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メールマガジン「FROM JPRS」

バックナンバー:vol.206

本内容は、会場写真を加えたWebページからもご覧いただけます。
https://jprs.jp/related-info/event/2022/1025icann.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2022/10/25━
                    ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.206 ◆
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                          第75回ICANN会合報告
                     ~ccTLD関連の話題を中心に~
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2022年9月17日から22日にかけて、第75回ICANN会合(ICANN75)がマレーシア
のクアラルンプールに設けられた会場とオンラインのいずれでも参加可能なハ
イブリッド形式で開催されました。

会場では前回のICANN74同様、ワクチン接種証明の提示・毎日の検温・会場内
でのマスク着用が必須とされ、参加者同士の適切な距離の保持・会議室の椅子
の間隔確保など、複数の感染対策が取られていました。

なお、会合で議論される項目の状況を紹介し、議論に備えるためのPrep Week
は、前回のICANN74と同様にオンラインで開催されました[*1]。

今回の会合は、年3回開催されるICANN会合のうち3回目に当たる「ICANNの年次
総会(Annual General Meeting:AGM)」[*2]です。ICANNの発表によると112
の国と地域から、対面1,165人、リモート792人が会合に参加しました。

ICANN理事会[*3]は、広範囲な地域・分野からの代表20名によって構成され、
開かれた透明性のあるプロセスに基づいて意思決定を行います。年次総会であ
る本会合において、任期満了となった理事の退任と新たな理事の就任、また理
事長と副理事長の交代がありました。

・理事の交代

  [選出母体]    [退任]                     [新任]
 - NomCom         Mandla Msimang(南アフリカ) Chris Chapman(豪州)
                  Ihab Osman(スーダン)       Sajid Rahman
                                               (バングラデシュ)
 - ASO            前村昌紀(日本)             Christian Kaufmann
                                               (ドイツ)
 - RSSAC          Kaveh Ranjbar(イラン)      Wes Hardaker(米国)

・理事長及び副理事長の交代

  [役職]        [前]                       [新]
 - 理事長         Maarten Botterman            Tripti Sinha
                  (NomCom選出:オランダ)     (NomCom選出:米国)
 - 副理事長       Leon Sanchez                 Danko Jevtovic
                  (At-Large選出:メキシコ)   (NomCom選出:セルビア)

[*1] ICANN75 Prep Week Schedule Now Available
     https://www.icann.org/en/announcements/details/icann75-prep-week-schedule-now-available-25-08-2022-en

[*2] ICANN会合は、規模や内容の異なる三つの形式(MEETING A~C)をロー
     テーションして開催されます。「ICANNの年次総会」はMEETING Cに該当
     します。
     https://meetings.icann.org/en/future-meeting-strategy

[*3] ICANN Board of Directors
     https://www.icann.org/resources/pages/board-of-directors

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿ってご紹介します。

(1)ccTLD関連の話題
      - ccPDP関連の話題
      - DNS Abuseに関する話題

(2)その他の話題
      - ルートサーバー関連の話題
      - Root LGR関連の話題
      - 技術関連の話題

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(1)ccTLD関連の話題
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▼ccPDP関連の話題

ccNSO[*4]は、ccTLD全体に及ぶグローバルな課題についてポリシー案を策定し、
ICANN理事会に勧告を行う役割を持つ組織であり、これを実現するための「ポ
リシー策定プロセス(ccPDP)」が定められています。

ccPDP3では、Part1「委任終了のプロセス及びそのプロセスのレビューに関す
るポリシー」とPart2「ccTLDの委任、移管、解約、委任終了の判断に対するレ
ビューメカニズム」の二つに分けて検討を進めています。

ICANN75のccNSOポリシーセッションでは、このうちのPart1について報告が行
われました。2021年7月のポリシー変更に関するccNSOの会員投票を経て、2022
年2月に意見募集が完了し、ICANN理事会で承認されました。これにより、本活
動は終了しました。

Part2については、検討案の照会セッションが設けられ、ccNSOメンバーの検討
案に対する確認がオンラインツールを通じて行われ、賛同が大勢を占めること
となりました。この結果を踏まえ、今後も議論が進んでいく予定です。

[*4] Country Code Names Supporting Organisationの略称。
     ICANNの活動を支える支持組織の一つです。ccTLDの連合体としてICANN
     の他の支持組織や委員会などと協調しながら、ccTLD全体にまたがるグ
     ローバルな課題についてポリシー案を策定し、ICANN理事会に勧告を行
     う役割を担います。

▼DNS Abuseに関する話題

ICANN73後に発足したccNSOにおけるDNS Abuseに対するロードマップ作成を担
うccNSO DNS Abuse Standing Committee(DASC)[*5]は、ccNSOとGAC[*6]の会
合にて、DASCの活動方針を以下の計画と見解と共に共有を行い、ccNSO及び
ccTLDのDNS Abuseに関する取り組みの理解促進に努めました。

・ccTLDに対して、DNS Abuseに関するccTLDの取り組みや傾向について広く
  調査を実施し、その結果をccTLDコミュニティ内外に伝える予定であること

・ccTLDがDNS Abuseに関する議論に対して静かなのは、各ccTLD独自で取り組
  みを行っていること、DNS Abuse自体が大きな問題になっていないことなど
  が理由として挙げられること

調査実施に対するGACからの関心は高く、調査の内容作成に対するGACの関与の
可能性や、DNS Abuseの定義についてccTLDはどう捉えているか、などの質問が
ありました。

[*5] ccNSO DNS Abuse Standing Committee(DASC)
     https://ccnso.icann.org/en/workinggroups/dasc.htm

[*6] JPRS用語辞典|GAC(ギャック)
     https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0022

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(2)その他の話題
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▼ルートサーバー関連の話題

RSSAC[*7]、RSSAC Caucus[*8]及びRSS GWG(Root Server System Governance
Working Group)は、普段から定期的に会合を開催し、その定常的な会合の一
部をICANN会合のプログラムに組み込む形が取られています。

RSSACでは、ルートサーバー運用品質の基本的な指針を記した2件のRSSAC文書
(RSSAC001、RSSAC002)について、RSSAC CaucusのWork Partyを構成して文書
の見直しを検討しています。

RSSAC001は2015年の発行から時間が経っており、現在のRSSACの視点での修正
を行うこととしました。記載された内容をどこまで必須でやるべきかといった
点の表現があいまいであるとの指摘があり、これを見直すものです。また、
RSSAC026(RSSAC Lexicon)で定めた用語を利用し、RSSAC002とも言葉の整合
性を取ることとなりました。

なお、RSSAC001に深く関連する文書として、DNSでのルートサーバーのプロト
コルと展開に関する要件を定めたRFC 7720(DNS Root Name Service Protocol
and Deployment Requirements)があり、RSSAC001の更新と合わせて見直しの
検討をIAB[*9]に対して促すこととなりました。

[*7] JPRS用語辞典|RSSAC(アールエスエスエーシーまたはアールエスサッ
     ク)
     https://jprs.jp/glossary/index.php?id=0054

[*8] RSSAC CaucusはRSSACの全メンバーとRSSACが任命したメンバーで構成さ
     れており、報告書や勧告などのRSSAC文書を作成する役割を担います。

[*9] JPRS用語辞典|IAB(アイエービー)
     https://jprs.jp/glossary/index.php?id=0025

▼Root LGR関連の話題

ICANN75では、Root Zone LGR-v4及び2022年5月に公開されたRoot Zone LGR-5
の完成を祝い、新たに追加された、日本語・韓国語・中国語を含む9言語の
Generation Panelの知見共有などを行うセッションが設けられました。

セッション開催に当たり、事前にICANN会場から参加するGeneration Panelの
メンバーには専用のTシャツが配布され、各Generation Panelのメンバーは、
現地及びオンラインで参加し、セッションの最後にはオンライン参加者も加わ
る形で集合写真の撮影が行われました。

▼技術関連の話題

本号では技術関連の話題として、ALAC[*10]とSSACが共催した公開セッション
から、2022年6月にSSACが公開したルーティングセキュリティに関する文書
「SSAC Briefing on Routing Security(SAC121)[*11]」の紹介についてお届
けします。

▽SSAC121の内容と文書公開の目的

セッションにおいて、SAC121の内容が紹介されました。SAC121では、ルーティ
ングセキュリティがDNSに及ぼす影響、これまでに発生した主なインシデント
事例、現状を踏まえた主な対応策に関する検討の内容が、チュートリアル形式
で解説されています。

ルーティングに関するセキュリティインシデントは、DNSの名前解決にも影響
を及ぼします。2018年4月に発生した仮想通貨ウォレットを提供する
「myetherwallet.com」の権威DNSサーバーを狙った経路ハイジャックの事例で
は、15万USドルの仮想通貨を盗まれる被害が発生しており、SAC121においても
言及されています。

会場からは、SAC121はICANNの組織やコミュニティとどう関係するのか、とい
う質問が寄せられました。これに対し、ICANNが組織として本文書を支持し、
より広い範囲の運用者コミュニティに広めて欲しいこと、ISPやRIR[*12]の関
係者はルーティングセキュリティについて一定の知識を持っているが、DNSコ
ミュニティの関係者は必ずしもそうではないため、そうした関係者への情報提
供のため、本文書を公開した旨が回答されました。

[*10] JPRS用語辞典|ALAC
      https://jprs.jp/glossary/index.php?id=0119

[*11] SAC121 - SSAC Briefing on Routing Security
      https://www.icann.org/en/system/files/files/sac-121-en.pdf

[*12] JPRS用語辞典|RIR(アールアイアール)
      https://jprs.jp/glossary/index.php?id=0053

■次回のICANN会合

第76回ICANN会合は、2023年3月11日から16日にかけてメキシコのカンクンで開
催される予定です[*13]。新型コロナウイルスの影響を踏まえて、開催形式は
変更となる可能性があります。

[*13] ICANN76 Community Forum Location Announced
      https://www.icann.org/en/announcements/details/icann76-community-forum-location-announced-12-5-2020-en

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◎関連URI

  - ICANN75 | Annual General Meeting
    https://75.schedule.icann.org/
    (第75回ICANN会合公式ページ)

  - Announcements - ICANN
    https://www.icann.org/news/announcements
    (ICANNのアナウンス一覧ページ)

  - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation
    https://ccnso.icann.org/workinggroups/
    (ccNSOのWG紹介ページ)

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