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ドメイン名関連会議報告

2004年

CENTR Administrative Workshop報告

~Whoisに関する最新動向 他~
2004/10/25
2004年10月11日と12日の2日間に渡り、ベルギーの首都ブリュッセルにてCENTR(Council of European National Top-Level Domain Registries)第5回Administrative Workshopが開催されました。

CENTRは、ヨーロッパのccTLDの管理組織(レジストリ)からなる組織で、JPRS は.jpのレジストリとして準メンバとなっています。CENTRでは、組織運営、技術、法務等のテーマによってそれぞれ専門グループが構成され、その中でAdministrative Workshopは主にドメイン名の登録管理業務に関する課題と解決策の共有に取り組んでいます。

今回のAdministrative Workshopには、19カ国のレジストリからのメンバーと、欧州委員会、イタリアのレジストラからのゲストを加えた33名が参加し、Whois、レジストラ向け行動指針(Code of Conduct:以下COCと略す)、レジストリインタフェースなどといった多岐に渡るテーマに対して、活発に情報交換と議論を行いました。

以下、Whoisとレジストラ向けCOCを中心に、第5回Administrative Workshopにおける各テーマに関する発表の概要をご報告します。

Administrative Workshopの様子
Administrative Workshopの様子(Hyatt Regency Brussels-Barsey, Brussels)

Whois

Whoisは、インターネットユーザ同士の自律的なトラブル解決を目的として、ドメイン名の登録情報を公開するものです。しかし、個人がドメイン名を登録することで、登録情報の中に個人情報も含まれるようになってきており、その情報の保護を求める要請も出てきているのが現状です。そのため、公開の原則と個人情報の保護をどう両立させていくか、ということが、現在世界中で大きな課題となっています。また、インターネットユーザの裾野が広がってきたことに伴い、自律的なトラブル解決を目的としたWhoisの提供が果たして有効かどうかという点も課題のひとつです。今回のAdministrative Workshopでは、こうしたWhoisに関する課題と解決策の共有を促進するために、JPRSから議題の提案を行っており、日本、オランダ、ハンガリーの3ヶ国から発表が行われました。

まず日本からJPRSが、Whoisへの連続アクセス機能の停止や、最終更新者の電子メールアドレスの非公開化、公開連絡窓口の住所記載の任意化など、Whoisの目的外利用の防止や個人情報の保護に関する取り組みについて発表しました。また、課題として虚偽の情報が登録されることや、登録情報が適切に更新されないこと、商用のデータ収集にWhoisが悪用されてしまうことを挙げました。最後に、連絡窓口の電話番号の公開や、登録者との公開に関する合意を検討中の事項として発表した上で、個人情報の保護とトラブル時の解決に関わる利便性とのバランスを、レジストリとして取っていく必要がある旨を述べました。

オランダからは、Whoisそのものの定義を改めて行った際の経験を中心とした発表がありました。この中では具体的に、ネットワークトラブルの解決、ドメイン名申請のための登録情報の確認や知的財産権保護のための監視、法的に問題のあるWebコンテンツへの対処といった利用者側からの観点と、情報保護といった登録者側からの視点、さらに、プロトコルとしてのWhoisと機能としてのWhoisを明確に分けて議論すべきであると述べられました。最後に、Whoisに関しては“one size fits all”的な解決策はなく、バランスを考慮しながら仕様を決めるべきだとまとめられました。

ハンガリーからは、Whoisに関するプライバシー問題を中心とした発表がありました。この中で、対処法として、登録規則で登録情報が公開されることを定め、情報の検索時には著作権と利用条件の説明ページを表示することが述べられました。その他ハンガリーは、Whoisでメールアドレスを公開するのは技術連絡担当者のみ、登録担当者は法人でも可、など、RIPE(Reseaux IP Europeens)で過去に議論された方針には沿わない独自の仕様も設けています。また、法人と個人でWhoisのポリシーが異なっており、個人の場合、名前以外の個人情報はWhoisでは公開しないという点も特徴的でした。

Whoisについてはいずれの国でも議論が盛んなため、多くの質問が飛び交いました。最後には、参加者すべてが自国のWhoisについて簡単に発表し、各国の独自の工夫を共有することができました。また、今後CENTR事務局から、Whoisに関する情報共有のための調査が行われることになりました。この調査結果は、今後各国で、課題の解決に役立つものとなりそうです。

レジストラ向けCOC

今回の会議でWhoisの次に注目を集めたテーマは、レジストラ向けのCOCです。ほとんどのレジストリが、レジストリとレジストラ、レジストリと登録者に関する取り決めを持っていますが、レジストラと登録者に関する明確な取り決めは行っていません。そのような状況の中、登録者保護の観点からレジストラの登録者向けサービスにCOCを設けるべきか国際的な場でもよく議論されるようになってきました。

まずはじめに、すでにCOCを持つベルギーから、概要や制定のプロセスの詳細、導入後の効果が発表されました。計画から実現まで2年近くかかり、3年たった今も引き続き改善の途にある大きなテーマであり、膨大なコストと時間、登録者保護を重視するレジストラの多大な協力が必要であることが説明されました。それらのレジストラは、レジストリのWebサイトで「domain ethix」というロゴを用いて紹介されています。現在では40%~45%のレジストラと取り決めを交し、約55%のドメイン名がカバーされているとのことです。

次にオランダから、敷居の低いレジストラ認定基準の導入の影響について発表がありました。現在、オランダのccTLDである.nlでは約125万件のドメイン名が登録されていますが、この基準の導入によって登録数は伸びたものの、短期間に約1800のレジストラが生まれ、レジストリとレジストラのコミュニケーションが困難になっているとのことでした。またその結果、レジストラ、登録者向けのサービスの品質を保証することがたいへん難しくなっているそうです。そのため今後はレジストラ向けの最低管理ドメイン名数の設定、COCの制定、レジストラ資格維持のための年会費の値上げ、レジストラ契約の厳格化等の対策を講じていくとのことです。

現在はまだCOCを設けているレジストリは多くありませんが、今後はこうした先例の共有を通じ、登録者保護の観点からの取り組みが増えていくものと考えられます。

その他

その他のテーマとして、レジストリインタフェースに関するデモンストレーションやアクセスビリティーの改善、メンバーレジストリのサービスに関する調査結果などについての発表や議論が行われました。

レジストリインタフェースについては、日本の他、イギリス、オーストリア、スロベニア、イタリア、CENTR事務局から発表がありました。いずれの場合にも、登録者向けのサービス向上に役立つインタフェースの改善を優先する点が共通しており、また登録数の多いレジストリほど機能が充実していました。

CENTR事務局からは、メンバーレジストリのサービスに関する調査結果が発表されました。調査に参加したレジストリのうちの78%がレジストラ部門を持ち、70%が即時登録の仕組みを提供、さらに55%が定期的にレジストラの資格審査を行っているなど多彩なデータが集まり好評でした。これらは今後、各国でのサービス改善に役立てられていきます。

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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