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ドメイン名関連会議報告

2003年

APTLD活動報告

2003/12/02
2003年11月23日、ニュージーランドの首都ウェリントンにて、APTLD(Asia Pacific Top Level Domain Association)会議が開催されました。APTLDは、アジア太平洋地域のccTLDレジストリの連合組織です。ヨーロッパの地域連合組織CENTRなどと連携しながら、レジストリ運用技術やインターネットガバナンスに関する情報交換、ICANNのポリシーに対する意見書提出などを行っています。


今回は、この会議に先立って11月21~22日に開催された技術ワークショップの内容もあわせてお伝えします。

会議場近くのヨットハーバー
会議場近くのヨットハーバー(ウェリントン)

APTLD技術ワークショップ

APTLDの技術ワークショップは、8月のAPTLD釜山会議で開催が決定されたもので、今回が第1回目となります。今回の技術ワークショップでは、TLDレジストリやルートサーバオペレータなど約30名の技術者が集まり、DNSやレジストリ技術に関するエキスパートからのチュートリアルや、APTLD参加組織間の技術情報交換が行われました。日本からは講師3名を含む4名が参加しました。

第1日目は、DNSおよびIDN(国際化ドメイン名)に関するセッションが行われました。DNSに関するセッションでは、DNSのパケットサイズ制限から導き出されるルートサーバの最大数についての考察、TLDサーバのドメイン名を統一することによるメリット、IPv6サポートなどについて解説がありました。また、アジア太平洋地域におけるルートサーバの性能・安定性の向上を目的とした、IPエニーキャストを使ったFルートサーバの展開状況についても解説され、1サーバあたりの秒間問合せ数はそれほど大きくないが、たとえば中国ではRTT (Round Trip Time:パケットの往復に要する時間)が劇的に改善されているという報告がありました。


IDNのセッションでは、IDNについての技術解説と、ccTLDにおける登録サービスに関する注意点の説明、中国語における異体字の取り扱いに関する説明、そして日本(JP)、韓国(KR)、台湾(TW)におけるIDNサービスの現状報告が行われました。

第2日目は、EPP、ENUM、およびSRS(Shared Registry System)に関するセッションが行われました。EPPのセッションでは、オーストラリアのAusregistryにおけるEPPの実装について解説がありました。オーストラリアでは、レジストラに対して、一度に大量の情報を扱えるEPPインターフェースの利用を推奨しているが、小さなレジストラ向けにWebインターフェースも用意しているとのことでした。

ENUMのセッションでは、ENUMの技術解説と、ccTLDがENUMサービスを検討する際の注意点についての説明が行われました。このセッションでは、ワークショップ全体を通じてもっとも活発な質疑応答が行われ、ENUMに対する期待や課題、電話番号の使い方などについて、議論が広がりました。

SRSのセッションでは、ニュージーランドにおけるドメイン名の管理体制やSRSの実装について解説が行われました。ニュージーランドではInternetNZという組織を中核に、ドメイン名の方針策定を行うDNC(Domain Name Commissioner)、レジストリを運営するNZRS(NZ Registry Services)が存在し、45のレジストラがSRSを使ってドメイン名の登録情報を共有しているとのことでした。

APTLD会議

今回のAPTLD会議では、.jp(JPRS)を含むアジア太平洋地域の9つのccTLD から17名、.info(Afilias)からオブザーバ1名を迎え、ラウンドテーブル形式で行われました。

今回の会議では、まず、先立って開催された技術ワークショップの成功が確認されました。これまでICANNの組織、ポリシーの在り方などについて議論をすることが多かったAPTLDですが、DNSの安定性向上・サービス向上等にとっての技術情報交換の重要性を今回あらためて認識し、今後はこういった活動にも力点を置き、ワークショップを積極的に開催していくことになりました。また、イベントを開催して各国から参加者を募るだけではなく、APTLDから1~2名の専門家を途上国に派遣し、海外出張が難しいレジストリのためにDNS運用技術などを紹介する活動も企画していく予定です。

また、2004年事業計画の大枠も決定されました。2004年はAPRICOT(2月)とICANN会合(7月)がマレーシアで開催されることから、これらのイベントをより多くの関係者が集合できる絶好の機会ととらえ、技術ワークショップ、ICANNワークショップなどを企画することになりました。これから、実施にむけてAPRICOT実行委員会、APNIC、ICANNなどとの具体的な調整に入ることになっています。


8月の釜山会議以降、APTLDは広報活動の強化を通じ、組織基盤である会員を増やしつつあります。1998年の立ち上げ以来、APTLD会員数は17ccTLD前後で大きな変動なく推移してきましたが、この3ヶ月で、増加傾向が顕著になってきました。今回の会議で.tk(トカラ)の入会が承認されたのに加え、さらに4つのccTLDからの入会についても手続を進めています。アジア太平洋地域には、距離や予算などの問題により、北米やヨーロッパで開催される会議へ参加できないccTLDレジストリが多くあります。このため、オンライン会議、Webでの情報提供や、近隣国でのワークショップなどの活動を行っているAPTLDに対する関心、ニーズが高まっているようです。新規会員の参画により、APTLDはこれからさらに活性化するでしょう。

より多くのアジア太平洋ccTLD関係者にインターネット資源管理の情報を提供し、この地域のインターネット基盤強化に寄与するため、APTLDは、今後も他の地域組織との協力などを通じ、認知度向上と活動内容の充実に努めていくことにしています。

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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