ドメイン名関連会議報告
2007年
IDN TLD導入に関する最近の動き
~ ccTLDにおける最新動向 ~
2007/07/20
2003年にRFC 3490~3492として標準化された国際化ドメイン名(IDN)は、こ
れまで各トップレベルドメイン(TLD)ごとに、個別に展開が図られてきまし
た。つまり.jpや.comといった、IDNが第2レベル(SLD)に使用され
る形になります。
こうした動きを受けて、これまでIDNを積極的に導入してきた非英語圏のユーザを中心に、SLDだけでなくTLDにおいてもIDNを利用したいという要求が高まり、そのための調整活動が関連する国際会議の場で行われてきました。
特に、2007年3月に開催されたICANNリスボン会合でICANN CEOのPaul Twomey 氏が「IDN(TLD)に関する検討や技術検証は順調に進んでおり、2007年末もし くは2008年には導入可能となる」と発言し、その機運が急速に高まりました。 それを受ける形で2007年6月にICANN RSSACからも「IDN TLD導入にあたり、通 常のNSレコードを用いる方式であれば技術的な課題は無い」旨の公式文書がま とめられる等、IDN TLDの導入に向けた動きが活発になっています。
今回のFROM JPRSでは、IDN TLD導入に向けたさまざまな動きのうち、特にccTLDにおけるIDN TLD導入に関する最新動向についてお伝えします。
こうした動きを受けて、これまでIDNを積極的に導入してきた非英語圏のユーザを中心に、SLDだけでなくTLDにおいてもIDNを利用したいという要求が高まり、そのための調整活動が関連する国際会議の場で行われてきました。
特に、2007年3月に開催されたICANNリスボン会合でICANN CEOのPaul Twomey 氏が「IDN(TLD)に関する検討や技術検証は順調に進んでおり、2007年末もし くは2008年には導入可能となる」と発言し、その機運が急速に高まりました。 それを受ける形で2007年6月にICANN RSSACからも「IDN TLD導入にあたり、通 常のNSレコードを用いる方式であれば技術的な課題は無い」旨の公式文書がま とめられる等、IDN TLDの導入に向けた動きが活発になっています。
今回のFROM JPRSでは、IDN TLD導入に向けたさまざまな動きのうち、特にccTLDにおけるIDN TLD導入に関する最新動向についてお伝えします。
APTLD会合の様子
ccTLDにおける動き
~ Fast Tracking IDN implementation ~
2007年6月21日にアジア太平洋地域のccTLDの連合体であるAPTLD(Asia PacificTop Level Domain Association)が、ICANNに対する意見書として「IDN TLDに関するポジションペーパー」を公開しました。この意見書は2007年6月3日から4日にかけて開催されたAPTLDドバイ会合、およびその後のメーリングリストでの意見交換を経て、APTLD全体の意見としてまとめられたものです。
この意見書の主旨は以下の通りです(原文は、本号の最後にご紹介しております「関連URI」をご参照ください)。
- アジア太平洋地域のccTLDがそれぞれを表す国・地域に資するため、APTLDはICANNに対し、以下2つのシンプルな手順をもってIDN TLDを限定的に導入するよう要請する。
- 現在のccTLD管理組織はその国・地域に特化した「一個の」ccTLDを、その国または地域で認知された非ASCIIスクリプト(文字)で管理できるようにする。その文字列は、そのccTLDのローカルインターネットコミュニティで決定されるであろう。APTLDは、この方法が複数の非ASCIIスクリプトを持ついくつかのccTLDの需要を満たさないことを認識しており、今後そうした需要に応じられるような対策も検討したいとも考えている。
- 国際的なコミュニティ向けに6ヵ月のコメント期間を設け、上記1.によって選択された文字列がそのccTLDにとって適切でない場合に意義を申し立てられるようにする。これにより、不適切な文字列が選択されることがなくなるであろう。
この意見書にはヨーロッパ地域のccTLDの連合体であるCENTR(Council of European National Top-Level Domain Registries)が賛意を表明しており、2007年6月26日に開催されたICANNサンファン会合のccNSO(Country Code NamesSupporting Organization)会議において紹介されました。ccNSO会議ではこの意見書の内容が支持されましたが、APTLDおよびCENTR以外の地域ccTLD 連合体、すなわちLACTLDおよびAFTLDにおける検討が進行中であるため(*1)、その完了を待ってからICANN理事会に提出することとなりました。
- (*1)
- 北米地域の地域ccTLD連合体は現在ありません。
ICANNにおける動き
~ IDN ccTLD導入に関する課題 ~
4月17日にお届けしたFROM JPRS増刊号「ICANNリスボン会合報告(第2回)」で 報告しましたように、ICANN ccNSOではIDN TLDの導入に向けてIDN WGを作り、 GAC(Governmental Advisory Committee: 政府諮問委員会)と協力して、IDN TLDの導入により考慮すべき課題の整理と抽出を行ってきました。
2007年6月25日に開催されたICANNサンファン会合において、ccNSOとGACはこれまでに抽出された課題リストについて最終的に合意し、合意内容を文書としてまとめ、ICANN理事会に提出しました。これらの課題は今後、ccNSO、GACが中心となり、ICANNの場で検討が継続されることになっています。
合意内容は以下の通りです。
- 一般的な課題
- IDN ccTLDはどういう国・地域に対応するものとすべきか
- IDN ccTLDとして用いるラベルは、意味があるものであるべきか
- 1つのccTLDにおいて、1つの文字種に対してIDN ccTLDはいくつか
- 1つの地域に対して、IDN ccTLDを作る文字種はいくつか
- IDN ccTLDのラベルの長さはどうするか
- 与えられた文字種に対して、何らかの権利が付与されるものとするか
- 導入に関する課題
- IDN ccTLDラベルのリストは、強制されるべきか
- IDN導入の仮定でどんな優先権をccTLDに与えるべきか
- 強制されるリストがない時、誰が使うIDN ccTLDラベルを選択するのか
- IDN ccTLDの展開に対してどのようなコーディネーションが行われるべきか
- 委任に関する課題
- 既存のccTLD委任のポリシーは、IDN ccTLDに対して適用されるか
- 運用に関する課題
- 一般的なIDN標準に加えて、既存のASCII TLDと異なる技術的な要求事項はあるのか
もしそれがある場合どのようにそれらを開発し、また誰がそれらを開発するのか
- 一般的なIDN標準に加えて、既存のASCII TLDと異なる技術的な要求事項はあるのか
IDN ccTLDの導入に向けたアプローチ
IDN ccTLDの導入に向けたアプローチはそれぞれの立場により、若干の相違点があります。APTLDやCENTRでは、まず既存のccTLDレジストリを対象にIDN ccTLDを限定的に導入することで問題点の洗い出しを行い、その結果をもとに以降のステップについて考慮しようというものです。それに対しICANN ccNSOではIDN ccTLDの導入の際に想定される課題の明確化や問題点の共有を先行して行い、その後、それぞれの課題について解決を図ろうという立場をとっています。
いずれの立場においてもIDN ccTLDの導入のためには問題点の明確化とその解決が重要なポイントであり、継続的な検討が必要であるという点では共通しています。
FROM JPRSは今後もIDN TLDに関連する最新動向を、皆様にお伝えしていきます。
本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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