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ドメイン名関連会議報告

2006年

ICANNマラケシュ会合報告

~理事会決議事項に関する報告~

2006/07/12

2006年6月24日から30日まで、モロッコのマラケシュでICANN第26回会合が開催されました。今号では、会合の総括として、6月30日に行われた理事会の主な決議内容を報告します。

会議の模様
会議の模様

1. Whoisのポリシーに関するプロセスについての理事会決議


Whoisのポリシーに関する作業は、ICANNの中で2000年以来進められており、これまで複数の公開ワークショップ(2003年6月モントリオール、2005年7月ルクセンブルク、2005年11月バンクーバー会合)のテーマにもなりました。

GNSO(Generic Names Supporting Organization:分野別ドメイン名支持組織)は、gTLDのWhoisおよびWhoisに登録される担当者情報の目的を定義する報告を作成し、意見募集などを経た後で2007年前半に行う理事会での議決に間に合うよう提出するという任務を負っていました。

しかし、Whoisの目的の定義について、検討をしていたGNSO内で、以下の2案が対立しています。

第一案は、Whoisの目的を限定的に定めようとするもので、DNSにおけるドメイン名関連レコードの設定に関して生じた問題を解決するために、必要な連絡先情報を提供することとしています。レジストリレジストラ、非商業ユーザの関係者が支持しています。

第二案は、より広い範囲の問題にWhoisサービスが用いられるべきと主張するものです。DNSの設定上の問題解決のみならず、技術、法律その他、ドメイン名の登録と利用に関する様々な問題の解決にWhoisを用いるものと定義しています。知的財産権関係者、ISP、ビジネスユーザの関係者が支持しています。
また、政府関係者は、犯罪捜査などの法執行にWhoisを用いており、そうした実態もWhoisの役割の中で考慮すべきと主張しています。

この目的認識の違いによって、Whoisのどの情報を公開すべきかについての考えも異なります。第一案の支持者は必要な情報のみを公開し、プライバシーに配慮したいとしているのに対し、第二案の支持者は、全ての情報を公開すべきと考えています。

理事会は、Whoisの問題の複雑さと、それにより意見が二分している状況を考慮し、GNSOに課したスケジュールを見直すことにしました。当初、2007年最初の理事会にて報告書を議決することが目標となっていましたが、2007年前半に理事会が検討できる状態にすることまでを目標に設定し直しました。

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2. ドメイン名の更新に関して考慮すべき事柄を記したSSAC報告書

ICANNのSSAC(Security and Stability Advisory Committee:セキュリティと安定性に関する諮問委員会)は、ドメイン名登録者が登録更新に関して考慮すべき事柄と、登録を更新しないことによって生じるDNSサーバに関連した危険性について報告書を作成しました。この報告は、マラケシュ会合の際に、SSACによるワークショップのテーマとなりました。また、このワークショップでは、DNSの不適切な設定が引き起こす問題について言及があり、これに対して.jpで行っている施策が良い事例として紹介されました。

6月30日の理事会では、この報告書が正式に承認され、スタッフに対してこの報告書を公開することにより広く注意喚起するよう指示がなされました。

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3. 新gTLDのプロセスに関する理事会決議


GNSOは、さらなるgTLDの導入の是非を判断する仕組みを作るためのPDP(Policy Development Process:ポリシー策定プロセス)を2005年12月6日に開始しました。これは、選定基準が明確であることを条件に、gTLDのさらなる追加も可能であるとgTLD関係者が認識していることに基づく動きです。GNSOは、今回のマラケシュ会合までに新たなgTLDの導入に関するポリシー検討の第一次報告書を完成させることになっていました。

マラケシュ会合に先立ち、GNSOより第一次報告書の草案が発表されました。この報告書では、新TLDの導入を支持し、手順、技術、財務のそれぞれの観点での客観的基準を採用することの必要性が説かれています。そして、GNSOはこの中で、選定基準、選定方法、規定遵守体制に関して、コミュニティからの助言を求めています。

理事会は、今後の意見募集を経て修正された最終報告書を待つこととし、2006年12月の次回ICANN会合にてその報告書の議決を行うことを決定しました。

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4. ICANN理事会と政府諮問委員会の合同作業部会の進展


昨年行われたWSIS(World Summit on the Information Society:世界情報社会サミット)の議論を背景に、ICANNは、GAC(Governmental Advisory Committee:政府諮問委員会)を通じた政府との対話強化に努めています。

その実現方法のひとつとして、昨年12月、ICANN理事会とGACの合同作業部会が設立されました。この作業部会は、アウトリーチ、コミュニケーション、GAC事務局の移行という3つの分野に取り組んでいます。そして、今回の理事会までに、ICANNが行うアウトリーチプログラムの実施にGACが参加することが約束され、GACの優先課題をICANN戦略計画に同期化させることの検討が始まりました。また、ICANN理事会とGACとの間でコンサルテーションなどを行う際のタイムラインが文書の形で明確になりました。こうしたさまざまな取り組みを通じ、ICANN執行部とGACとの協働の枠組みが着実に進展しつつあります。ICANNにとってccTLDと並んでGACおよび政府との関係の強化が課題とされてきましたので、理事会は、この動きを大きな前進として歓迎しています。

6月30日の理事会では、この作業部会の進捗を評価し、今後もさらに取り組みを続けるよう求める決議を採択しました。

5. ccNSOによるICANN定款変更の勧告を承認


2003年のICANN組織改革で設置されて以来これまで、ICANNのccNSO(Country Code Names Supporting Organization:国コードドメイン名支持組織)では、加入するccTLDがなかなか増えませんでした。ヨーロッパを中心とした一部のccTLDレジストリが、ICANN付属定款中のccNSOに関する規定内容について不満を持っていたことがひとつの理由です。世界に約250存在するccTLDのうち、現在ccNSOに加入しているのは50にとどまっています。

論点となっていたのは、ccNSOの役割や取扱い範囲を規定した付属定款の条項について、その変更をccNSOが所定のポリシー策定プロセスを経て理事会に勧告した場合でも、理事会が一方的に却下すれば採用されることはないと読める内容でした。3月、理事会は、ccNSO会員および非会員のccTLDが協力して作成した対案を却下しました。この案は、ccNSOに関する定款変更は、最初にccNSOが発議すれば理事会で審議できるという内容でしたが、理事会は、コーポレートガバナンスに悪影響があるとして不承認にしました。

これでccTLDのccNSO参加は暗礁に乗り上げたかに見えましたが、その後、ICANNとccNSO会員および非会員のccTLDが協議を続けた結果、5月26日にccNSOが代案を発表しました。付帯勧告と呼ばれるこの代案では、定款変更の審議にあたっては理事会がccNSOに事前の通知をするようにし、また、ccNSOが実際の改定プロセスへ参加できるようにしています。その一方で、最終的な意思決定権限は理事会に残しています。

6月30日の理事会ではこの付帯勧告が審議され、承認されました。これをきっかけに、ヨーロッパを中心とした複数のccTLDがccNSOに加入することが見込まれます。この流れを受け、理事会直後の6月30日には、.uk(イギリス)がccNSO加入を発表しました。これにより、世界のccTLDと正式な関係を築くことを通じたICANN安定化への取り組みが、今後一層前進していくと思われます。

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本会議報告は、JPRSのメールマガジン「FROM JPRS」の増刊号として発行した情報に写真などを交えてWebページ化したものです。
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