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ドメイン名関連会議報告

2023年

[第76回ICANN会合報告] SSAC公開セッションから「名前衝突分析プロジェクト」の活動状況について

本記事では、第76回ICANN会合における技術関連の話題として、SSACの公開セッションで報告された、名前衝突分析プロジェクト(Name Collision Analysis Project:NCAP)における検討状況についてご紹介します。

NCAPとは

2012年の新gTLD創設に伴い、組織内で利用中の既存の名前がインターネット上のドメイン名と衝突する、名前衝突の問題が顕在化しました。ICANNは名前衝突の危険性が高い「.home」「.corp」「.mail」の委任を無期限に延期し、名前衝突問題に関する調査を実施しました[*1]

その後、ICANNはgTLDの次回募集を念頭に、名前衝突に関する分析と、その結果に基づいたアドバイスをSSACに依頼しました。NCAPはそのためのプロジェクトとして、SSAC内に設置されました。

NCAPでは、gTLDの申請文字列に関する名前衝突のリスクを評価し、対応するための枠組みの策定を進めています。この枠組みは、今後のgTLDの募集で使われます。

[*1] JPRSは2016年に、ICANNが公開した名前衝突問題に関する最終報告書の解説書を作成・公開しました。
IT専門家のための名前衝突の確認および抑止方法ガイド

NCAPにおける検討状況

公開セッションではNCAPの共同チェアより、DNSクエリの分析結果から名前衝突はますます難しく、かつ影響の大きな問題となっていること、さまざまな観点から委任のリスクを評価し、名前衝突の問題に対応するための測定対象(Critical Diagostic Measurements:CDMs)として、以下を定義したことが報告されました。

  • クエリの分量(Query Volume)
  • クエリ送信元の多様性(Query Origin Diversity)
    • IPアドレスの分布
    • AS番号の分布
  • クエリタイプの多様性(Query Type Diversity)
  • ラベルの多様性(Label Diversity)
  • その他の特徴(Other Characteristics)
    • OSINT[*2]を活用

その上で、独立した中立の専門家で構成される技術レビューチーム(Technical Review Team)と、技術レビューチームに計測データを提供する中立サービスプロバイダー(Neutral Service Provider)により、gTLDの申請文字列に関する名前衝突のリスクを評価する手順を策定中である旨が報告されました。

最後に、本件の議論に参加する方法[*3]と、次回のICANN77会合の前に手順を公開し、本件に関するレポートのパブリックコメントを実施予定である旨が共有されました。

[*2] Open Source Intelligence:一般公開されている情報を分析し、独自の情報を読み取る手法。

[*3] Sign Up Form & Acknowledgment of Terms