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メールマガジン「FROM JPRS」
本内容は、会場写真を加えたWebページからもご覧いただけます。 https://jprs.jp/related-info/event/2022/0708icann.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2022/07/08━ ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.204 ◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ___________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 第74回ICANN会合報告 ~ccTLD関連の話題を中心に~ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2022年6月13日から16日にかけて、第74回ICANN会合(ICANN74)がオランダの ハーグに設けられた会場とオンラインのいずれでも参加可能なハイブリッド形 式で開催されました。ハイブリット形式はICANN会合では初で、対面参加が可 能な会場が設けられたのは2019年11月のICANN66以来、2年7カ月ぶりとなりま す。 今回の会合は、年3回開催されるICANN会合のうち2回目に当たる「ポリシー フォーラム」[*1]です。ICANNの発表によると101の国と地域から、対面917人、 リモート900人が会合に参加しました。 会場ではワクチン接種証明の提示・毎日の検温・会場内でのマスク着用が必須 とされ、参加者同士の適切な距離の保持・会議室の椅子の間隔確保など、複数 の感染対策を取った上で、会合が開催されました。 また、会場での新たな試みとして、参加者が選択可能な3色のネックストラッ プが準備され、着けているネックストラップの色で自身が希望するコミュニ ケーション方法(赤:ソーシャルディスタンスを保つ、黄:肘タッチ、緑:握 手)を示すという取り組みが行われていました。 なお、会合で議論される項目の状況を紹介し、議論に備えるためのPrep Week は、前回のICANN73と同様にオンラインで開催されました[*2]。 [*1] ICANN会合は、規模や内容の異なる三つの形式(MEETING A~C)をロー テーションして開催されます。本会合は「コミュニティフォーラム」の MEETING Bに該当します。 https://meetings.icann.org/en/future-meeting-strategy [*2] ICANN74 Prep Week Schedule Now Available https://www.icann.org/en/announcements/details/icann74-prep-week-schedule-now-available-16-05-2022-en 今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿ってご紹介します。 (1)ccTLD関連の話題 - ccPDP関連の話題 - ccNSOのガバナンスに関する議論 - SOPCの活動に関する議論 - DNS Abuseに関する話題 (2)その他の話題 - ルートサーバー関連の話題 - 技術関連の話題 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (1)ccTLD関連の話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ccPDP関連の話題 IDN ccTLDについては、2009年より開始されたIDN ccTLDを限定的に迅速導入す るための「ファストトラックプロセス」による申請受け付けが行われてきてい ます。それと並行して、正式導入のために必要となる「ポリシー策定プロセス (ccPDP)」の検討が行われている状況です。 ICANN74のccNSO[*3]ポリシーセッションでは、委任終了のプロセス及びそのプ ロセスのレビューに関するポリシーを検討するccPDP3と、IDN ccTLDとして申 請する際の要件を検討するccPDP4について、検討状況が報告されました。 ccPDP3では検討内容を二つに分けて進めています。Part1の「委任終了のプロ セス」は、2021年7月のポリシー変更に関するccNSOの会員投票を経て、2022年 2月に意見募集が完了しました。現在、ポリシー変更案はICANN理事会で審議さ れています。Part2の「ccTLDの委任、移管、解約、委任終了の判断に対するレ ビューメカニズム」は、レビューに要するコストや期間、手続き、レビューを 行うパネルのパネリストの要件などについて意見交換が行われています。次回 (ICANN75)の前に最終案を完成させることを目標として議論が進んでいく予 定です。 ccPDP4ではポリシーを検討する上で重視している点について紹介が行われた他、 IDN ccTLDが廃止となる際のトリガーイベントや、異体関係にある文字列への 対応に関するサブグループからの検討状況が共有されました。検討上重視して いることの中でも、特に「国・地域ごとに運用可能なIDN ccTLDの数に基準を 設けるべきか」という点について活発な議論が行われたことが共有されました。 [*3] Country Code Names Supporting Organisationの略称。 ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体としてICANN の他の支持組織や委員会などと協調しながら、ccTLD全体にまたがるグ ローバルな課題についてポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告を行 う役割を担います。 ▼ccNSOのガバナンスに関する議論 今回のICANN74のccNSOメンバー会合においても「ガバナンスセッション」が開 催され、今後予定しているccNSOの運営に関する規則の変更について紹介があ りました。この変更は、IDN ccTLDがccNSOに入会できるようにICANN Bylawsが 改定されたことに伴うものです。また、前回のICANN73に引き続き、ccNSOに おける「Statement of Interest(利害関係報告)」の導入及び「Conflict of Interest(利益相反)」のルール化に関する検討状況の報告と意見交換が行わ れました。 ▼SOPCの活動に関する議論 SOPC(Strategic and Operational Planning Standing Committee)[*4]は、 ccTLDがICANNの戦略及び活動計画と予算策定プロセスにより深く関与するため に、2008年にccNSOのWGとして設置(2017年にCommitteeに改組)され、これま でICANNの5カ年戦略計画及び年次の活動計画及び予算に対するコメント募集に おいて積極的に意見を表明してきました。JPRSからは遠藤淳が2010年~2012年 及び2019年以降、メンバーとして活動に参加しています。 ICANN74では、SOPCの活動の方向性に関するセッションが開催されました。 2021年末にSOPCのChairとVice Chairが交替となったことを機会に、活動の在 り方について改めて議論されるようになりました。この背景には、SOPCの設置 から10年以上経って次のように状況が変化したことがあります。 1. ICANNが2022年度の活動計画・予算策定から、コミュニティと共に立案する 新たなプロセスに取り組み始めたこと 2. ICANNの活動計画の内容や予算規模が大きくなったこと 年度 計画書の総ページ数 予算規模 ---------------------------------------------------- 2010年 35ページ USD 55M(約71億5千万円) 2023年 300ページ超 USD 170M(約221億円) ---------------------------------------------------- 3. SOPC以外に、ICANNの支持組織(Supporting Organization:SO)や諮問委 員会(Advisory Committee:AC)からも活動計画や予算に対して意見を出 すグループが出てきたこと SOPCでは、ICANNの活動計画や予算のすべてのことに広く浅く意見を出すので はなく、ccTLDとして関与すべき事項や、ICANN自体が健全で安定的な組織であ るために重要な事項に焦点を当てて、ccTLDの立場から質の高いインプットを 行っていくべきという考え方がセッション参加者の支持を集めました。 [*4] ccNSO Strategic and Operational Planning Standing Committee https://ccnso.icann.org/en/workinggroups/sopiwg.htm ▼DNS Abuseに関する話題 ICANN74では「ccTLD Role in DNS Abuse Policies」というセッションタイト ルで、五つのccTLDレジストリから、DNS Abuseに対する取り組みについて紹介 がありました。 多くの発表者間で類似していたのは、ドメイン名新規登録時に独自のナレッジ に基づいて登録情報の正確性をチェックすることや、ドメイン名に対処を行う 際は登録者から取り次ぎを行ったレジストラを通じて登録者とコミュニケーシ ョンを取ることです。 このセッションの内容は、今後の活動の参考とするべく、前回のICANN会合 (ICANN73)後に発足したccNSO DNS Abuse Standing Committee(DASC)[*5] にインプットされることになります。 [*5] ccNSO DNS Abuse Standing Committee(DASC) https://ccnso.icann.org/en/workinggroups/dasc.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (2)その他の話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ルートサーバー関連の話題 RSSAC[*6]、RSSAC Caucus[*7] 及びRSS GWG(Root Server System Governance Working Group)は、普段から定期的に会合を開催し、その定常的な会合の一 部をICANN会合のプログラムに組み込む形をとっています。 ICANN74ではRSSAC本体の会合、RSSAC Caucusメンバーも入った形での作業セッ ション、RSS GWGの会合が開催されました。 RSSACでは、ルートサーバー運用品質の基本的な指針を記した2件のRSSAC文書 (RSSAC001、RSSAC002)について、RSSAC CaucusのWork Partyを構成して文書 の見直しを検討することが合意されました。 また、2022年3月からRSS GWGの活動が再開しています。以前は全12のRSOのう ち三つのRSOが検討に参加する体制でしたが、前回のICANN会合(ICANN73)後に 全12のRSOを入れた新体制となりました。新体制で初めての会合となった ICANN74では、誰でも傍聴できる形でセッションが開催され、RSSのガバナンス 体制について議論が行われました。これらの議論は、将来的にICANN理事会へ の提案書としてまとめられていく予定です。 [*6] JPRS用語辞典|RSSAC(アールエスエスエーシーまたはアールエスサッ ク) https://jprs.jp/glossary/index.php?id=0054 [*7] RSSAC CaucusはRSSACの全メンバーとRSSACが任命したメンバーで構成さ れており、報告書や勧告などのRSSAC文書を作成する役割を担います。 ▼技術関連の話題 技術系セッションとして、DNSSECとDNSセキュリティに関して議論するDNSSEC and Security Workshop、レジストリ・レジストラの技術的取り組みを紹介す るHybrid TechDay、ドメイン名やインターネット資源のセキュリティに関する ICANNコミュニティ及び理事会への勧告を行うSSACの公開セッションなどが行 われました。 本号ではDNSSEC and Security Workshopで発表された「Updating Secure Delegations in the DNS Root Zone」の内容についてご紹介します。 ▽ルートゾーンにおけるDSレコードの登録管理の状況と今後の展望 PTI[*8]のKim Davies氏から、ルートゾーンにおけるDSレコードの登録管理の 状況と、今後のアイディアに関する検討状況が発表されました。 DSレコードはDNSSECの信頼の連鎖を構築するためのリソースレコードで、子 ゾーンの管理者が親ゾーンに設定を依頼します。ルートゾーンにおけるDSレ コードの登録管理には、IANAがTLD運用者に提供するルートゾーン管理システ ム(Root Zone Management System:RZMS)が使われています[*9]。 PTIでは現在、新gTLDプログラムによるTLD数の大幅な増加、TLDレジストリか ら運用を請け負って数多くのTLDを運用するレジストリサービスプロバイダー の出現など、RZMSの開発当時にはなかった新しい状況に対応するため、次世代 のRZMSの開発を進めています[*10]。 発表では、次世代のRZMSに含まれる内容として、新しい認証モデルの導入や責 任分界点の見直し、また、今後リリース予定の内容として、多要素認証の導入 や高ボリュームの更新にフォーカスしたAPIの導入などを予定している旨が報 告されました。 また、将来に向けた検討項目として、DSレコードに設定可能なアルゴリズムの 追加・削除やDNSKEYレコードとの照合、TLDゾーンの設定の監視を挙げ、その 一環として、CDS/CDNSKEYレコード[*11]によるDSレコードの自動更新と、 CSYNCレコード[*12]によるNSレコードとグルーレコードの自動同期が示されま した。 そのうち、CDS/CDNSKEYレコードへの対応についてはこれまで要望がなかった ため、優先度を上げていなかった旨が示されましたが、その瞬間にワークショ ップに参加していた複数のTLD運用者からは、要望がある旨がチャットで寄せ られていました。 [*8] ICANNの子会社で、Public Technical Identifiersの略称です。ドメイン 名、IPアドレス、プロトコルパラメーターなどのインターネット資源を 管理するIANA(Internet Assigned Numbers Authority)の役割を担って います。 https://pti.icann.org/ [*9] Manage the Root Zone https://www.iana.org/help/rzm-system [*10] Ushering in the Next Generation of Root Zone Management https://www.icann.org/en/blogs/details/ushering-in-the-next-generation-of-root-zone-management-19-05-2022-en [*11] RFC 8078で定義されるリソースレコードです。親ゾーンの管理者がDNS クエリで子ゾーンのCDS/CDNSKEYレコードの存在をチェックし、設定さ れていた場合に対応する自分のDSレコードを自動更新することで、更新 を自動化できます。 [*12] RFC 7477で定義されるリソースレコードです。親ゾーンの管理者がDNS クエリで子ゾーンのCSYNCレコードの存在をチェックし、設定されてい た場合はその内容に従って自分のNSレコードとグルーレコードを、子 ゾーンのものと同期します。 ■次回のICANN会合 第75回ICANN会合は、2022年9月17日から22日にかけてマレーシアのクアラルン プールで開催される予定です[*13]。新型コロナウイルスの影響を踏まえて、 開催形式は変更となる可能性があります。 [*13] ICANN75 Annual General Meeting Location Announced https://www.icann.org/en/announcements/details/icann75-annual-general-meeting-location-announced-7-8-2020-en ◇ ◇ ◇ ◎関連URI - ICANN74 | Virtual Community Forum https://74.schedule.icann.org/ (第74回ICANN会合公式ページ) - Announcements - ICANN https://www.icann.org/news/announcements (ICANNのアナウンス一覧ページ) - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation https://ccnso.icann.org/workinggroups/ (ccNSOのWG紹介ページ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━ ■会議報告:https://jprs.jp/related-info/event/ ■配信先メールアドレスなどの変更:https://jprs.jp/mail/henkou.html ■バックナンバー:https://jprs.jp/mail/backnumber/ ■ご意見・ご要望:from@jprs.jp 当メールマガジンは、Windowsをお使いの方はMSゴシック、macOSをお使いの方 はOsaka等幅などの「等幅フォント」で最適にご覧いただけます。 当メールマガジンの全文または一部の文章をWebサイト、メーリングリスト、 ニュースグループ、他のメディアなどへ許可なく転載することを禁止します。 また、当メールマガジンには第三者のサイトへのリンクが含まれていますが、 リンク先のサイトの内容などについては、JPRSの責任の範囲外であることに ご注意ください。 その他、ご利用に当たっての注意事項は読者登録規約にてご確認ください。 https://jprs.jp/mail/kiyaku.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS) https://jprs.jp/ Copyright (C), 2022 Japan Registry Services Co., Ltd. ※更新履歴 2022/07/25 一部修正