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ドメイン名関連会議報告

2017年

第60回ICANN会合(アブダビ)報告

~ccTLDとgTLD、Whois関連の話題を中心に~

2017年10月28日から11月3日にかけて、第60回ICANN会合がアラブ首長国連邦のアブダビで開催されました。

年3回開催されるICANN会合のうち3回目となる本会合は、ICANNの年次総会(Annual General Meeting)の形態で実施され、参加登録者数は2,165名となりました。AP(Asia Pacific)地域での開催であったことに加え、APRALO(Asia Pacific Regional At-Large Organization)の発足10周年に合わせた活動紹介の場である「A Decade of Diversity」や、ALS(At-Large Structure)の年次総会開催など、At-Large(*1)関連のセッションが充実していたこともあり、中国、韓国、台湾など、AP地域からの参加者が多く見られました。

また、本会合をもってICANN理事長を退任するSteve Crocker氏の送別セッションとして「Steve Crocker Tribute & Toast #」が設けられ、氏と共にインターネットの黎明期を支えたVint Cerf氏や前ICANN President and CEOであるFadi Chehade氏、ITU(*2)General SecretaryであるHoulin Zhao氏など、各方面の関係者が送別のコメントを寄せました。なお、セッションの動画はICANNのYouTube公式アカウントでも公開されています。
https://www.youtube.com/user/ICANNnews/

(*1)
個人インターネットユーザーで構成されたICANNのコミュニティです。
https://atlarge.icann.org/about/index#about at-large
(*2)
International Telecommunication Union(国際電気通信連合)の略称。世界の電気通信に関する国際標準の策定を目的として設立された各国政府間の国際組織。国際連合の専門機関です。

今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。

  • ccTLD関連の話題
    - 国名・地域名とその他の地理的名称のTLDに関する議論
    - ccTLDの委任、解約、委任終了に関するポリシー検討
    - TLD-OPSの活動状況
  • gTLD関連の話題
    - gTLD追加に関する今後の手続きの検討
    - .amazonに関する公開セッションとICANN理事会決議
  • その他の話題
    - Whoisによる情報公開に関する議論
「Steve Crocker Tribute & Toast #」の様子<br>
ICANN理事長を退任するSteve Crocker氏(写真右)と配偶者のBeth Crocker氏(写真左)<br>(写真:ICANN提供)

「Steve Crocker Tribute & Toast #」の様子
ICANN理事長を退任するSteve Crocker氏(写真右)と配偶者のBeth Crocker氏(写真左)
(写真:ICANN提供)

ccTLD関連の話題

国名・地域名とその他の地理的名称のTLDに関する議論

国名・地域名(2文字及び3文字コード)と地理的名称をTLDとして利用することに関するフレームワークについては、ccNSOとGNSOを中心としたSupporting Organization(SO)/Advisory Committee(AC)横断型のワーキンググループ(WG)で検討が行われてきたものの結論には至らず、活動を終了しています。

前回のICANN会合での提案を踏まえ、GNSOの新gTLD追加に関する今後の手続きについて検討するWG(New gTLD Subsequent Procedure Policy Development Process Working Group:SubPro WG)内に本件に関するワークトラック(*3)が設置され、ccNSOも参加する形で議論を継続してきました。前回の第59回ICANN会合(ヨハネスブルク)までの検討状況については、以下をご参照ください。
https://jprs.jp/related-info/event/2017/0726ICANN.html

今回のccNSO会合においては、地理的名称のTLDのうち、3文字コードと国名に関する考え方が議論されました。議論の中で、APTLD、CENTR、LACTLDといった各地域のccTLDレジストリの連合組織における見解が共有され、ccNSO内では以下の共通認識が得られました。

  • 2文字コードはISO 3166 alpha-2への掲載有無にかかわらず、すべて保護
  • 3文字コードはISO 3166 alpha-3に掲載されている文字列のみ保護対象
  • 3文字コードと国名に関しては明確な合意がなされない限り、2012年に公開されたApplicant Guide Book(AGB)で定められた内容を維持すべき
  • 現状で致命的な問題が発生していないのならば、変える必要はない(If it's not broken don't try to fix it!)

詳細は、以下の資料をご参照ください。
https://schd.ws/hosted_files/icann60abudhabi2017/2b/7%20closure%20CWG-UCTN%20-%20Lange%20Wenban-Smith.pdf

(*3)
「Work Track 5(WT5)」として新設され、本会合で初めて対面でのセッションが開催されました。共同議長はGNSO、GAC、ALAC、ccNSOよりそれぞれ選出されています。
https://schd.ws/hosted_files/icann60abudhabi2017/2f/SubProWT5_1Nov2017.pdf

ccTLDの委任、解約、委任終了に関するポリシー検討

ccTLDの委任に関するプロセスとそのレビューの実施について、第三者に対し明確に示すべく、ccNSOでPolicy Development Process(PDP)が進行しています。前回の第59回ICANN会合(ヨハネスブルク)までの検討状況については、以下をご参照ください。
https://jprs.jp/related-info/event/2017/0726ICANN.html

本会合では、ISOの「Online Browsing Platform(*4)」における2文字コードの変更が、当該文字コードの委任終了(retirement)プロセスの起点となることが合意に至りました。なお、本件はccTLDの委任に際して重要視される関係者であるGAC(*5)に対しても参加を呼び掛けています。

また、ccNSOメンバーに対してISOの組織概要やISO 3166(*6)の種類や更新の手続きなどに関する詳細な情報が共有されました。
https://schd.ws/hosted_files/icann60abudhabi2017/83/6%20ISO%203166%20-%20Akkerhuis.pdf

(*4)
https://www.iso.org/obp/ui/#searchにおいて、「Country codes」→「More options [+]」→「Alpha 2」とチェックを入れて検索することで、その時点のISO 3166 alpha-2の掲載一覧が確認できます。
(*5)
Governmental Advisory Committeeの略称。ICANNの諮問機関の一つで、各国政府などからの代表メンバーによって構成されます。GACは政府の立場からICANN理事会に対して助言を行っています。
(*6)
国や地域に割り当てられるccTLDでは、ISO 3166-1のalpha-2を採用しています。なお、ISO 3166-1では、2文字のラテン文字を使用した「alpha-2」、3文字のラテン文字を使用した「alpha-3」が定められています。
https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0144

TLD-OPSの活動状況

TLD-OPS(*7)の活動状況や次回のICANN会合に向けての目標などについて、TLD-OPS Standing Committee(*8)より報告があり、TLD-OPSメンバー間の連絡手段であるメーリングリスト(TLD-OPS mailing list)について、以下の内容などが共有されました。

  • 192のccTLDレジストリから345名以上が加入しており、前回のICANN会合以降に.na(ナミビア)、.ls(レソト)、.gl(グリーンランド)の三つのTLDが加わった
  • ヨーロッパ及び北米のccTLDは加入率100%に達した
  • アフリカとラテンアメリカ地域からの加入率向上(現状50%未満)が課題
  • 前回のICANN会合以降に投稿された注意喚起(Security Alerts)は0件
  • 2週間に1度、TLD-OPSメンバー宛にメンバーの連絡先一覧を更新して共有
  • 連絡先情報に予備の連絡先とメールアドレス(自TLD以外)の情報を追加
    https://ccnso.icann.org/en/resources/tld-ops-secure-communication.htm#subscription-template

また、「DDoS攻撃の影響を緩和するフレームワーク構築のためにTLD-OPSメンバー間でどのように連携するか」をテーマにクローズドなワークショップが開催されました。
https://schedule.icann.org/event/CbJl/ccnso-tld-ops-workshop-c

次回のICANN会合への目標として、本会合で実施したワークショップの結果のまとめ、ICANN会合及び地域別でのワークショップ開催計画の文書化、加入ccTLD数の増加が挙げられました。本会合での共有事項に関する詳細は、以下をご参照ください。
https://schd.ws/hosted_files/icann60abudhabi2017/6a/2017.10.24%20TLD-OPS%20ICANN60%20SC%20Mtg%202017.10.29.pdf

(*7)
Top Level Domain operatorsの略称。ccTLDレジストリ間での技術イン シデント情報の共有を目的としたコミュニティで、ccNSOの会員に限らず、すべてのccTLDレジストリからの参加が可能です。
https://ccnso.icann.org/resources/tld-ops-secure-communication.htm
(*8)
各地域のccTLDからの参加者とSSAC、IANA、ICANN securityチームから のリエゾンで構成されています。TLD-OPSメーリングリストの円滑な運営と、TLD-OPSコミュニティの継続的な改善と発展を促すための必要かつ適切な施策の実施を担っています。
https://ccnso.icann.org/workinggroups/tld-ops-standing.htm

gTLD関連の話題

gTLD追加に関する今後の手続きの検討

SubPro WGでは2012年の新gTLD募集(新gTLDプログラム)の振り返りと共に、2018年第3四半期までの次回募集に関するポリシー勧告の実施を目指して活動を継続しています。詳細なタイムラインは以下をご参照ください。
https://newgtlds.icann.org/en/reviews#timeline

SubPro WG全体では、2018年第1四半期にコメントの募集開始を予定しているポリシー勧告案の取りまとめに向けた各種検討が直近の目標となっており、本会合におけるWGのセッションにおいては、前述のWT5(*3)が新たに設けられたこと以外に、特筆すべき新たな論点や課題は挙がりませんでした。

.amazonに関する公開セッションとICANN理事会決議

2012年の新gTLDプログラムの際にAmazon.comが申請した.amazonについて、GACは「amazon」は南米の地理的名称であるという勧告をICANN理事会にしており、委任に向けたプロセスが停止しています。

プロセス再開を求めるAmazon.comは、ICANN理事会の決定や行為に対する異議申し立てプロセスであるIRP(Independent Review Panel)に本件を付託した結果、主張が認められ、「委任に向けたプロセスを再開すべし」との判断を得ています。

このような中、本会合においてAmazon.comの法務担当者とGACとの公開対話セッションが設けられました。

セッションにおいて、GACメンバーの一部から「amazon」という言葉はAmazon.comの所有物ではないと断言する声が上がった一方で、Amazon.comは「amazon」という社名の正当性にかかわる重要事項として本件の対応を進めていく強い意向を示していました(*9)。

本会合で行われたICANN理事会において、以下の内容が決議されました。

  • ICANN理事会は、Amazon.comの申請を進めるべきではない理由の詳細情報の有無をGACに確認する
  • 詳細情報がある場合、第61回ICANN会合(2018年3月開催予定)の終了までに、GACからICANN理事会に当該情報を提供する
(*9)
Amazon.comは本件に関する専用のWebサイトを公開しています。
https://amazontld.moi/

その他の話題

Whoisによる情報公開に関する議論

オランダの地理的名称gTLDである.amsterdamと.frlは、オランダの個人情報保護法下では違法となる可能性があるという理由で、ICANNとの間のレジストリ契約に違反することを認識した上で、Whoisレコードの公開をしない措置を始めています。

本会合では、このような状況を背景に、2018年5月から適用開始となるGDPR(General Data ProtectionRegulation:EU一般データ保護規則)がWhoisによって公開される情報やドメイン名登録情報に与える影響について議論されました。

議論の結果を踏まえ、ICANNは2017年11月2日、レジストリ及びレジストラは、Whoisにおける情報公開義務について、一定の条件を満たせば当面の期間は契約不履行の処罰を免除される旨の声明を発表しています。
https://www.icann.org/news/announcement-3-2017-11-02-en

また、本会合でのICANN理事会では、GDPRへの対応も念頭においたVerisignからの要請を受け、Thin Whoisを採用している.com、.net、.jobsについて(*10)、レジストリであるVerisignの申請を受け入れる形でThick Whoisへの移行期限を半年間(180日間)延長しました。

(*10)
ICANN理事会は、すべてのgTLDのWhoisをThinからThickへ移行するというGNSOの提案を認めており、Thin Whoisを採用してきた.com、.net、.jobsについても、Thick Whoisへの移行が進められてきていました。ThickレジストリモデルとThinレジストリモデルの詳細と違いについては、以下の項目をご参照ください。
Thickレジストリモデル
https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0216
Thinレジストリモデル
https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0217

次回のICANN会合

第61回ICANN会合は、2018年3月10日から15日にかけて、アメリカ合衆国プエルトリコ自治連邦区のサンフアンで開催される予定です。

本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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