTLDのレジストリ契約更新の際、Base Registry Agreementに依拠した契約内容への移行を図っていくと考えられます。

4アジア太平洋地域におけるMルートサーバーの拠点追加

2020年から2021年にかけて、アジア太平洋地域におけるMルートサーバー(M-Root)の拠点増設が進みました。

ルートサーバーはDNSにおける名前解決の起点となる重要なサーバーで、AからMの13系統のサーバーが、世界中の1200以上の拠点で稼働しています。各系統は12の独立した組織が連携しながら運用しており、Mルートサーバー(M-Root)はWIDEプロジェクトとJPRSが、共同運用しています。

M-Rootの拠点は、これまで世界5都市(東京・大阪(日本)、ソウル(韓国)、パリ(フランス)、サンフランシスコ(米国))にありましたが、更なる安定と発展を実現するため、拠点の追加が進められています。

その一環としてJPRSとWIDEプロジェクトは、2020年にアジア太平洋地域内外のM-Root DNSサービスの拡充に協力して取り組むことをアジア太平洋地域の地域レジストリ(RIR)であるAPNICと合意し、覚書を締結しました。本覚書に基づく協力の下、同年12月にブリスベン(オーストラリア)、2021年10月にハノイ(ベトナム)の拠点を追加し、2021年11月末時点で、世界7都市の拠点で稼働しています。

本覚書に基づいて新たに設置されるM-Rootの拠点については、ルートサーバーのDNSサービスが十分でない地域や、インターネット接続の主要拠点などを優先的な候補としています。M-Rootの拠点が増加することで、当該地域のISPや利用者におけるDNSの到達性・障害回復力・応答時間が改善します。WIDEプロジェクト・JPRS・APNICは、本覚書に基づく協力の下、アジア太平洋地域を中心に、引き続きM-Rootの拠点展開を進めていく予定です。

5JP DNSサーバー初の「ローカルノード」導入

2021年7月12日、JPRSではJP DNSにおいて初となる、ローカルノードの運用を開始しました。

インターネットのサーバーノードにはインターネット全体にサービスを提供するグローバルノードと、接続されたネットワークのみにサービスを提供するローカルノードの2種類があり、それぞれの用途・目的に応じた形で使い分けられています。

今回、JPRSと北海道総合通信網株式会社(HOTnet)、株式会社QTnet(QTnet)は、北海道と九州にローカルノードを設置し、JP DNSサーバーを増強しました。ローカルノードとすることでそれぞれの地域内におけるサービスの安定化、地域外における障害や状況の変化による影響の軽減を図ると共に、アクセスがより多くのサーバーに分散され、JP DNSサーバー全体の安定性・信頼性が向上します。

なお、今回のローカルノードの導入は、JPRSと国内の通信事業者が2019年から2021年にかけて実施した実証実験の成果に基づいています。

番外編:JPRSがccTLDを楽しく学べるポスターを全国の教育機関へ無償配布

JPRSは、インターネットに関する教育支援活動の一環として制作したccTLDを一覧にしたポスター「旅するドメイン」を、全国の中学校・高等学校・高等専門学校など教育機関を対象に無償で配布しています。


この取り組みは、生徒たちが日常的に利用していながら、普段あまり意識することのないccTLDについて、ポスターというツールを用いて理解を深めてもらうことを目的に実施しているものです。

今回配布するポスターは、251種類のccTLDと各エピソードに加え、国や地域の特徴的な写真を掲載し、視覚的に楽しむことができるようになっています。写真から国を答えるクイズを行ったり、旅先やニュースで見聞きした国や地域のccTLDを探してみたりするなど、生徒同士で遊びながら学ぶ使い方もできます。

本ポスターについては、2021年12月15日(水)までお申し込みを受け付けていましたが、ご好評につき、12月24日(金)まで申し込みを受け付けます。配布をご希望の教育機関の方はぜひ関連リンクをご覧ください。