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ドメイン名関連会議報告

2006年

ICANNウェリントン会合報告

~理事会決議事項に関する報告~

2006/04/06

2006年3月25日から31日まで、ニュージーランドのウェリントンでICANN第25回会合が開催されました。ICANNの発表によれば、各支持組織及び諮問委員会の会議及びワークショップ等、30以上の会議が開催され、82の国と地域から約700名が参加しました。

今号では、会合の総括として、3月31日に行われた理事会の決議内容とその背景情報を報告します。

会議の模様
会議の模様

1. ccNSOによるICANN定款変更の勧告を否決


現在、世界にccTLD(Country Code Top Level Domain)は248存在します(http://www.iana.org/cctld/cctld-whois.htmより)が、このうちICANNのccNSO(Country Code Names Supporting Organization:国コードドメイン名支持組織)に加入しているのは48のみです。加入が増えない大きな理由のひとつに、ヨーロッパを中心としたccTLDレジストリが、ICANN付属定款中のccNSOに関する規定内容に反対していることが挙げられます。

この状況を打開するため、ICANNウェリントン会合に先立つ2005年12月、正式なポリシー策定プロセスにしたがって、ccNSO会員及び非会員のccTLDが共同し、ICANN付属定款のうちccNSO関連条項に対する修正提案を8つ示した勧告を作成、ICANN理事会に提案しました。

これを受け、今回のICANN理事会では、この勧告を受け入れて付属定款を修正するかどうかが審議されました。

この審議で論点となったのは、勧告で指摘された8点のうちのひとつ、「勧告3」です。「勧告3」では、ICANN付属定款に、「(ccNSO関連条項の)いかなる変更も、ccNSOによって勧告され、理事会に承認されるものとする」という条件を加えるよう要求しています。

この条件を加えれば、理事会は、ccNSOの勧告なしでccNSO関連条項を変更できなくなります。このため、理事会が利害関係者から独立してICANNの定款と執行を監督する最終権限を持つという原則を維持すべきとの判断から、理事会は「勧告3」を否決しました。また、「勧告3」が否決されたことに伴い、他の勧告内容についても決議が保留されました。

今後は、ccNSOとICANNスタッフとの間で、妥協点を見出すための協議が行われる予定です。なお、この協議がまとまるまでの間は、付属定款のいずれのccNSO関連条項も変更されないことになっています。

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2. ICM Registryによる.xxxの創設提案を保留

昨年の6月1日、アダルトサイト用の新たなsTLD(Sponsored Top Level Domain:スポンサー付きトップレベルドメイン)として提案された.xxxの創設に関して、ICANNと、提案者であるICM Registryとの間で契約交渉を行なうことが承認されました。

そして、8月9日に.xxxのレジストリ契約が一般公開されたところ、政府及び民間から複数の反対意見が寄せられました。このため、正式な創設はいまだ決定されず現在に至っています。今回のウェリントン会合では、3月30日にICANNのGAC(Governmental Advisory Committee:政府諮問委員会)からICANN理事会に対し、違法コンテンツへのアクセス制限の仕組みが提供されていない等、.xxxのポリシーに公共政策の観点から問題がある旨のコミュニケが提出されたため、.xxxの創設決定はさらに難しくなりました。

結局、今回の理事会でも、.xxxの創設は決議されませんでした。今後は、ICANN事務総長と法律顧問が、ICM Registryとの交渉は継続しつつ、さらに関係者からの意見を聴取した上で、契約の修正を作成する予定となっています。

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3. IANA管理外のTLDネームシステムとルートに関するSSAC報告を採択


2006年3月30日、ICANNのSSAC(Security and Stability Advisory Committee:セキュリティと安定性に関する諮問委員会)は、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)が管理しているものとは異なるTLDネームシステムとルートに関する報告書案を理事会に提出しました。これは、オルタネート・ルートと呼ばれてきた方式に代表されるシステムもしくはサービスが、これまでに、商業的背景や政治的背景により導入され、もしくは、導入が予定されていることを見て、SSACが啓発的報告書としてまとめたものです。この報告では、複数存在するこれらシステムを分類し、それぞれの運用モデルと技術的な仕組みを解説した上で、ISP、ドメイン名登録者、レジストリへのインパクトを考察しています。

3月31日の理事会では、この報告書が採択され、一般公開が指示されました。

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4. TLD DNS及びルートDNSへのDDoS攻撃に関するSSAC報告を採択


2006年3月30日、SSACは、DNSを狙ったDDoS攻撃に関するセキュリティ勧告案を理事会に提出しました。この勧告では、2月にあるTLDのネームサーバを対象になされた攻撃の内容を紹介し、そのインパクトを解説しています。また、TLDネームサーバオペレータが取り入れるべき短期的、長期的な対策を提案しています。

3月31日、理事会はこの勧告を採択し、一般公開を指示するとともに、この勧告に基づき、ネームサーバ運用者各位がBCP 38、RFC 2827、SSAC 004 に則って戦略を立てるよう強く呼び掛けました。

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5. 2006-2009年ICANNの戦略計画を承認


ICANNの戦略計画は、最初に案が作成された2004年以来、支持組織、諮問委員会、その他の参加のもとオンライン、オフラインで議論されてきました。こうした議論を踏まえ、3月18日に「2006-2009年戦略計画案」が公開され、理事会に提出されました。

2006-2009年戦略計画は、ICANNが対象期間中に直面するであろう課題や機会を洗い出し、ICANNのコミュニティに資することを目指した5つの戦略目標を掲げています。また、今後はこの戦略目標に基づき、より具体的な運用計画案を作成することが念頭に置かれています。

3月31日の理事会では、この2006-2009年戦略計画案が承認されました。今後、事務総長とスタッフは、支持組織、諮問委員会その他のコミュニティと相談しつつ、2006-2007年を対象期間とする運用計画の策定プロセスを始めることになります。

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6. ICANNとVeriSignとの和解契約承認決議に対する異議申立への対応


2006年2月28日、ICANN理事会は、ICANNとVeriSignとの間の法的紛争の和解を目的とした契約を承認しました。

3月中旬、この決議に対する異議申立が2件提出されました。1件は、23社のレジストラを代表してNetwork Solutionsから提出されたもので、米国司法省その他の専門家から競争とセキュリティに関する問題点についてインプットを受けるまでは、理事会は決議をすべきでないと要求しています。もう1件は、.comの登録者Danny Younger氏から提出されたもので、理事会に対し、GAC から公共政策に関する正式な意見を受け取るまで、決議を保留するよう求めています。しかし、異議申立を検討する理事会内の再審査委員会(Reconsideration Committee)は、この2件の申立を検討した結果、いずれも根拠に乏しいと結論づけ、さきの決議は変更すべきでないと理事会に勧告しました。

このため、3月31日の理事会では、最終的にVeriSignとの和解契約承認の決議は変更されないことになりました。なお、理事会の席上、この和解における米国商務省と司法省の役割について十分な説明が理事会になされなかったとの批判が、理事のRaimundo Beca氏から出されました。また、理事会ChairのVint Cerf氏も、意思決定の透明性について改善の余地があると重ねて発言し、理事会に先立つパブリックフォーラムで複数出された反対意見への配慮を示しました。とはいえ、透明性の向上や意思決定方法の改善に向けた具体的な対策は提示されずに終わりました。

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7. gTLDレジストリサービス技術評価パネル議長としてLyman Chapin氏を任命


2005年11月5日、ICANN理事会は、gTLDレジストリがそのサービスを変更するにあたりICANNの事前承認を得るべきものとし、そのためのプロセスを採択しました。

今回の理事会では、このプロセスの一環である技術評価パネルの議長が任命されました。任命されたLyman Chapin氏は、ASO(Address Supporting Organization:アドレス支持組織)選出のICANN理事を2001年から2004年まで務めた人物です。

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8. 新gTLDプロセス実施推進の意向発表を指示


GNSO(Generic Names Supporting Organization:分野別ドメイン名支持組織)は、さらなるgTLDの導入の是非を判断する仕組みを作るためのPDP(Policy Development Process:ポリシー策定プロセス)を2005年12月6日に開始しました。これは、選定基準が明確になることを前提に、gTLDのさらなる追加も可能であるとの見解がgTLD関係者の間で示されていることに基づく動きです。今後、GNSOは、2006年6月の次回ICANNマラケシュ会合までに第一次報告書を完成させることになっています。

この動きに連動させる形で、3月31日のICANN理事会では、ICANNが2007年1月1日までに新gTLDプロセスを実施したいとの意思を持っていることが表明され、その旨を明記した「新gTLDプロセス実施推進の意向通知」を早急に公開するようICANNスタッフに指示されました。

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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