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メールマガジン「FROM JPRS」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2016/08/23━ ◆ FROM JPRS 増刊号 vol.164 ◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ___________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 第56回ICANN会合(ヘルシンキ)報告 ~クロスコミュニティセッションにおける話題を中心に~ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2016年6月27日から30日にかけて、第56回ICANN会合がフィンランドのヘルシン キで開催されました。 今回のICANN会合はラテンアメリカのパナマで開催される予定でしたが、ジカ 熱の流行によりヨーロッパのヘルシンキへ変更となりました。参加登録者数は 1,436名で、新たに採用された開催方針(*1)に基づき、初めて「ポリシー フォーラム」と称される形態で行われました。従来のICANN会合で設けられて いたオープニングセレモニーやパブリックフォーラム、ICANNスタッフによる 情報提供セッション、公開理事会、スポンサーによるブース展示などは設けら れず、会期も4日間と、従来の6日間に比べ規模を縮小しての開催となりました。 (*1)2016年以降のICANN会合はFuture Meeting Strategyにのっとり、開催規 模や内容に変化が付けられることになっています。詳細は、下記の 「ICANN会合の開催形態変更に関する検討」をご参照ください。 https://jprs.jp/related-info/event/2015/1117ICANN.html 今回の会合は、ICANNの構成組織であるそれぞれのSupporting Organization (SO)/Advisory Committee(AC)でのポリシー関連の議論に特化した内容と なり、コミュニティ間での横断的な意見交換や議論の場として「クロスコミュ ニティセッション」が設けられました。 今回のFROM JPRSでは、以下の項目に沿って会合の模様を報告します。 (1)クロスコミュニティセッションでの話題 - 国名・地域名とその他の地理的名称に関する議論 - 新gTLDオークション収益に関する議論 - ICANNの組織戦略について (2)ccTLD関連の話題 - IANA監督権限の移管後のドメイン名管理機能に関する議論 - ccTLDの委任に関する課題について (3)gTLDのポリシー策定関連の話題 - 次世代Registry Directory Services(RDS)に関する議論 - 新gTLDの次回募集手続検討 - すべてのgTLDにおける権利保護メカニズムのレビュー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (1)クロスコミュニティセッションでの話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前回までのICANN会合では「マルチステークホルダー」という言葉が多く聞か れていましたが、今回は「クロスコミュニティ」という言葉がICANN理事や各 SO/ACのリーダーからキーワードとして多く発せられました。その言葉の示す 通り、掲げたテーマに応じて関係するSO/ACが集まり、コミュニティを横断す る形での意見交換を意図した「クロスコミュニティセッション」が多数開催さ れました。 ▼国名・地域名とその他の地理的名称に関する議論 国名・地域名(2文字コード及び3文字コード)と地理的名称のTLDやドメイン 名登録のポリシーを検討する際のフレームワークについては、GAC(*2)や Cross-Community Working Groupなどの場でこれまでも議論がされてきました。 今回の会合においては、本件に対するコミュニティ全体の関心が高まっている という現状を受けて、今後の議論の進め方に関するクロスコミュニティセッ ションの機会が設けられました。 (*2)Governmental Advisory Committeeの略称。ICANNの諮問機関の一つで、 各国政府などからの代表メンバーによって構成されます。GACは政府の 立場からICANN理事会に対して助言を行っています。 テーマとして、「さまざまな活動が並行して進められる中にあって、DNSにお ける国名・地域名や地理的名称の利用に関し、『調和の取れたフレームワーク (harmonized framework)』を生み出すことの実現可能性」について議論が行 われました。結果として方向性の集約には至らなかったものの、それぞれのコ ミュニティの参加者から多様な意見が述べられ、多様な参加者が集まる場で行 われた議論の結果をコーディネートする形で「調和の取れたフレームワーク」 を構築するのがよいのではないかといった意見も挙がっていました。 ▼新gTLDオークション収益に関する議論 2012年の新gTLD募集(新gTLDプログラム)におけるオークションでICANNが得 た収益について、使途の原則が検討されてきました。今回の会合は、ICANN理 事会より2名とccNSO以外のすべてのSO/ACからのメンバーで構成されるチャー ター案起草チームが主催し、クロスコミュニティセッションの機会が設けられ ました。今回の会合の開催時点で既に100億円以上となっていたオークション の収益をどのように扱っていくべきか、提示されたチャーター案に関する意見 交換が行われました。具体的な方向性の集約には至らなかったものの、ICANN 理事会メンバーも半数以上が参加するなど、本件に対する理事会の関心がうか がえる場となりました。 ▼ICANNの組織戦略について ICANNの組織戦略について、ICANN側から下記の内容についての情報共有が行わ れた後、参加者との質疑応答及び意見交換が行われました。 ・ICANNのエンゲージメントの対象と実施体制(地域別と分野別でチームを 形成) ・各地域(アフリカ、アジア、ラテンアメリカ及びカリブ地域、中東、オセ アニア)におけるエンゲージメントの実績 ・ICANNのHR(Human Resources)状況と今後の計画 ・ICANNスタッフの評価制度 ・ICANNスタッフの構成(性別、平均勤務年数の情報など) この中で、参加者からは特にICANNのエンゲージメントについて関心が集まり ました。具体的には、エンゲージメントの対象をどこまで広げるのか、また、 広げることに対して意義があるのか、といった意見が聞かれた他、エンゲージ メントの実施内容について、実績や行動計画の策定を求める声が挙がりました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (2)ccTLD関連の話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼IANA監督権限の移管後のドメイン名管理機能に関する議論 IANA(*3)監督権限の移管に関しては、前回の会合でICANN理事会により最終 提案が承認され、米国商務省電気通信情報局(NTIA)に提出されました(*4)。 今回のccNSO会合では、IANAのサービスを直接受けるメンバーによって構成さ れるCustomer Standing Committee(CSC)(*5)の設立に際し、その活動概要 とメンバー選定の要件や、8月15日までにメンバーを確定させるというスケ ジュールが共有されました。CSCメンバーの選定に当たっては、基本要件とし てIANAのドメイン名管理機能への関与や知識が考慮され、今回の会合で提示さ れたスケジュールは予定通り完了しています(*6)。 (*3)Internet Assigned Numbers Authorityの略称。ドメイン名、IPアドレ ス、プロトコルパラメーターといったインターネット資源を管理する ICANNの一機能です。 (*4)IANA監督権限の移管に関するこれまでの経緯については、前回の第55回 ICANN会合(マラケシュ)報告をご参照ください。 https://jprs.jp/related-info/event/2016/0406ICANN.html (*5)IANAのドメイン名管理機能の監督権限を引き継ぐために設立される組織 体で、gTLDオペレーターより2名、ccTLDオペレーターより2名、それ以 外のTLD関係者より1名のメンバーと、IANAと各SO/ACからの担当者によ るリエゾンで構成される予定です。 http://ccnso.icann.org/meetings/helsinki56/presentation-csc-28jun16-en.pdf (*6)メンバー選定の結果については、下記をご参照ください。 https://www.icann.org/stewardship-implementation/customer-standing-committee-csc ▼ccTLDの委任に関する課題について TLDの委任などに関するフレームワークの作成を目的として、RFC 1591(*7) におけるccTLD関連用語の解釈について、FoI(Framework of Interpretation) WGが定義付けを行ってきました(*8)。次のステップとして、委任などに関す るプロセスとそのレビューの実施について、第三者に対しても明確に示すべく、 2016年11月に予定されている次回のICANN会合までに以下の課題の整理を予定 しています。 ・ccTLDの委任終了(retirement)に関するプロセスの定義 ・委任(delegation)、解約(revocation)、委任終了(retirement)の判 断に関するプロセスのレビュー方法の定義 (*7)DNSの構造と権限の委任について情報を提供するRFCです。 https://www.nic.ad.jp/ja/translation/rfc/1591.html (*8)FoI WGのこれまでの活動については、第52回ICANN会合(シンガポール) 報告をご参照ください。 https://jprs.jp/related-info/event/2015/0224ICANN.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ (3)gTLDのポリシー策定関連の話題 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼次世代Registry Directory Services(RDS)に関する議論 登録情報の検索サービスをRegistration Directory Services(RDS)といいま す。ICANNでは、ワーキンググループ(WG)を設置し、gTLDにおける次世代RDS の導入に向けた検討が進められています。 今回の会合においては、従来のWhoisシステムとその登録情報の確認と、RDSの 実装に向けたスケジュールや課題の確認が行われました。スケジュールは以下 の段階に分けられており(*9)、現在はPhase 1の段階となります。 ・Pre-PDP WG Steps:Policy Development Process(PDP)WG発足前のタス クの実行 ・Phase 1 :次世代RDSの必要性に関するポリシーの策定 ・Phase 2 :次世代RDSの役割に関するポリシーの策定 ・Phase 3 :策定されたポリシーに従った、次世代RDS実装のガイ ダンスの実施 ・Post-WG Steps :WGの最終報告後のタスクの実行 (*9)詳細なスケジュールは、下記資料をご参照ください。 http://schd.ws/hosted_files/icann562016/50/ICANN56-RDS-PDP-CCSession-Draft5.pptx ▼新gTLDの次回募集手続検討 2012年の新gTLDプログラムの振り返りを元に、次回募集時の手続きを定める PDPが進行しています。今回の会合では、検討事項として38件の課題を五つの ワークトラック(WT)に分割(*10)し、WTごとに対応を進めていくことが確 認されました。2017年の第3四半期をめどに各WTの草案が、2017年末をめどに 最初のレポートが提出される見込みです。 (*10)38件の課題の詳細は、下記資料の「Annex A Subjects from WG Charter - Divided into work tracks」をご参照ください。 http://schd.ws/hosted_files/icann562016/e7/Cross-Comm_New%20gTLD%20Slides_28June2016.pdf ▼すべてのgTLDにおける権利保護メカニズムのレビュー 新gTLDの導入以前から、紛争の原因となりうるドメイン名が登録されるケース はありましたが、従来はUDRP(*11)などに訴える方法が一般的でした。明確 に商標権などを侵害するドメイン名を減らすため、2012年の新gTLDプログラム に際し、従来のUDRPに加えURS(*12)などの権利保護メカニズム(Rights Protection Mechanism:RPM)が策定されました。 (*11)Uniform Domain Name Dispute Resolution Policyの略称。「.com」や 「.net」、「.org」などのgTLDに適用されるDRP(ドメイン名紛争処理 方針)です。裁判や仲裁とは異なる新たな紛争処理手段として策定さ れ、簡易、迅速、低費用、非拘束(裁定結果は裁判の判決とは異なり 拘束力を持たない)という特徴を持ちます。 https://jprs.jp/glossary/index.php?ID=0059 (*12)従来のUDRPと比較して、より安価かつ迅速に明確な商標権の侵害に対 処するための仕組みです。 https://newgtlds.icann.org/en/applicants/urs RPMのレビューの対象はPhase 1とPhase 2の二つに分けられ、それぞれについ て順に対応されていく予定です。Phase 1の対象は2012年の新gTLDプログラム の際に策定されたRPMで、レビューの完了目標を2017年末としています。Phase 2の対象は従来から適用されているUDRPとなります。 ・Phase 1: - Sunrise+Trademark claims - Trademark Clearinghouse(TMCH)(*13) - Uniform Rapid Suspension System(URS)+Dispute(to a TLD) - Post-Delegation Dispute Resolution Procedure(PDDRP)(*14) ・Phase 2: - UDRP (*13)商標権者が他者による意図しないドメイン名の登録から自らの商標を 保護するために、新gTLDのレジストリ及びレジストラに自らの商標に 関する情報を提供するためのデータベースです。 https://newgtlds.icann.org/en/about/trademark-clearinghouse (*14)新gTLDのレジストリが商標権を侵害する行為を行った場合に、当該レ ジストリに対し、異議申し立てを実施できるようにするための仕組み です。 https://newgtlds.icann.org/en/program-status/pddrp ■次回のICANN会合 第57回ICANN会合は、2016年11月3日から9日にかけて、インドのハイデラバー ドで開催される予定です。 ◇ ◇ ◇ ◎関連URI - ICANN56 | Helsinki | ICANN Public Meetings https://meetings.icann.org/en/helsinki56 (第56回ICANN会合公式ページ) - Announcements - ICANN https://www.icann.org/news/announcements (ICANNのアナウンス一覧ページ) - Working Groups | Country Code Names Supporting Organisation https://ccnso.icann.org/workinggroups/ (ccNSOのWG紹介ページ) - Program Status | ICANN New gTLDs https://newgtlds.icann.org/en/program-status (新gTLDプログラムの進行状況を示したICANNのページ) - Announcements | ICANN New gTLDs https://newgtlds.icann.org/en/announcements-and-media/latest (新gTLDプログラムに関するICANNのアナウンス一覧ページ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【FROM JPRS】━ ■会議報告:https://jprs.jp/related-info/event/ ■配信先メールアドレスなどの変更:https://jprs.jp/mail/henkou.html ■バックナンバー:https://jprs.jp/mail/backnumber/ ■ご意見・ご要望:from@jprs.jp 当メールマガジンは、Windowsをお使いの方はMSゴシック、Macをお使いの方は Osaka等幅などの「等幅フォント」で最適にご覧いただけます。 当メールマガジンの全文または一部の文章をWebサイト、メーリングリスト、 ニュースグループ、他のメディアなどへ許可なく転載することを禁止します。 また、当メールマガジンには第三者のサイトへのリンクが含まれていますが、 リンク先のサイトの内容などについては、JPRSの責任の範囲外であることに ご注意ください。 その他、ご利用に当たっての注意事項は読者登録規約にてご確認ください。 https://jprs.jp/mail/kiyaku.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集・発行:株式会社日本レジストリサービス(JPRS) https://jprs.jp/ Copyright (C), 2016 Japan Registry Services Co., Ltd.