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ドメイン名関連会議報告

2005年

CENTR Administrative Workshop報告

~ヨーロッパにおけるDRPの最新動向等~

2005/02/17


2005年2月2日オーストリアの首都ウィーンにてCENTR(Council of European National Top-Level Domain Registries)第6回Administrative Workshopが開催されました。

今回のAdministrative Workshopには20のccTLDと2つのgTLDレジストリのメンバー35名が参加し、レジストリレジストラ間関係、DRP(Dispute Resolution Policy)、EPP(Extensible Provisioning Protocol)という主に3つのテーマについて活発な議論と情報交換が行われました。以下、それぞれのテーマに関する各国の発表と議論の概要をご報告します。

会議風景
会議風景

レジストリ・レジストラ間関係

ほとんどのTLDでは、レジストリとレジストラの間でドメイン名の登録管理業務は分担されていますが、よいサービスを提供するには両者の協力関係が重要です。ここではノルウェーとポーランドにおけるレジストラとの関係強化のための取り組みについてご報告します。

ノルウェー(.no):1999年12月のレジストリ・レジストラ分業モデルへの移行から約5年が経ち、それを評価するために、第三者機関によるレジストラへの聞き取り調査が行われました。その結果、大多数のレジストラはレジストリのドメイン名の登録申請処理、DNS運用等のサービスに満足しているということでした。また、レジストリ・レジストラ間ではより高いセキュリティで通信すべきという意見が多く寄せられ、これに対応し、PGP暗号申請を義務付けるなど、調査結果のサービスへの反映も行われています。

ポーランド(.pl):2003年3月にレジストリ・レジストラ分業モデルへ移行し、こちらでも定期的に聞き取り調査が行われています。ポーランドは、最新技術を取り入れたりボリュームディスカウントなどのビジネス的試みを多く行っていますが、大多数のレジストラはレジストリの提供するサービスに対して満足しているとのことでした。ポーランドではEPP申請システムを使用しなければならないなど、レジストラとして認定されるための条件が厳しく、その数も50社程度ですが、レジストリとそれらのレジストラが綿密で協力的な関係を築きながら、登録者に対して安定したサービスを提供しているとのことでした。

DRP(Dispute Resolution Policy)

JPRSからの提案で議題となったDRPはどこの国でも重要なテーマであるためか、今回のワークショップで最も注目を集め、CENTRのL&R(法務関係)のメンバー15 名も合流してセッションが開かれるという珍しいかたちとなりました。オランダ(.nl)と日本(.jp)からの発表後、紛争等によりドメイン名の登録が一時的に凍結される際の条件やDRP運用状況について活発に議論と情報交換が行われました。

オランダ(.nl):1999年から2003年にかけてヨーロッパの法律関係者の間では、ドメイン名は「財産法」に基づいて解釈するのか、「契約法」に基づいて解釈するのかについて議論が行われ、その結果、ドメイン名の登録者はドメイ ン名を所有するのではなく、一定期間使用する権利を与えられるという契約法に基づく解釈が一般的になっているとの発表がありました。その他、ドメイン名の登録が一時的に凍結される際の条件の説明として、紛争処理中や裁判所命令による場合、支払い遅延など登録者としての義務を果たしていない場合等の条件の詳細な紹介がありました。

日本(.jp):はじめに、JP-DRP(JPドメイン名紛争処理方針)策定の経緯と、方針概要、3つの組織による方針制定、裁定、裁定結果実行の分業体制の説明をした後、制度開始(2000年10月)から約4年間の総括を行いました。具体的には、紛争の処理件数が4年間で30件と当初の予想より少ないこと、紛争の申立て件数は年々減少していること、現状の仕組みを維持するには大きなコストがかかること、紛争の対象範囲が商標等に限定され、個人名や官公庁の名称等がカバーされておらず不十分な点があること等の課題を挙げました。

JPRSからの発表の後、各々のTLDのDRPについて情報交換がありました。方針概要については、(1)UDRPをそのまま利用、(2)UDRPをローカライズ、(3)他ccTLD のDRPを参考にして独自に制定、(4)自組織で独自に制定、(5)DRPを持たない、等それぞれ異なりました。DRPを維持するための費用負担については、(1)すべて国が負担、(2)すべてレジストリが負担、(3)レジストリと申立人が折半して負担、(4)申立人が負担、(5)紛争処理機関が負担、等、こちらもTLD毎に異なりました。紛争処理機関についても、WIPO(世界知的所有権機関)に業務委託、国内の仲裁関係組織が対応、DRPを目的に組織された弁護士・弁理士・大学教授等の専門家集団が対応等、やはりそれぞれ異なりました。

なお、DRPより軽微な紛争解決の方法として、仲裁(mediation)、申立て(appeal)という仕組みを持つTLDもいくつかあり、DRPよりも利用されているとのことでした。例えばイギリスの場合、レジストリ内に仲裁専任の担当者が存在し、希望者は匿名かつ無料で仲裁を依頼することができるとのことです。こちらは月に60件程度利用され、たいへん好評とのことでした。

本テーマに関する議論の流れは、DRPという仕組みは、レジストリ、紛争処理機関、申立人、登録者ともにコストがかかる割に少数事件しか扱われておらず、その効果、必要性、位置づけ、維持コスト削減の検討が必要な時期に来ているというものでした。

EPP(Extensible Provisioning Protocol)

EPPとは、ドメイン名の登録情報をレジストリとレジストラの間で交換するために設計されたプロトコルです。複数のレジストリでその採用も進められており、ドメイン名関連のどの会議でも話題にのぼるホットなトピックです。今回、EPPの実装を検討しているスウェーデンから新レジストリシステムの開発計画についての発表がありました。

スウェーデン(.se):2006年のオペレーション開始を目指して新システムの設計を行っており、ENUMDNSSEC等への対応や、システムメンテナンスの負荷軽減のためにはEPPを採用することが有効であるとの結論に至ったとのことでした。そしてその開発のスピードアップやコスト低減のため、協力し合えるパートナーを探しているとのことです。

スウェーデンの発表に続いて各TLDのEPPへの取り組み状況について報告が行われました。ほとんどのTLDでEPPの実装を前向きに検討しているか、すでに実装済みで、EPPの実装が世界的な流れになっていることがうかがえました。JPRSからも、EPPの実装を検討中であり、レジストリ間の協力が有効であるとの意見を述べました。

まとめ

ヨーロッパのccTLDを中心とした、CENTRのワークショップに参加するCENTR会員レジストリは、サービス内容においても、よい業務を提供しようとする意識においてもレベルが高く、議論の中で率直な意見を出し合い、互いに役立つ活発な情報交換が行われました。レジストリ・レジストラ間関係については今後も引き続き様々な国からの情報が提供され、それを自国での対応に役立てていく予定です。また、EPPについては開発協力体制の実現を目指していくことになりました。

日本から提案した議題であるDRPについては、参加メンバーにとって重要な論点も多く、議論が大いに盛り上がり、会議内では時間が足りませんでした。今後詳細な質問票を作成し、CENTR事務局が回答を取りまとめてメンバー間で情報共有しながら、引き続きオンライン等で議論していくことになりました。

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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